研究課題/領域番号 |
21K04470
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 公立鳥取環境大学 |
研究代表者 |
浅川 滋男 公立鳥取環境大学, 環境学部, 教授 (90183730)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ボン / 非仏教 / チュンドゥ神 / クブン寺 / シッパイゲルモ女神 / ベンジ村 / ムクツェン神 / 祭場ギョンカン / ブータン / チベット仏教 / ベンジ(ベンブジ) / ナグツァン / ムクツェン / 非仏教的土着神霊 / ボン教 / 密教 / ストゥーパ / 円堂 / 行基 / マンダラ / 調伏 / 護法尊 |
研究開始時の研究の概要 |
チベット・ブータン仏教は、北インドの後期密教が土着的宗教と習合したものである。習合対象として特に重要な位置を占めるのはボン教だが、その実態は曖昧であり、多様な前仏教/非仏教的な要素を「ボン教」として一括し誤解する傾向が否めない。本研究は、ボンとボン以外の異教的要素を識別しつつ、仏教とボン教の相互影響を明らかにしようとする試みである。本研究では、主にブータンでボンとニンマ派仏教の融合期(黒ボン)、ブータンに隣接する旧チベット領カム地方でボンの仏教化期(白ボン)の寺院等を調査し、ボン教と仏教の相互影響と差異を明らかにしていく。また、リンボン、マニタイ等の石積みをモンゴルのオボーと比較する。
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研究実績の概要 |
2023年8月末~9月初に第10次調査を実施した。まずハ地区ハテ村のチュンドゥ寺を訪問すると、偶然にも年に一度の大祭を催していた。本寺は表向きドゥク派の仏寺だが、仏壇中心部の仏像群よりも、仏堂隅の土地神チュンドゥとその弟ジョウヤの偶像を参拝者は熱心に拝む。寺の近くにあるJ家は、仏間にチュンドゥとジョウヤの偶像を祀る唯一の民家である。仏間正面の仏壇に多数の仏教尊格の像を置き、土地神チュンドゥ・ジョウヤ兄弟の像は左の脇壁の前にある。寺も民家も、土地神の祭場は仏像群よりも劣位にあるが、住民は、チュンドゥが仏教尊格より重要な存在だと明言する。信仰の祭場で序列が反転している。 次にポプジカのクブン寺を再調査した。センデン・デワの開山(13世紀か)とされる元ユンドゥン・ボンの寺院で、今はドゥク派の仏寺だが、二階仏堂奥のギョンカン(秘奥の神の間)にボンの女神シッパイゲルモを祀る。壁画には、ガンテ寺の神ゲンポーが後ろからゲルモをレイプするシーンを描く。ヒマラヤの守護神たるゲンポーとボンの女神の間に家畜をめぐる争いがあり、その腹いせに暴力的な性行為が発生したと聞いた。 最後にトンサ地区に残るボン教徒の隠れ里ベンジ村で再調査。吐蕃の仏教王ティソン・ディツェンの末息子(ボン教徒)が落ちのびた秘境である。旧領主宅ナグツァンを平面実測し空間構成の全体像を理解した上で、土地神ムクツェンを祀るギョンカン(仏間の奥)での法要に参加した。ここでも土地神は劣位の祭場にあるが、仏教尊格群以上に重要視されている。形而上学的な仏教は高位の僧侶が悟りのために学ぶものだが、ボンは平民の身の回りから厄災を避け御利益をもたらすと信じられている。吐蕃の末裔が信じるのは仏教化著しいユンドゥン・ボンではなく、山に住む無形の神ムクツェンである点、特に注目すべき。以上等から、ブータンの非仏教系神霊を偶像化と祭場を指標として分類した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍に加え、昨年(2023)5月後半に脳梗塞で入院し、その後も体力を消耗する活動を控え気味にしてきた。ブータン調査はなんとか1回こなしたが、それに継続する調査を2023年度内に実施し、報告書を刊行するのは不可能と判断した。なお、ブータンの密教・ボン教・非仏教系信仰に係わる研究成果については、日本と中国のシンポジウム等で何度か講演している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度(2024)、最後のブータン調査として、中央ブータンのツェムガン県ゴレン村など未踏の地を訪問し、科研の全体報告書を編集・刊行する。また、来年度、その報告書をもとに単行本を出版する。
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