研究課題/領域番号 |
21K04391
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23030:建築計画および都市計画関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 文夫 東京大学, 総合研究博物館, 特任教授 (20447353)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 近接性 / ポストコロナ / 空間デザイン / 距離 / つながり / デジタル / ディスクリート |
研究開始時の研究の概要 |
Covid-19によるパンデミックは、私たちの社会環境や人間関係にさまざまな影響を与えている。今後の社会の本質的な課題は、人間を離し、隔てることではなく、人間どうしの「近接性」をいかに再構築するかにあると考えている。本研究は、文化人類学から発生した「近接性」の概念を「距離の近さ+つながりの強さ」によって再構築し、これをもとにポストコロナ時代の「人間と空間」のあり方を提起する。コロナ禍における近接性の現状把握を行い、新たな近接性の概念構築を試み、従来の建築類型にとらわれない新しい空間デザインの方法を解明したい。
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研究実績の概要 |
本研究では、近接性の再構築にもとづくポストコロナの空間デザインのあり方を探求する。Covid-19によるパンデミックは、私たちの社会環境や人間関係にさまざまな影響を与えてきた。社会の本質的な課題は、人間を離し隔てることではなく、人間どうしの「近接性」を再構築することにあると考えている。本研究は、文化人類学から発生した「近接性」の概念を「距離の近さ+つながりの強さ」によって再構築し、これをもとにポストコロナ時代の「人間と空間」のあり方を提起する。研究の流れとしては、コロナ禍における近接性の現状把握を行い、新たな近接性の概念構築を試み、従来の建築類型にとらわれない新しい空間デザインの方法を解明することを目標としている。本研究においては、まず近接性の現状把握に取り組み、近接性の概念構築のための準備作業を行った。 「距離とつながり」の視点から各種の建築類型の空間状態を明らかにし、一方で「デジタルとディスクリート」の視点から実空間と情報空間における人間関係の状態を明らかにした。現在のコロナ禍で起きていることは、前者の空間状態に後者の人間関係を重ね合わせることであり、そこには元々の建築プログラムでは想定されなかった様々なズレが発生している。この「新常態」がどこまで定着するかはわからない。しかし、現在の利用状況の中から新しい空間デザインの萌芽を読み取ることができる。空間デザインに関わる近接性の指標をブレークダウンして設定すると、①人間距離/②人間密度は距離と密度に関わる指標、③空間規模/④配置形式は規模と配置に関わる指標、⑤利用動態/⑥機能分担は空間の使い方に関わる指標、⑦境界状況/⑧空間形態は連結と分離に関わる指標、⑨時間同期/⑩世界設定は時間と空間の基本設定に関わる指標である。以上にあげた指標群によって、多様な近接性の現状を把握し、そこからポストコロナの空間デザインの可能性を探求した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
近接性の現状把握で得られた動向を整理して、新しい近接性の指標を抽出した。計画調書の表1「新しい近接性における空間デザインの方向性」で示した仮指標の妥当性を検証するとともに、新しい指標も積極的に導入している。この段階では、コロナ禍の前後の変化を参照しつつ指標の「変動範囲」を明らかにし、次に、施設全体の対応策であっても「空間レベル」に分解して具体的内容を精査した。海外における現地調査が2023年度にずれ込んだことで、進行が当初予定よりやや遅れ気味となり、研究期間を1年延長することになった。ただし、資料収集等の手段で研究を補完し、また現地調査の成果を早急に整理することで進行をリカバーをしている。
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今後の研究の推進方策 |
近接性の概念構築で見出された指標をもとに、集合的に蓄積された知見を構造化し、デザインの方法論としてまとめていく。第一に空間的な連続性(人間・空間・建築・都市・地域という面的な広がり)をもつこと。第二に時間的な連続性(過去から未来への短中長期の持続可能性)をもつこと。第三にリアル/バーチャルの連続性をもつこと。そのうえで「連結可能性と分離可能性」(原広司)を参照して近接性を操作可能な概念と位置づけ、「つながり」にもとづく空間デザインの方法論を導き出す。 近接性を再構築することにより、社会環境をどのようにデザインできるのか。建築計画の分野では、ビルディングタイプ(建築類型)の概念が普及し、建築設計の合理化や標準化に成果をあげてきた。一方で特定のビルディングタイプに収まらない複合的なプログラムの建築も増えている。コロナ禍は人間どうしの関係性を変化させ、これまで想定できなかった空間の使い方を生みだした。今後の空間デザインでは、既成の大きなビルディングタイプの選択を必ずしも前提とせず、各人の活動のための小さなスペースタイプ(空間類型)を創出し、臨機応変に領域を組み立てることが可能になると考えられる。スペースタイプどうしを結びつける「アーキテクチャ」(構成原理)の設定により空間群全体の構成が決まる。今後の研究では、ポストコロナの空間デザインとして、より個人的で小さなスペースタイプ(空間類型)の概念を導入する可能性を提示したい。
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