研究課題/領域番号 |
21K04534
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25010:社会システム工学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
今井 潤一 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (10293078)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 準モンテカルロ法 / 金融工学 / 学習 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,数値計算手法の一つである準モンテカルロ法(QMC)の効率化手法の研究と位置づけられる. モンテカルロ法(MC)は確率的な挙動を分析する数値計算手法である. 金融工学分野においてはエキゾチック・オプションの評価や最適なヘッジ戦略の導出,バリューアットリスク(VaR)や信用評価調整(CVA)といったリスク管理指標の計算など,金融や保険分野の特に高次元かつ複雑な問題の分析に用いられている. 本研究では,様々な学習手法を用いて,これまで適用できなかった様々な領域におけるQMCの効率化手段を提供することを目的としている.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,投資戦略の構築やリスク管理に活用できる効率的な数値計算手法を開発することである.その特長は,シミュレーション技術の精度向上のために,学習を取り入れるところにある.統計的あるいは機械学習的なアプローチを課題の分析に採用することで,解析的に困難な非線形性の取扱が容易になり,新たな効率的手法を提供できる可能性が広がる. 本年度は,第1に,モデル不確実性(model uncertainty)あるいはモデルの曖昧性(ambiguity)と呼ばれる状況下において,リアルオプションの最適な行使戦略がどのような影響を受けるのかの分析を開始した.モデル不確実性とは,リスク資産の将来の価格の変動が,多くの金融工学のモデルで想定されているような,リスクと呼ばれるパラメータを固定した確率過程で表現できない状況を考えているモデルである.そのモデルの複雑性故に,リアルオプションの最適な戦略の解析的な分析が困難な部分があることが知られている.本研究で得た最初の重要な結果は,リスク下のケースと異なり,モデル不確実性が存在するケースにおいては,リアルオプションの種類次第でマネジメントに柔軟性を持つ事業価値が大きく異なると言うことである. 第2に,昨年度から本格的に研究を開始した学習を取り入れた準モンテカルロ法について,いくつかの重要な結果を得て,それについての学会発表を行い,さらなる充実を図った.そのうちの2次関数による学習モデルを使った準モンテカルロ法の研究は,論文投稿を直ちに行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の概要で述べたように,複雑な非線形関数を2次関数近似し,統計的アプローチによりその情報を生かして,より効果的な準モンテカルロ法を実装する方法については,当初の予定よりも遅れて論文投稿を行った.一方で,本研究の主要目的である,学習を取り入れた準モンテカルロ手法の開発に関しては,この1年で予想を超える多くの応用分野が学会やワークショップでの議論を通じて発見された.これらは順次,研究トピックとして取り上げ,発表していく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
まず,現在投稿中の論文2件に加えて,研究の結果が既に出ており,執筆を待つ状態になっている2本の論文の執筆を速やかに終了し,投稿を行う予定である. 本研究で提案している学習による数値計算手法の開発の考え方は,広い分野の活用が期待される.昨年度の様々な学会での活動やその他研究者との活動で明らかになった本研究の応用先として有望なテーマについても研究を開始する予定である.それらは,地球温暖化問題に関わるSocial Cost of Carbonの価格推定問題,パンデミック・リスクの下での金融商品の開発問題,そして,スタートアップ企業の持つリアルオプション問題である.
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