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清朝末期から日本統治初期の台湾において製糖業が地域開発に与えた影響

研究課題

研究課題/領域番号 21K04456
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分23040:建築史および意匠関連
研究機関熊本県立大学

研究代表者

辻原 万規彦  熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (40326492)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
キーワード領域史 / 都市史 / 台湾総督府文書 / 台湾百年歴史地図 / 台湾日日新報 / 地域開発 / 原料採取区域 / 軽便鉄道 / 下淡水渓 / 台湾総督府 / 灌漑施設 / 濁水渓 / 卑南渓 / 台車軌道 / 製糖工場 / 土地開発
研究開始時の研究の概要

本研究では,「清朝末期の台湾の社会と地域の枠組みが,製糖業の導入によって,どのような過程を経て,日本統治期における台湾の社会と地域の枠組みに変容したか」を,「多量の新聞記事,旧版地図ならびに現地調査を組み合わせることによって解き明かす」ことを目指す。
具体的には,まず,この時期に建設された工場であり,圧搾工程のみに機械を用いた「改良糖■」(■は,まだれの下部に「部」)の全容を明らかにする。次に,台湾総督府の糖業政策と地域開発の関係を明らかにする。さらに,台湾各地を幾つかの領域に分け,清朝末期の台湾の社会と地域が日本統治期の枠組みに変容した過程を,地域ごとに比較して詳細に理解することを目指す。

研究実績の概要

本研究の目的は,「清朝末期の台湾の社会と地域の枠組みが,製糖業の導入によって,どのような過程を経て,日本統治期における台湾の社会と地域の枠組みに変容したか」を,「多量の新聞記事,旧版地図ならびに現地調査を組み合わせることによって解き明かす」ことである。
当初は,1年目から3年目の2021年度から2023年度までで,基本情報の整理によって基礎を固めた後に,現地調査を組み込んで研究を加速させることを計画した。具体的には,次のような計画であった。①新式製糖工場以前の製糖工場である「改良糖■」(■は,まだれの下部に「部」。以下同じ。)の位置の同定と甘蔗や砂糖の輸送のためのインフラに関する文献調査,②①を基にした台湾での現地調査と台湾での空中写真の収集,③台湾総督府文書など公文書に類する史料や新聞記事の収集と考察,④祝辰巳(殖産局長や民政長官を歴任)の経歴や果たした役割と実績に関する調査,などを行うことである。
3年目の2023年度は,9月に新型コロナウイルス感染症の流行以来初めて台湾での現地調査を実施することができた。ただし,調査時に台風が台湾を直撃した影響で当初の予定通りの調査や打ち合わせを行うことができなかった。しかしそれでも,台湾の研究者と久しぶりに対面での交流ができ,台湾東部を中心に現地調査を実施できたことは大きな成果であった。また,これまで収集した資料/史料の内容の精査と理解も進めることができた。
その結果,台湾中南部の嘉義庁,鹽水港庁,台南庁,東部の花蓮港庁,中部の台中庁を対象に「改良糖■」の立地と甘蔗や砂糖の輸送のためのインフラの変容過程について検討することができ,査読付き論文として発表することができた。さらに,11月に神戸女子大学三宮キャンパスで開催された「都市空間編成研究会」で「変容する「範囲」でとらえる日本統治期初期における台湾の領域」を報告することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

計画の立案当初は,新型コロナウイルス感染症の影響が1年目と2年目の2021年度から2022年度まで及ぶとは考えておらず,この期間は現地調査を実施することができなかった。見込み違いは反省すべきであるが,その中でも何とか当初の研究の目的を達成できるように研究の方法や実施の時期を組み替えて鋭意研究を進めている。
文献調査では,当初の計画の通り,台湾を構成する彰化平野,嘉南平野,屏東平野,蘭陽平野,花東縦谷(花蓮地方と台東平野),桃竹苗丘陵の5つの領域に分けて研究を進めている。そのうち,彰化平野,嘉南平野,屏東平野,蘭陽平野,花東縦谷については「改良糖■」(■は,まだれの下部に「部」。)の立地や交通インフラに関する文献調査,台湾総督府文書を用いた検討を既に行うことができた。その結果,これらの領域では,清朝末期の台湾の社会と地域の枠組みが,製糖業の導入によって,どのような過程を経て,日本統治期における台湾の社会と地域の枠組みに変容したかのかを解き明かすという本研究の目的はある程度達成できたと判断している。
ただし,台湾での現地調査はまだ1回のみしか実施できていない。これには,研究成果を確保するためにも先行して査読付き論文を投稿してきたこと,すなわち,文献調査に注力して時間をかけたために,現地調査の時間を確保することが難しかったことも影響している。さらに,計画の立案当初は「改良糖■」の位置を地番レベルまで詳細に同定できると予想していたが,現段階では,資料/史料の制約と現地調査の実施が少ないことから,ほとんどの場合で日本の町村にあたる庄や街レベルまでしか同定できていない。
以上のように,現地調査が実施できていないために「改良糖■」の位置を地番レベルまで詳細に同定できていないこと,桃竹苗丘陵について文献調査をあまり進めることができていないことなどから「(3)やや遅れている。」と評価した。

今後の研究の推進方策

新型コロナウイルス感染症の影響などで当初の研究計画通りに研究が実施できないまま4年間の研究期間の半分である2年間が過ぎてしまい,3年目の2023年度でも完全には取り戻すことが難しいと考えた。そこで,3年目の2023年度は,昨年度提出した実施状況報告書で報告した通り,先に文献調査を実施し,その成果をもって現地調査を実施してさらに両方の調査の結果をとりまとめて研究のまとめとする方針を転換することにした。つまり,現地調査よりも文献調査に重点を置いて研究を進めることにした。これは,文献調査を続けてきたことによって様々な情報や知識が蓄積されているので,思考が中断されないように,もしくは記憶が薄れないように文献調査を継続して進める方がよいと考えたことにもよる。ただし,当初の研究目的である「清朝末期の台湾の社会と地域の枠組みが,製糖業の導入によって,どのような過程を経て,日本統治期における台湾の社会と地域の枠組みに変容したか」を解き明かすことは当然のことながら堅持する。
具体的な研究方法に関する3年目の2023年度の方針転換を受けて,4年目の2024年度では,4年間の研究期間全体を通して,例え個別の調査方法や時期を変更したとしても,当初に設定した大きな研究目的を達成することに努めたい。その際,4年目の2024年度の当社の計画では,新たな内容の調査を実施せず,補足調査に止め,研究の取り纏めに全力を注ぐこととしていたことをうまく利用したい。
これまでの3年間では,当初に立案していた具体的な研究計画をなかなか遂行できないことばかりに頭を悩ませてきたが,大きな研究目的を達成するためには何に取り組むべきか,と考えを切り替えることが重要ではないか,と考えている。そのために,これまでの研究成果を今一度見直し,残された研究期間を有用に活用するための方策を考えたい。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (15件)

すべて 2023 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] 中央研究院人文社會科學研究中心地理資訊科學研究專題中心/中央研究院臺灣史研究所(その他の国・地域)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [国際共同研究] 中央研究院人文社會科學研究中心地理資訊科學研究專題中心/中央研究院臺灣史研究所(その他の国・地域(台湾(中華民国)))

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [国際共同研究] 中央研究院人文社會科學研究中心地理資訊科學研究專題中心/中央研究院臺灣史研究所(その他の国・地域(台湾(中華民国)))

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 日本統治期台湾における米作優越地帯での製糖業による地域の開発過程2023

    • 著者名/発表者名
      辻原万規彦,今村仁美
    • 雑誌名

      日本建築学会計画系論文集

      巻: 88 号: 813 ページ: 3158-3169

    • DOI

      10.3130/aija.88.3158

    • ISSN
      1340-4210, 1881-8161
    • 年月日
      2023-11-01
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 明治後期から大正期の台湾花蓮地方における製糖業からみた地域の開発2023

    • 著者名/発表者名
      辻原万規彦,今村仁美
    • 雑誌名

      日本建築学会計画系論文集

      巻: 88 号: 809 ページ: 2229-2240

    • DOI

      10.3130/aija.88.2229

    • ISSN
      1340-4210, 1881-8161
    • 年月日
      2023-07-01
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 製糖業からみた明治期台湾における地域の開発主体の変容2023

    • 著者名/発表者名
      辻原万規彦,今村仁美
    • 雑誌名

      日本建築学会計画系論文集

      巻: 88 号: 806 ページ: 1517-1528

    • DOI

      10.3130/aija.88.1517

    • ISSN
      1340-4210, 1881-8161
    • 年月日
      2023-04-01
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 日本統治期の台湾南部恒春地域における製糖業の展開と地域の開発2023

    • 著者名/発表者名
      辻原万規彦,今村仁美
    • 雑誌名

      日本建築学会技術報告集

      巻: 29 号: 71 ページ: 515-520

    • DOI

      10.3130/aijt.29.515

    • ISSN
      1341-9463, 1881-8188
    • 年月日
      2023-02-20
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 日本統治期の台湾都市計画令と都市計画講習会2023

    • 著者名/発表者名
      辻原万規彦,箕浦永子
    • 雑誌名

      日本建築学会九州支部研究報告

      巻: 62 ページ: 473-476

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 明治期台湾における糖業政策が地域の再編成に与えた影響2022

    • 著者名/発表者名
      辻原万規彦,今村仁美
    • 雑誌名

      日本建築学会計画系論文集

      巻: 87 号: 797 ページ: 1395-1406

    • DOI

      10.3130/aija.87.1395

    • ISSN
      1340-4210, 1881-8161
    • 年月日
      2022-07-01
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 原料採取区域の変遷からみた日本統治期初期の台湾濁水渓流域における地域開発の進行2022

    • 著者名/発表者名
      辻原万規彦,青井哲人,恩田重直,今村仁美
    • 雑誌名

      日本建築学会計画系論文集

      巻: 87 号: 792 ページ: 464-475

    • DOI

      10.3130/aija.87.464

    • NAID

      130008150300

    • ISSN
      1340-4210, 1881-8161
    • 年月日
      2022-02-01
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 明治期台湾南部の地域開発と糖業政策2022

    • 著者名/発表者名
      辻原万規彦,今村仁美
    • 雑誌名

      日本建築学会九州支部研究報告

      巻: 61 ページ: 521-524

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 明治40年代から大正期の台湾卑南渓流域における製糖業が地域開発に与えた影響2021

    • 著者名/発表者名
      辻原万規彦
    • 雑誌名

      都市計画論文集

      巻: 56 号: 3 ページ: 1023-1030

    • DOI

      10.11361/journalcpij.56.1023

    • NAID

      130008107719

    • ISSN
      0916-0647, 2185-0593
    • 年月日
      2021-10-25
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 日本統治期初期の台湾台中地方における製糖業と地域の開発2023

    • 著者名/発表者名
      辻原万規彦
    • 学会等名
      日本建築学会大会(近畿)学術講演会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 明治30年代から大正初期の台湾花蓮渓流域における製糖業と土地の開発2022

    • 著者名/発表者名
      辻原万規彦
    • 学会等名
      日本建築学会大会(北海道)学術講演会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 帝国日本の南北に建設された製糖工場と社宅街(上水流久彦編『大日本帝国期の建築物が語る近代史 過去・現在・未来』所収)2022

    • 著者名/発表者名
      辻原万規彦
    • 総ページ数
      13
    • 出版者
      勉誠出版
    • ISBN
      9784585325123
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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