研究課題/領域番号 |
21K04364
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
都祭 弘幸 福山大学, 工学部, 教授 (20736714)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 高せん断応力度比 / 曲げ降伏型 / 曲げ性能 / ヒンジ部 / せん断変形成分 / せん断スパン比 / 等価粘性減衰定数 / ヒンジ領域 / 端部トラス筋 / 主筋付着除去 / 鉄筋コンクリート造 / 梁端部 / 損傷抑制 / 履歴性状 |
研究開始時の研究の概要 |
現在の建築基準法では梁曲げ降伏型とし作用するせん断応力度比を0.15以下とすれば,部材種別FAとなり靭性能に優れたものと評価される。しかし,せん断応力度比が0.15に近づくほど付着割裂破壊が進行し逆S字形の履歴ループとなりエネルギー吸収性能が低下する。このような高せん断応力度比となるRC造梁の曲げ降伏後の履歴性状を改善するため,梁端部の損傷抑制が期待できる配筋を提案した。構造実験や解析検討を行い,従来配筋の破壊性状・履歴性状と比較し,提案した断面配筋の効果を定性的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
2022年度に実施した実験的研究では曲げ降伏型RC梁(せん断スパン比3)のヒンジ部を補強することにより,高せん断応力度下(τu/σB≒0.15)であってもヒンジ領域のせん断変形成分の増加を抑制できることが確認できた。このヒンジ部補強によって,曲げ降伏後のせん断破壊を防ぐことができたが,せん断スパン比3の曲げ変形が卓越する試験体であったこと,およびヒンジ部補強方法が簡便ではないこと,が課題となった。 そこで2023年度は,せん断変形が卓越するせん断スパン比1.5の曲げ降伏型RC梁について前年度と同様にヒンジ部補強の効果があるか,さらにヒンジ部補強を簡略化するために新たに“ヒンジ部損傷制御筋”を提案した。このヒンジ部損傷制御筋は,曲げひび割れ抑制に効果を発揮する主筋に沿った鉄筋とせん断ひび割れ抑制に有効な端部トラス筋を一体化したものである。この補強によって曲げ・せん断ひび割れが抑制され,曲げ降伏後のヒンジ部コンリートの損傷を遅延することおよび限界変形向上を狙っている。2023年度の試験体は従来梁1体,ヒンジ部損傷制御筋有り試験体1体,さらにヒンジ部損傷制御筋に高強度鉄筋を使用した試験体1体とした。これら3体について正負交番の静的加力実験を実施した。 構造実験結果の分析から,次のことが明らかとなった。1)主筋強度比10%程度のヒンジ部損傷制御筋量で高せん断応力度下でも靭性能改善が可能である。2)ヒンジ部損傷制御筋に高強度鉄筋を使用した場合,R=1/25以上の大変形でも未降伏であり普通強度の鉄筋よりも若干のせん断変形成分増加抑制効果の上昇が確認できた。3)ヒンジ部損傷制御筋のひずみ分布からせん断ひび割れ幅拡大抑制効果が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度および2022年度に実施した構造実験によって,昭和55年建設省告示第1792号第4に定める部材種別FAのτu/Fc上限値0.15のような高せん断応力度比の梁であってもヒンジ部を適切に補強することによって,曲げ降伏後のせん断破壊を抑制できることが確認できた。その補強効果は,弾性域においてせん断変形が卓越するような形状の梁部材であっても有効であった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で実施したヒンジ部補強試験体の梁主筋は,引張応力によるコンクリートひび割れ抑制の観点から端部0.5D(D:梁せい)区間の付着を除去している。梁主筋端部の付着除去を施さない場合,ヒンジ部損傷制御の補強効果が低減するのかを確認する必要がある。そこで,2023年度は梁主筋の付着除去がない2022年度と同じ形状のヒンジ部補強試験体を製作し,同じ条件で構造実験を実施する。 また,一般的な曲げ降伏型RC梁の解析モデルでも,解析値の弾性剛性は実験値よりも高くなるという課題がある。一般的なRC梁の解析モデルについて既往の研究を参考に検討する。さらにヒンジ部補強効果を検討できる解析モデルについても検討する。
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