研究課題/領域番号 |
21K04432
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23030:建築計画および都市計画関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
黒野 弘靖 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (80221951)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 雁木 / 町家 / 定期市 / 雪処理 / 城下町 / 街路村 / 湊町 / 祭礼 / 保全 / Gangi / townhouse / snow removal / festival / fair |
研究開始時の研究の概要 |
伝統的な街路空間である「雁木」は住宅前面の庇が軒を接する形で連続的に採用されることにより形成された「通り」を指し、新潟県上越市では私有地に属する。「私」の連担による「共」の領域の例として、申請者らは機械化以前の雪処理における、雁木町家の自立した雪処理が通りの共用通路形成と町内による管理へつながるシステムを把握した。こうした「私」と「共」との連関は、近代的な都市整備以後には不明瞭になっており、整備前の住人によるしつらえと利用と管理の把握が不可欠である。本研究では、雪処理のほか定期市や祭礼における雁木町家の居住システムの合理性を整備前後を通して明らかにし、雁木が生活に根ざしていたことを説明する。
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研究実績の概要 |
城下町〈高田〉大町4丁目で開催される四九定期市について冬季の積雪時の店棚設置状況を調査した。出店者数が減少する中、出店者は雁木をもつ町家の前に1軒おきに店棚を設置していた。出店者は、雁木軒先からの堆雪を両脇に除け、店棚を雁木軒下に差しかかるように通り側を向けて構えていた。これにより出店者は、通り中央からの来客と雁木通りからの来客の両方に対応できるようにしていた。 城下町〈高田〉大町3丁目で開催される二七定期市について、7月、9月、10月、12月の4回、定期市開催地区全域における店棚の形状、分布、種類、配置、出店者向き、来訪者経路、時間変化を記録した。店棚配置の特徴として以下5点を把握した。① 雨天時や風雪時に出店者数は減少し、出店者は雁木の前に店棚を構えていた、②雨天時や風雪時に出店者は店棚を雁木軒下に差しかかるように通りに向け、同時に雁木内の来客通路を確保して配置していた、③冬季強風時に出店者は通りの雁木前に運搬車両を停め、荷台を開き雁木柱と荷台の間にシートを架けて雁木通りに向いた店棚としていた、④4軒の非居住の雁木町家において、出店者が所有者の了承を得て町家のミセを雁木前の店棚と併せて運営していた、⑤町家のミセ前面を開放し、夏季に扇風機、冬季にストーブを雁木に向けて置き、通りからの来客と雁木通りからの来客がミセで滞留しやすい場をつくっていた。 街路村〈稲田〉の雪処理システムを水路左岸の農家を営む雁木町家に生まれ育った住人へ雪処理手順を聞き取ることは、コロナ渦のため実施できなかった。新潟県上越地方は降雪量が少なく、能登半島地震の被害もあり、積雪状況の現地調査を実施できなかった。そのため上越市〈稲田〉と同様に、水路を持つ街路村である新潟県魚沼市〈虫野〉について屋敷構えと水路の位置関係を実測し、住人へ機械除雪以前の雪処理手順を聞き取りした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「非日常の生活場面としての湊町〈直江津〉の夏季例祭時の居住システムの把握」について、当初予定していた神輿が停止する1軒に注目し、迎え・礼拝・送りの3場面における町内住人と神輿の位置と向きを時間経過に沿い断面図と平面図のセットを記録する現地調査は、コロナ渦のため通り沿い雁木町家を廻る御輿巡幸が中止されたことにより実施できなかった。 一方、「定期市開催時の戸別の雁木に対応した出店者のしつらえと通りにおける共用空間」については、城下町高田の大町4丁目で開催される四九市を対象として、4月、5月、6月の3度、開催地区全域において店棚の分布、種類、配置、出店者向き、来訪者経路、時間変化を記録できた。大町3丁目で開催される二七市についても開催地区全域を対象として、7月、9月、10月、12月の4度、店棚の分布、種類、配置、出店者向き、来訪者経路、時間変化を記録できた。各月ごとの出店者の位置と商品についても記録できた。また、「1950年代の高田市住宅調査資料による区画整理事業以前の店棚の位置と向き」については、二七市の店棚の実測データと比較し、雁木軒先に店棚が入り込み通り側を向いてテントを組む方式の継続とテントを用いない店棚の増加を確認できた。 街路村〈稲田〉の雪処理システムを水路左岸の農家を営む雁木町家に生まれ育った住人へ雪処理手順を聞き取ることは、コロナ渦のため実施できなかった。新潟県上越地方は降雪量が少なく、能登半島地震の被害もあり、積雪状況の現地調査を実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
城下町高田の二七市について店棚の調査を継続し、令和5年度のデータと併せ、通年での雁木と定期市との関係の変化とその要因を把握する。令和4年度と5年度の高田四九市のデータと比較して共通する特徴を把握する。上越地域に属する妙高市朝日町通りの六十市と直江津旧新橋区の三八市について店棚配置と出店者位置を記録する。 城下町高田の雁木町家について、定期市開催地区以外でもコロナ渦において空き家の利用が進行していると確認できたことから、高田地区全域にわたる雁木町家の現況調査を行う。 「非日常の生活場面として湊町〈直江津〉の夏季例祭時の居住システムの把握」について、曙地区と裏砂山地区において、神輿が停止する1軒の雁木町家に注目し、迎え・礼拝・送りの3場面における町内住人と神輿の位置と向きを、時間経過に沿い断面図と平面図のセットに記録する。雁木のしつらえと住人利用から、神輿の迎え・送りでは近隣住人の場となり、各戸の礼拝時には私領域となり、各戸の自立を町内住人が相互承認する機会となっていること、神輿移動に伴う機会と場所の連続的変化の過程を把握する。これらの機会と場所の成立と、雁木の道路および隣戸側への開放性との関係を把握する。また、曙地区において、私有地である雁木と公有地であるアーケードにおいて、雁木へのしつらえと町内住人の行動がどのように異なるかを3場面ごとに記録する。 通り中央に水路を持ち、農家と商家の雁木町家が向かい合う街路村稲田の雪処理システムを把握する。水路左岸の農家を営む雁木町家に生まれ育った住人へ雪処理手順を聞き取り、水利組合の保管する用水改修の従前図から、通り断面図と連続平面図を復原し、両側雁木町家のはらきかけの重なり方を記録する。
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