研究課題/領域番号 |
21K04423
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23030:建築計画および都市計画関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岩田 伸一郎 日本大学, 生産工学部, 教授 (30314230)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | AEDタクシー / 救命ドローン / ドローンポート / 最適配置 / 人口カバー率 / 面積カバー率 / AED / タクシー / 配置計画 / 飛行ルート / 道路交通センサス / 整備計画 |
研究開始時の研究の概要 |
AEDの普及率が台数的には十分なレベルに達してきた今日、①装置の適正配置や配置場所の周知等による稼働率の向上、②装置を常に正常状態に保つ維持管理とそのコスト削減、が新たな課題となっている。固定の場所に設置されたAEDを人が取りに行く従来のAED整備の考え方を再考し、既存交通機関であるタクシー(以下、AEDタクシー)とAEDを搭載したドローン(以下、救命ドローン)の2つの移動体を活用したAEDの整備・搬送システムを提案し、その実現可能性や従来の固定方式と併用した場合の効果を検証する。
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研究実績の概要 |
AEDタクシーの効果の検証については、対象エリアを千葉市全域に拡大し、タクシーの遭遇確率の算定根拠を交通量データに基づく走行中の車両から付け待ち車両の台数に変更した。付け待ちタクシーの台数データが存在しないため、利用者である市民を対象にタクシーの利用状況および付け待ちタクシーの目撃状況に関するアンケート調査を実施し、普通駅、大規模駅(複数路線乗り入れ駅や、快速や特急等の停車駅)、総合病院、宿泊施設等の付け待ちスポットごとにタクシーの待機確率およびその周辺道路におけるタクシーの遭遇確率を導いた。これに基づいてAED タクシーの到達時間別の人口カバー率と面積カバー率を区ごとに求めて比較を行い、待受スポット数や人口の密集状況によるカバー率の地域差を明らかにした。 救命ドローンの効果の検証についても千葉市全域を対象とし、飛行ルートに設定した河川と幹線道路の交差点338箇所をポートの配置候補地点とし、配置するポート数ごとに人口カバー率と面積カバー率のそれぞれを最大化するポートの最適配置を求めた(以下、ケース1)。また、飛行ルートを搬送対象エリア内のみに限定する場合と、対象外エリア内の幹線道路も含む場合の比較を行った。 さらに、ドローンの維持管理を想定してポートの配置候補地点を182箇所の公益施設(公共施設に民間の医療機関等を追加)とした場合について同様のポートの最適配置を行い(以下、ケース2)、人口カバー率や面積カバー率、カバー圏域をケース1と比較した。ケース2では、ケース1と比べて同じカバー率を満たすために必要なポート数がやや増加する傾向があるものの、人口カバー率90%、面積カバー率85%の目標値をほぼ同等の配置数で達成できることを確認した。また、郊外にカバーできないエリアが多数発生する一方、ケース1でカバーできなかった臨海部や市街地付近をカバーすることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AEDタクシーの到達時間の算定について、当初はAEDの需要点の周辺を走行中のタクシーを配車するモデルを構築していたことから、その精度を高めるためにより詳細なタクシーの運行状況の把握が必要であると考え、タクシー事業者へのヒアリング調査、タクシードライバーを対象としたアンケート調査、主要地点における運行台数調査等の実施を計画していた。しかし、その後の調査で千葉市が待受営業を基本とする地域であることが運輸局資料から判明し、公共施設やタクシー乗り場等の待受タクシーの待機確率に基づくモデルを再構築することとなった。そのため、予定していた上記の調査に変えて、待受タクシーの状況把握を目的としたタクシー利用者へのWebアンケート調査を実施した。 救命ドローンについてはおおよそ予定していた千葉市全域を対象としたモデル化と、人口カバー率および面積カバー率の最適化シミュレーションが終了したため、追加で公益施設をドローンポートの配置候補地点とした場合の同最適化シミュレーションについても実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
大都市においけるタクシーの営業形態については、付け待ち営業を基本とする都市と、流し営業を実施する都市に分類され、前者に該当する都市が多数を占める。本研究の対象地域である千葉市は前者に該当するが、後者の代表的な都市として観光都市である京都市を新たに取り上げ、流し営業のタクシーの走行予測モデルに基づくAEDタクシーの効果についても検証する。また、千葉市と京都市の救命効率を比較するとともに、両タイプの都市におけるAEDタクシーの弱点を明らかにし、それを補完して救命率を高めるAEDの整備方法についても考察する。 タクシーによるAED搬送モデルと救命ドローンによるAED搬送モデルを個別に検証してきたが、千葉市を対象に2つのモデルを一体化したモデルへの展開を目指す。救命ドローンのモデルにおいて、高層建物による飛行条件への影響、着陸場所の確保、万が一の落下に伴う二次被害等に配慮して人口密集地を対象外エリアから除外する設定としてきたが、人口密集地=AEDタクシーのカバー圏域と捉え、両モビリティの利点を活かした包括的なAED搬送ネットワークを提案する。AEDタクシーと救命ドローンの対象エリアの境界については、重複ゾーンを設けて救命率を高める効果についても検討したい。
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