研究課題/領域番号 |
21K04530
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25010:社会システム工学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西村 悦子 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (60311784)
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研究分担者 |
新谷 浩一 東海大学, 海洋学部, 教授 (60290798)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | コンテナ港湾 / ビークル運用 / シャーシ運用 / コンテナ配置 / ターミナルレイアウト / ゲートの混雑状況 / ゲート前混雑緩和 / 港湾コンテナターミナル / ゲート制御 / 最適化モデル |
研究開始時の研究の概要 |
国内港湾では、荷役作業の最適化技術によって、コンテナターミナルでの荷役システムの高度化が進められているが、一方で、ターミナルのゲート前では、コンテナ搬送用トレーラーの待ち行列が、周辺地区における交通渋滞を招き、環境問題にも影響することが社会問題となっている。その対策の1つとして、ゲート前コンテナ仮置きデポの設置が計画されている。そこで本研究では、ゲート前コンテナ仮置きデポをどう運用すれば、ゲート前の待ち行列減少させ、ゲート通過を平準化し、ターミナル内部の荷役システム効率化に影響するかを明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
港湾ターミナルのゲート前では、コンテナ搬送用トレーラーの待ち行列が、交通渋滞を招き、環境問題にも影響することから社会問題となっている。これは日本国内だけなく、諸外国の港湾周辺でも同様である。このため、行政を主体として様々な対策が実施され、その1つとして、最近、ゲート前コンテナ仮置きデポの設置が計画されている。そこで本研究では、内陸側から到着するコンテナに着目し、ゲート前のコンテナ仮置きデポの利用の有無やその運用内容を考慮したコンテナ配置の最適化アルゴリズムを構築する。 当該年度では、コンテナ仮置きデポを配置することで、荷台部分のシャーシ運用方法の検討が必要となることから、空コンテナ回送、シャーシの運用、トレーラーヘッド(トラクター)の運用について検討した。特にトラクターがターミナルに到着し、荷役後にターミナルから出てくるまでの時間の長さの違いによる影響分析を行った。 また仮置きデポ利用への拡張を想定して仮置きデポを配置せず、空コンテナ回送を考慮したビークル運用に関する研究として、荷主とターミナル間のコンテナドレージを対象に、実入りコンテナ・空コンテナ・空車それぞれでの移動、発着荷主での荷役前後を異なる地点として表現し、トラクターは荷役終了まで待機しても良いし、待機せず他の地点に移動しても良いことをモデルとして表現して、環境負荷への影響と荷役時間長との関係を明らかにするために追加実験を行うともに、統計的な分析も行った。 さらに折り畳みコンテナを前提とした運用に関するモデル構築を行い、通常のコンテナにはない折り畳みに係る時間やこれらが複数個集まるまでにかかる時間などを踏まえて、実用化に向けた運用上の課題について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は3年目であるため、成果が出ているものは論文投稿をしつつ、修正意見を反映しながら再投稿しているが、公表までに大いに時間を要している。そこで、追加実験を行うために、1年延期することにした。ゲート前のコンテナ仮置きデポを想定したシャーシ運用を考慮したビークル運用、空コンテナの回送を考慮した環境負荷への影響分析、折り畳みコンテナを想定した場合の結果について述べる。 コンテナ仮置きデポを想定したシャーシ運用を考慮したビークル運用では、ターミナルから出てくるまでの荷役時間を所与としたモデル構築はできているが、仮置きデポの有無による効果を分析するための解析ができていない。そのため、遅れていると判断した。 空コンテナの回送を考慮した環境負荷への影響分析では、発着荷主とターミナル間での空コンテナ回送に係る問題において、従来運用の場合に、荷役時間終了までの待機時間が必要台数を増やし、それが結果的にCO2排出量増加につながることから、待機時間短縮を目的としてトラクターのみの運用も可能としたフレキシブルな運用を提案した。大規模問題の対応のため、焼きなまし法(SA)によるヒューリスティクス解法を提案し、数値実験を行って、解の精度と提案する運用方針の効果について分析し、統計的にも有用であることを示した。 また折り畳みコンテナを想定した場合の結果について、単一のインランドデポ(ID)を介して空コンテナを輸入荷主から輸出荷主へ回送することを想定し、ID への搬入時刻、ID での 折り畳み作業や集積にかかるサービス時間、搬出車両の IDへの到着の 3 つの事象が確率的に変動すると仮定した確率的シミュレーションモデルを構築した。数値実験の結果、折り畳み時間が短縮されると ID の稼働時間が短縮され、折り畳み作業前のコンテナ滞留個数も減少できることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
期間延長した本年度は、前年度構築したレイアウト設計を、外来トレーラー到着を考慮したコンテナ配置とリンクさせて作業時間で評価するモデルを利用して、デポの有無とゲートの混雑状況を、荷役時間に反映させることにする。 外来シャーシとヤードトレーラーの動きを表現し、時空間ネットワークの考え方を応用して、ターミナル内の動きと混雑度を評価するモデルの構築を検討する予定である。公共交通の交通流をはじめとして様々な適用事例があることから、これを港湾ターミナル内のビークルの動きをモデル化するのに適用することを試みる。ターミナル内のビークルの動きをモデル化するには、離散型シミュレーションを用いることが多かったが、最適化モデルを用いて混雑度を表現した研究もおこなわれていることが調査によって明らかとなったため、これにシャーシ運用を追加することで差別化を図る予定である。またターミナルにトレーラーが到着後、次のコンテナがすぐに搬出されるなら、それにコンテナを積載できれば、シャーシやドライバーを無駄なく運用できる。そのため、コンテナ搬出のタイミングの違いを混雑度によるモデルとして表現し、モデルの解法アルゴリズム検証と数値実験の計算結果の精緻な分析を行う予定である。 (1) 追加の関連研究の調査を行いつつ、昨年度の進捗状況について論文投稿を行うともに、関連研究者と意見交換を行いながら、海外の事例を参考にモデル内で考慮すべき点を整理する。 (2) シャーシデポを考慮した海上コンテナ搬送のためのビークルとシャーシの運用問題の数理モデルの改良を行い、定式化に依存する解を得るための数理モデルを構築する。 (3) 最後に数値実験の分析結果をまとめるとともに、今後に残された課題などを整理し、当該研究の今後の発展について検討する予定である。
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