研究課題/領域番号 |
21K04476
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分24010:航空宇宙工学関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
石井 一洋 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (20251754)
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研究分担者 |
片岡 秀文 大阪公立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (10548241)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 航空宇宙工学 / 推進機関 / デトネーション / 衝撃波 |
研究開始時の研究の概要 |
回転デトネーションエンジン(Rotating Detonation Engine、以下RDE)は、次世代航空宇宙用エンジンとして世界各国で研究開発が行われているが、RDE動作モードを支配する普遍的なパラメータは未だ確定しておらず、これは、主として燃焼器内における推進剤の混合状態がRDE毎に異なることに起因している。 本研究では、インジェクター構造の異なる複数のRDEに対して燃料濃度を実測することで、インジェクター性能が推進性能および動作モードに及ぼす影響を明らかにする。これにより、RDE開発に必要不可欠な、推力・比推力を定量的に予測可能な普遍的物理モデルを構築する。
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研究実績の概要 |
回転デトネーションエンジン(RDE)は、環状燃焼器の周方向にデトネーションを回転・定在させるものであり、次世代航空宇宙用エンジンとして世界規模で研究開発が活発に行われている。しかしながらRDEの動作モードを支配する普遍的なパラメータは未だ確定しておらず、これは主として燃焼器内における燃料濃度分布が燃焼器毎に異なることに起因している。 本研究は、これまでに実施例が無いインジェクター部の燃料濃計測を行うことで、インジェクター性能が推進性能およびRDE動作モードに及ぼす影響を明らかにし、推力・比推力を定量的に予測可能な普遍的物理モデルの構築を行うことを目的としている。 本年度は、昨年度に構築したファイバー光学系を用いた赤外レーザー消光法システムを用いて、様々な濃度のメタン-窒素混合気を用意してメタンのモル消光係数を求めた後に、非燃焼時におけるメタン濃度分布計測を行った。得られたメタンの周方向燃料濃度分布は、使用したインジェクター燃料孔の配置と整合しており、全メタン噴射量から、燃焼室内の局所当量比分布を得ることに成功した。さらに、燃焼時におけるメタン濃度計測結果と高速度カメラによる燃焼発光画像の比較より、一時的なメタン供給不足により回転デトネーション波の不安定性が誘起されることがわかった。なお、燃焼時にはレーザーシートの光量不足によりメタン濃度計測可能な空間範囲が狭まったものの、燃焼室内の燃料濃度の成層を確認することができた。 また、燃焼室静圧計測と推力計測に基づいた、レイリー流れとファノー流れの組み合わせから構成される1次元流れモデルにより、推力を精度良く予測することに成功した。 さらに、Burgers方程式に化学反応による発熱、インジェクターの利得回復および減衰項を加味した修正Madjaモデルを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に記載したように、令和4年度は昨年度に製作した燃焼室外形80 mmの噴孔型RDEを対象に、赤外レーザー消光計測システムを用いて、RDE燃焼器内のメタン濃度分布を計測した。これにより、燃料インジェクター孔の周方向配置と同周期のメタン局所当量比分布を、非燃焼試験において求めることに成功した。さらに、燃焼試験時におけるメタン濃度の時間変化が得られ、こけから求めた周波数は燃焼室内の回転デトネーション波の周波数と合致することから、本燃料濃度分布計測システムの妥当性が検証できた。 また、燃焼室静圧計測と推力計測に基づいた、レイリー流れとファノー流れの組み合わせから構成される1次元流れモデルを構築した。この流れモデルは、RDE燃焼器における壁面熱損失と壁面摩擦損失を考慮することができ、実際の推力を精度良く予測することができる。 さらに、Burgers方程式に化学反応による発熱、インジェクターの利得回復および減衰項を加味した修正Madjaモデルを構築し、種々のRDE動作モードを再現可能となった。 以上のように、燃焼器内の燃料濃度分布計測に成功しているものの、燃料濃度分布計測の光学系調整に時間を要し、当初予定していた様々なインジェクター構造に対する燃料濃度計測は来年度に実施予定としたため、本研究は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
RDEの動作モードは燃焼室構造と推進剤の質量流量に大きく影響を受けるものの、同一燃焼室に対して同一質量流量で燃焼試験を行っても、必ずしも同一の動作モードとはならない。これは、燃焼器毎に使用しているインジェクターが異なるためであり、燃焼室のインジェクター出口付近における燃料濃度分布が動作モードに大きく影響することがわかっている。 本研究は、これまでに計測例が無いRDE燃焼器の燃料濃度分布が動作モードおよび推進性能に与える影響を解明することを主眼としており、令和5年度は下記の事項を予定している。 (1) 非燃焼時および燃焼時の燃料濃度分布を変化させ、回転デトネーション伝播モード、燃焼室静圧、推力を調べる。 (2) インジェクター構造を変化させ、燃料濃度分布と回転デトネーション動作モードおよび推力との条件マッピングを行う。なお、ファイバー光学系とレーザーシートの併用により赤外レーザー出力が低下し、とくに燃焼時には燃料濃度計測に必要なレーザー強度が得られない可能性がある。そのため、必要時応じてレーザーシートの幅を狭めて燃料濃度計測を行う。 (3) 1次元Burgers方程式に基づく修正Madjaモデルのインジェクター回復項を、燃料濃度分布の計測値が反映可能なように修正し、動作モードの予測するモデルを構築する。
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