研究課題/領域番号 |
21K04435
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23030:建築計画および都市計画関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
浅野 聡 三重大学, 工学研究科, 教授 (70231892)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 立地適正化計画 / 居住誘導区域 / 震災復興 / 防災まちづくり / 復興まちづくり / 応急仮設住宅 / 木造応急仮設住宅 / ハザードエリア / 連続復興 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、南海トラフ巨大地震等の大規模災害に備える三重県(東海地方)を対象にして、①日常時の持続可能社会の構築のためのコンパクト・プラス・ネットワーク型都市づくり、②災害時の迅速な復興まちづくり、の両者に備えた都市計画を推進するために、地方公共団体が策定した立地適正化計画の居住誘導区域において、被災者の住まいを連続的に復興させるための「連続復興型木造住宅計画」を検討することを目的としている。「連続復興型木造住宅計画」とは、予め居住誘導区域にて復興用地として選定した建設地に木造応急仮設住宅を建設し、供与終了後に復興住宅に転用して継続利用し、復興後のコンパクトな都市づくりに資する計画である。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、南海トラフ地震の発生時に津波被害が想定されるとともに立地適正化計画を策定済みの三重県沿岸部の6市町を対象にして、震災後に必要となる建設仮設の建設候補地(公有地)の充足度を算出して現状を評価するとともに、課題と対策を検討することを重点的に取り組んだ。主な研究成果は、以下の通りである。 第一に、居住誘導区域内の建設仮設の建設候補地を調査した結果、住区基幹公園である街区公園と近隣公園が多いことが把握できた。また1住区あたり近隣公園は0.03箇所、街区公園は0.3箇所しか建設候補地になっておらず、十分に整備されていない状況が課題として明らかになった。 第二に、建設候補地の充足度を検討するための評価の手順について検討し、Step1からStep10を考案した。Step1からStep6は、申請者の既往研究の成果をベースにして、既往研究では建設仮設の不足分を補う対策は未検討であったため、新たにStep7からStep10を追加して改善した。具体的には、被災者は被災前に居住していた住区内の建設仮設に入居できると仮定し、住区ごとに建設候補地として街区公園を追加することによって各住区及び全体の充足度がどの程度向上するのかを検討するようにしたこと、建設仮設が不足する住区の被災者は当該住区に隣接し、かつ余剰戸数を抱える住区の建設仮設に入居するために移転すると仮定し、各住区及び全体の不足戸数をどの程度減らすことができるのかを検討するようにしたことである。 第三に、Step1からStep6における分析の結果、多くの市町で充足度が低く現在の準備状況では建設候補地が不足することが明らかになり、充足度の向上のためにStep7からStep10の分析を追加した結果、不足分と充足度を一定程度改善できたが、なお充足度が100%未満の住区があることが課題として明らかになったことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、評価手順の検討に関しては、既往研究では対象外としていた建設仮設の不足分を補うための対策についても追加して改善することを検討し、2つの対策を追加することが出来たことである。そして考案した評価の手順に従って、対象としている6市町の現状について検討し、市町ごとに現状の建設仮設の不足戸数と充足度、及び改善策を追加したことよる不足分及び充足度の向上を具体的に算出することが出来、6市町の現在の準備状況は3つに類型できることが明らかになった。そして不足する建設仮設の戸数と低い充足度については、どの程度の規模の建設候補地を確保すれば充足度がどの程度向上するのかということについて、住区ごとに未整備の街区公園を追加することを仮定することによって、住区単位で新たな建設候補地を追加する際の1つの目安を示すことが出来た。これは、行政担当者が(公有地のみならず)民有地を探す際に用地の規模をイメージする際にも参考になると思われる。 第二に、以上の研究成果をとりまとめて、日本建築学会大会における口頭発表や同学会の専門誌(査読付)において論文発表(条件付き採用。掲載は2023年度)をすることが出来た。特に日本建築学会大会においては、連名者である2名の大学院生が「日本建築学会大会学術講演会若手優秀発表賞(都市計画部門)」を受賞することが出来、研究内容について高い評価を受けることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、木造仮設を復興住宅として継続利用することを具体的に検討するために、三重県6市町を対象にして、各住区および居住誘導区域内全体の復興住宅(災害公営住宅等)の必要戸数と木造仮設の供給可能戸数を推計し、各市町の住区における木造仮設の継続利用を考慮した住まいの復興にむけた現状と課題等を明らかにする。 第二に、熊本地震の際に木造仮設を復興住宅(単独住宅)として現在も継続利用している実績を持つ熊本県の11市町を研究対象にして、現在の利用状況、継続利用を行った背景・理由、建設地の条件等について調査を行い、継続利用に向けた条件等を明らかにする。また立地適正化計画を策定済みの市町に関しては、居住誘導区域の設定範囲と復興住宅団地(木造仮設を復興住宅として継続利用している団地)の位置関係等についても調査し、新しい計画である立地適正化計画から捉えた木造仮設の継続利用の評価(成果と課題)を明らかにする。 第三に、居住誘導区域における連続復興型木造住宅計画について検討し、予め居住誘導区域において復興用地として選定した建設地に木造仮設を建設し、供与終了後に復興住宅に転用して継続利用し、復興後のコンパクトな都市づくりに資する計画の必要性と同計画の基本フレームについて考察し、研究の総括を行う。
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