研究課題/領域番号 |
21K04453
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
勝亦 達夫 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 講師 (60789709)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 養蚕 / 蚕書 / 近代蚕室 / 構成要素 / 仕組み / 技術伝播 / 模範蚕室 / 稚蚕飼育 / 飼育法 / 建築要素 / 町並 / まちづくり |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、明治期に養蚕をするために近代蚕室が建築された長野県上塩尻地区を対象とし、上田蚕糸専門学校の技術指導や蚕書の影響を受けて、この地域の近代蚕室が建築され、養蚕のためのまちづくりとして展開したか、その形成過程を明らかにする。対象地域には、エリア(面)として建築の新築・改修の変遷についての史料と蚕室遺構が残されている。建築単体のみならず地域(エリア)の「まちづくり」として養蚕という産業が果たした影響と、近代蚕室の技術伝播による養蚕の町並形成過程の実態を解明する。
|
研究実績の概要 |
令和3年度は、養種業の主要な生産地であった長野県上田市上塩尻において、地域における養蚕法と蚕室の建築方法の関係に着目し、技術指導書であった蚕書で推奨された建築的要素の現存状況や復元によって当初の形式を明らかにしてきた。空間構成や建築要素に影響を与えた「火炉」に着目し考察をした。令和4年度は、佐藤家が蚕種や稚蚕飼育を担っていた点に着目し、この技術の周辺への伝播や中央の技術が明治~昭和にかけて浸透されたことを明らかにした。模範的な蚕室が各地に作られていることを把握した。昭和初期にかけて近代蚕室の要素を備え、蚕が小さい時(稚蚕)を共同で飼育する「稚蚕共同飼育所」が建設さた。当時、模範的に参照されたであろう専用蚕室には、埼玉県の競進社や群馬県の高山社の蚕室や、政府によって設立された「蚕業講習所」や各地「蚕業試験場」の蚕室が挙げられる。蚕書においても建築方法が詳述され紹介されているが、建築を操作して飼育する近代蚕室の仕組みは明治 30-40年には確立し、以降大正~昭和にかけては、精緻な温湿度管理が必要となる稚蚕飼育(掃立~二齢)と冷涼な環境での飼育を要し、広いスペースを必要とする壮蚕飼育(三齢~上蔟)を分業する流れがみられる。 具体的には今回、長野県飯綱町の番匠稚蚕飼育所番匠公民館(番匠公民館)の解体工事がなされるに際し調査の機会を得た(2022年実測調査を実施)。本建築は、昭和9年に当初稚蚕共同飼育所として建築されたものであり、近代蚕室に必要な建築的要素を備えている。この建築に分析から、近代蚕室の建築的要素を把握し、各地の稚蚕共同飼育所との共通点から、地域の蚕室が模範的な型を参照して建てられた様相について考した。これは、明治期に養蚕技術が確立して以降、中央政府から地方に典型的なモデルが伝播した近代化の諸相のひとつとして捉えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための自粛が緩和されてきたおかげで、これまでできなった調査や取組みが再開できた。県外をまたいでの調査や対面での資料収集ができたことから、調査の再開以降飛躍的に調査・研究活動を進められている。特に、技術伝播の出口(終点)から、新たな文献資料/史料の発見につながり、実態の解明を進めることができた。「稚蚕飼育所」は各地に建築されていたことがわかり、これらはその後公民館や別の産業拠点に改装され遺されているものの、既に何の施設化が分らない状況で遺っている。この成果について、日本建築学会北陸支部、日本建築学会全国大会で2023年度に発表予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
調査をしていく中で、蚕業伝習所や蚕業学校などの技術伝播の拠点の存在がまずます大きくなっていた。この3年間で他の視点からの研究も進んでいることもあり、新たな資料や整理された史料が発見されている。今までわからなかった実態や、中央と地方の関係、キーとなる人物とその建築遺構との比較は、対象地域の建築の分析や全体の技術伝播の様相を把握するために非常に重要となる。資料調査を継続しながら、遺っている個々の建築遺構とも比較し、技術伝播の実態を把握していきたい。
|