研究課題/領域番号 |
21K04500
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分24020:船舶海洋工学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
林 美鶴 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 准教授 (10294258)
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研究分担者 |
井上 徹教 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 領域長 (70311850)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 津波 / 海底堆積物 / 溶出 / 再堆積 / 大阪湾 / 栄養塩 / 基礎生産 / マリンハザード / アンモニア態窒素 / リン酸態リン / 海洋環境 / 南海トラフ地震 |
研究開始時の研究の概要 |
南海トラフ地震は30年以内に70%以上の確率で発生すると予想されていますが、高度経済成長を経た日本にとって次に来襲する津波がもたらす影響は未曽有です。本研究では大阪湾をモデルケースとして、津波による海底堆積物の擾乱が、海洋生態系の基礎をなす植物プランクトンの光合成環境に変化をもたらす可能性があるのか、実験と数値シミュレーションにより予測します。これにより、生態系サービス(人が受ける様々な恩恵)の維持やSDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献し、災害に対する内湾環境のレジリエンス(外力に対する回復力)の向上とDRR(災害リスクの軽減)につなげます。
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研究成果の概要 |
津波後の海底からの栄養塩溶出速度の変化を実験により推定した。津波後の溶出速度は現状に比べ、NH4-Nは71%、PO4-Pは62%に低減すると予想される。大阪湾の一次生産はリン律速で、基礎生産に対する栄養塩溶出の寄与が大きい現状では、津波による溶出量低下は基礎生産をさらに制限する可能性があり、周辺海域への栄養塩の供給が減少するため周辺海域の一次生産にも影響を与える可能性が示唆された。また、津波による海底堆積物の巻き上げで、水中に放出された栄養塩の拡散をシミュレーションしたところ、半分程度が2ヶ月間は大阪湾内に残存し、流出速度は徐々に低下して、概ね9ヶ月後には1割以下に低減する事が示唆された。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
富栄養化時代の総量規制により貧栄養化している現状を、津波はさらに悪化させる可能性が示唆された。津波による栄養塩環境の変化について将来予測を行った事例はなく、長期的な海洋環境保全施策に津波は考慮されて来なかった。しかし津波は必ず起こるため、脆弱性の低減やレジリエンスの強化は、海洋環境保全施策に盛り込むべきである。本研究の予測が正しいか否かは実際に津波が発生しなければ分からないが、予測を行っておかなければ検証はできない。本研究は次に起こる津波だけでなく、予測手法をブラッシュアップすることで、数十年毎に発生する津波に対するレジリエンスを高める研究であり、学術的にも社会的にも高い意義を持っている。
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