研究課題/領域番号 |
21K04471
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
海老澤 模奈人 東京工芸大学, 工学部, 教授 (40410039)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 生活最小限住居 / 近代建築国際会議(CIAM) / 近代建築史 / ドイツ / 集合住宅 / 住宅史 / ジードルンク / 住宅団地 / 1920年代ドイツ / 住宅計画 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は、「生活最小限住居」に関する以下の3つのテーマを4年の研究期間で実施するものである(「生活最小限住居」とは、1929年にドイツのフランクフルト・アム・マインで開催された第2回近代建築国際会議において、近代建築家たちが取り組んだ住宅計画に関する当時の主要課題のことである)。 1.1929年の第2回近代建築国際会議「生活最小限住居」の実態の解明 2.「生活最小限住居」の国際的な影響関係の考察 3.「生活最小限住居」の歴史的位置づけの検討 2021-2023年度の各年度に上記1-3のテーマを段階的に実施し、最終の2024年度には全体の取りまとめと補足調査を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は、1929年にドイツのフランクフルト・アム・マイン市で開催された第2回近代建築国際会議(CIAM)において近代建築家たちが取り組んだ「生活最小限住居」を題材に、以下の3つのテーマに取り組むものである。 (1).「生活最小限住居」に関する歴史的資料を調査・分析し、この会議と展覧会の実態について新たな史実を提示すること (2).「生活最小限住居」を糸口に同時代の住宅計画に関する国際的な影響関係の一面を明らかにすること (3).「生活最小限住居」を20世紀の住宅計画の展開の中で捉え、この会議の歴史的位置づけを再検討すること 新型コロナウィルス感染症の影響が収まったことから、3年目にして初めて夏期(8月末から9月初め)の海外調査を実施することができた。フランクフルト(ドイツ)では市史研究所史料室やドイツ建築博物館図書室等で資料収集を行い、並行して、最小限住居として建設されたジードルンクを視察し、関係者のインタビューを行った。さらにチューリヒ連邦工科大学(スイス)のgta史料室にてCIAMに関する資料を閲覧・収集することができた。あわせてシュトゥットガルト、バーゼル等のジードルンクの事例を視察し、新たな知見を得た。以上の調査の成果の一部とそれ以前の調査資料をもとに、令和5年度の日本建築学会大会および同会関東支部研究発表会にて報告を行った。今年度(令和6年8月)の同大会でも発表予定である。さらに令和5年度中には日本国内での資料収集も進め、上記の3つのテーマについての二次的な資料は広く収集できつつある。 本研究課題と関連する令和5年度の具体的な成果としては、上記の学会発表に加えて、日本の戦後初期の住宅団地に関する書籍出版、講演、論考・雑誌記事の執筆がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度にはドイツを中心とした現地調査を実施することができ、本研究の第1テーマである「(1)生活最小限住居の実態の解明」に関する資料の収集を進めることができた。ただし1、2年目に海外調査が実施できなかった影響で、このテーマに関する資料の分析とアウトプットはまだ初期の段階であり、その点で進捗状況に遅れがある。 一方で、研究初期における新型コロナウィルス感染症の影響により、上記の(1)から(3)のテーマを段階的にではなく並行して進める形に切り替えたが、第2テーマである「(2)生活最小限住居の国際的な影響関係の考察」における「日本との関係」に関しては、調査を順調に進めることができている。第2回近代建築国際会議と同時期の日本における住宅計画に関しては、資料を体系的に収集し、アウトプットの準備中である。また、生活最小限住居からの間接的な影響が見られる第二次世界大戦後の日本の住宅団地に関しては、書籍出版、講演、論文・記事の執筆を令和5年度中に実施できた。この点で、第3のテーマである「(3)「生活最小限住居」の歴史的位置づけの検討」に関しても部分的にアウトプットを進めることができていると考えている。さらに、同時代のドイツの住宅計画のトピックス(ヴァイセンホーフ・ジードルンクなど)に関する調査・考察も進めており、生活最小限住居の歴史的な位置づけの分析に多角的に取り組んでいる。 以上より、当初の研究計画通りには遂行できていないものの、最終的なアウトプットを見据え、多角的に研究を進展させることができている状況にあるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度においても、上記の(1)から(3)の3つのテーマを並行して進めていく。本年度を通して、日本国内で関連する資料(雑誌記事や書籍等出版物)の収集を進め、夏季休暇中(9月前半を予定)に10日間ほどのヨーロッパでの資料収集および建築視察のための現地調査を実施する予定である。この現地調査では主として2つの課題を設定している。一つは「(1)生活最小限住居の実態の解明」のための資料の追加調査で、昨年度の調査を踏まえてチューリヒ連邦工科大学のgta史料室を中心に補足調査を行いたい。もう一つは、上記(1)と「(2)生活最小限住居の国際的な影響関係の考察」の両テーマにかかわる、「ヨーロッパ各国の生活最小限住居への取り組み」に関する調査である。具体的には、1929年の第2回近代建築国際会議に参加した国の中からまだ十分な資料が得られていない北欧の複数の国(フィンランド等)に関して、建築視察と資料収集を行う予定である。以上の現地調査で得られた資料等について、年度の後半に分析を行い、本年度終盤もしくは翌年度に学術講演もしくは学術論文としてアウトプットすることとする。 なお当初の研究計画では、令和6年度は最終年度として研究の取りまとめを行うこととなっていたが、先述のとおり、研究初期の2年間において新型コロナウィルス感染症の影響のために海外調査が実施できず、研究の進捗に遅れが出ている。そのため、次年度(令和7年度)への研究継続も見越して、今年度の調査研究を進めていくことを記しておく。
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