研究課題/領域番号 |
21K04490
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分24010:航空宇宙工学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
野中 聡 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (40332150)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | 再使用型ロケット / 垂直着陸 / 空力特性 |
研究開始時の研究の概要 |
垂直離着陸式の再使用型ロケットの着陸フェーズでは、エンジン推力によって地上に軟着陸する。本研究では垂直着陸時のエンジンからの排気プルームが機体底面および着陸脚に与える影響を空気力学および運動力学の観点で考察し、運用システムとして成立する機体底面や着陸脚形状、姿勢運動を含めた着陸プロファイルなど、垂直着陸型再使用ロケットのシステム構築に必要となる空力設計や垂直着陸方法の考え方を示すことを目的として、風洞試験および運動解析による研究を行う。
|
研究実績の概要 |
本研究では垂直着陸型再使用ロケットの着陸フェーズにおいて、減速・軟着陸のためのエンジン排気プルームと機体周りの流れの干渉と、機体底面および着陸脚へ与える熱的・機械的な影響を考え、運用システムとして成立する機体形状や姿勢運動を含めた飛行プロファイルなどについて、空気力学および運動力学の観点で考察し、垂直着陸型再使用ロケットのシステム構築に必要となる空力設計や着陸方法の考え方を示すことを目的としている。 1年目の令和3年度においては、再使用ロケットの着陸時におけるエンジン排気プルームを模擬するための風洞実験が可能なスケールモデルを設計するとともに、圧力計測システムの構築とその動作確認を行った。風洞実験に必要な圧力センサの仕様を設定し、計測システムを構築して風洞実験により動作確認を実施した。 2年目の令和4年度においては、1年目に設定した機体形状により、排気プルームを伴う機体周りの流れ場を模擬するための風洞実験が可能なスケールモデルを試作して、基礎的なデータを取得するための実験を実施した。スケールモデルには小型の気畜器とバルブを内装し、機体底面に設けられた貯気槽とノズルから排気プルームを模擬したジェットを吹き出す機構を構築した。過去の研究においては、外部からガスを供給するための配管が必要であったが、このシステムによって、内部からのガス供給が可能となり、モデル周りで流れ場に影響を与えていた外部配管が不要となったため、より正確に流れ場を再現することを可能とした。さらに、機体表面の圧力分布を計測するため、モデル表面全体に圧力孔を分布させ、圧力センサをモデルに内装することで、機体周りに形成される非定常な流れ場による圧力分布を精度よく計測することを可能とした。 構築した模型により風洞実験を行い、表面圧力の計測、模型駆動装置による迎角変更などの確認し、空気力評価の準備を整えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では垂直着陸型再使用ロケットの着陸時において、エンジンから排気プルームが機体底面および着陸脚に与える影響を空気力学および運動力学の観点で考察し、運用システムとして成立する機体底面や着陸脚形状、姿勢運動を含めた着陸プロファイルなど、垂直着陸型再使用ロケットのシステム構築に必要となる空力設計や垂直着陸方法の考え方を示すことを目的として、風洞試験および運動解析による研究を行う計画を示している。1年目に本研究の目的を達成するための風洞実験に用いる供試体の設計と計測システムの構築、2年目に供試体の試作と風洞実験の実施によるデータ取得、3年目に供試体模型の改修と風洞実験によるデータ取得、運動解析を計画している。 1年目の令和3年度の当初計画としては、排気プルームを模擬し、圧力分布を計測することができる模型の設計と試験条件の設定、計測システムの構築を達成する計画としていた。これに対し、ベースとなる機体形状および実験目的を達成するための模型表面の圧力計測方法などを設定するとともに、計測システムを構築した。排気プルームと主流の質量流束比または総圧比をパラメータとする実験条件を設定した。 2年目の令和4年度の当初計画としては、設定された上記仕様および試験条件により、風洞実験模型を試作して、着陸時の排気プルームを伴うロケット周りの気流を模擬し、着陸時の空力特性と流体現象を明らかにする計画としていた。これに対し、当初計画通り、空力特性を評価するための表面圧力計測が可能な風洞実験用のスケールモデルを試作し、風洞実験に供して、模型の動作とデータ取得が正常に行われることを確認した。気畜器と表面圧力センサを模型に内装するため、模型に対して一部の設計変更が必要となったが、1年目に設定した排気プルームと主流の質量流束比または総圧比をパラメータとする実験条件において風洞実験を実施する準備が整っている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は垂直着陸式の再使用型ロケットの着陸時の空気力学および運動力学の係る課題に対して、風洞実験と運動解析により着陸の成立性と繰り返し運用性についての両面に関する知見を得ることを目的としている。 2年目に引き続き、3か年計画の最終年度として、研究代表者が機体形状検討、風洞実験、運動解析の方針、計画、実行を取りまとめる。研究協力者の補助のもとに風洞実験、運動解析を行う。宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所の惑星環境風洞等を利用することで、本研究に関わる空気力学的な課題を早期に抽出するとともに、抽出された課題に対しては空気力学および飛行力学に関して多くの知見を有する研究協力者と協力して対策を行う。また、風洞実験から新たに抽出される課題に対して、光造形技術を利用した短期間での模型製作に加えて、宇宙科学研究所の工作室を利用するなどで、臨機応変に必要な改修を加えながら効率的に研究を進める。 これらの活動により3年間の研究成果をまとめ、本研究のゴールである垂直着陸型再使用ロケットのシステム構築に必要となる空力設計や着陸方法の考え方を示す。また、研究協力者である大学院生に対しては、本研究を題材とした教育にも繋がる研究活動とし、自ら課題を抽出して新たな研究提案ができるような人材の育成にも貢献する。
|