研究課題/領域番号 |
21K04550
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25010:社会システム工学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
石川 真志 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (10635254)
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研究分担者 |
小山 昌志 明星大学, 理工学部, 准教授 (00453829)
西野 秀郎 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (50316890)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 非破壊検査 / 赤外線サーモグラフィ / 超音波 / 定在波 / き裂 / 超音波振動 |
研究開始時の研究の概要 |
超音波励起赤外線サーモグラフィ法は検査対象物内に励起した超音波により亀裂等の欠陥部を振動させ、これに伴い生じる摩擦熱を赤外線サーモグラフィにより検出する非破壊検査手法である。本研究では、同手法による検査時にしばしば問題となる検査対象物内での定在波の発生と、これに伴い欠陥の存在しない健全部で生じる意図しない発熱について、その発生のメカニズムおよび検査への影響を各種形状/物性の対象物に対する実験および解析から包括的に検討する。また、定在波による発熱の影響を低減する検査手法、データ処理方法を検討し、その実験的な検証と実構造検査への有効性について検討を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、き裂やキッシングボンドなどの欠陥検出に有効であることが知られている超音波励起サーモグラフィ法による非破壊検査に注目し、特に検査時の超音波伝搬の過程で検査対象物内に生じる定在波による検査への影響について、波動伝搬の観点から検討すること、および得られた知見をもとに定在波の発生に伴う検査への悪影響を低減する手法を提案することを目的としている。 初年度には主に平板形状の対象物に注目し、その検査時に生じる定在波発熱の発生要因がラム波のA0モードであることを実験およびシミュレーションより明らかにした。これを踏まえ2年目の検討では、同様の検討を円筒形状対象物にも適用し、その結果生じる定在波発熱は曲げモード(Fモード)のガイド波の伝搬に起因することが確認された(肉厚および周波数の変化に依存して、F(1,1)モードもしくはF(2,1)モードのガイド波が主要因となる様子が確認された)。 また、発生した定在波発熱を低減し、欠陥部をより高精度に検出するための手法として、位置の異なる複数点を加振した際に得られる複数枚の熱画像を加算平均する手法を試み、その効果を実験的に検証した。き裂を有する試験片上の異なる9点を加振し、得られた熱画像の加算平均を行った結果、加振位置の変化に伴い分布が変化する定在波発熱は加算平均により低減する一方で、加振位置に依らず発熱位置が変化しないき裂部での発熱は平均処理後も顕在であり、結果として加算平均処理前と比較してき裂部での信号対雑音比(S/N)が向上することが確認された。また、加振位置を適切に選択することで、加算平均する熱画像枚数は3枚程度でも十分なS/N向上効果が得られることが確認された。これらの結果より、提案手法は検査誤認の要因となり得る定在波発熱の低減に効果的であり、超音波励起サーモグラフィ法の検査精度向上に貢献し得るものであると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画における2年目の目標は、定在波に起因する発熱の発生に伴う検査精度の低下を改善する手法の提案、およびその効果の検証としていた。本年度検討を実施した、異なる複数位置を加振することで得られた複数枚の熱画像の加算平均による定在波発熱の低減手法は、まさに検査結果における定在波の影響低減を意図したものであり、結果としてその有効性が確認されたことから、当初計画に沿った成果が得られているものと言える。また、計画では検査対象物として炭素繊維強化プラスチック(CFRP)も視野に入れ、検証実験を行う旨も提案していたが、本年度の検討において人工欠陥(層間剥離)を有したCFRP試験片の作製とその検査可否についても検討を行っており、CFRP試験片中の欠陥検出が可能であること(合わせて、CFRPにおいても内部での定在波の発生に伴う不要な発熱が発生すること)、および先に述べた複数熱画像の加算平均によるS/Nの改善効果が得られることを確認し、提案手法がCFRPの検査にも有効であることを確認している。以上のことから、本研究課題は概ね当初の計画に沿って順調に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度および2年目の検討において、超音波励起サーモグラフィ法による検査の上での課題となる定在波発熱の発生原理の解明、およびその悪影響を低減するための検査・データ処理方法の提案がなされた。これらをもとに、3年目では提案手法の将来的な実用化を見据えたより具体的な検査方法の提案、検査事例の蓄積を目指す。複数点を同時もしくは順次加振可能な超音波振動子列を有する検査装置系を試作するとともに、その効果の実験的な検証を行い、より簡便に複数位置を加振、および画像加算平均による高精度化が可能な検査システムの提案を目指す。また、検査対象物を単純な平板形状の試験片に限定せず、曲面を有する部材や曲げ部、接着部を有する部材など、実用に際して検査が要求され得る実構造部材に近い形状も検査対象に加え、それらに対する提案手法の有効性を検証する。さらに、実構造物あるいはその部材の調達も試み、実検査への適用可否についての検証実験も視野に検討を行う予定である。 なお、得られた成果については、国内外での学会における発表、および論文執筆を計画し、成果の公表を行う。
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