研究課題/領域番号 |
21K04552
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25010:社会システム工学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
松川 弘明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30242275)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | スケジューリング / フローショップ / ジョブショップ / 安全在庫 / 同期化 / 製品プラットフォーム / 最適化 / 生産スケジューリング / 生産計画 / 納期回答 / 日程計画 |
研究開始時の研究の概要 |
モジュール製造工場における生産効率を上げるためには,組立ラインのフローショップスケジュールと部品加工におけるジョブショップスケジュールを同期化する必要がある.生産計画を作成するとき,BOM(bill of material)を用いて従属需要が計算され,MRPロジックを用いて日程計画が作成されるが,スケジューリングで実行不可能になることがある.本研究では,日程計画の段階で加工における設備の使用順序を考慮し,ジョブショップスケジューリングとフローショップスケジューリングを統合したスケジューリングモデル,および日程計画とジョブショップスケジューリングを統合したスケジューリングの手法を開発する.
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研究実績の概要 |
スケジューリングは製造実行システム(MES)の中核にある.多くの生産計画やスケジューリングでは各段階に在庫を置くことで不確実性を吸収しているが,その適正量を正しく計算できない.統計手法を用いて設定する方法が提案されているが,それは暗黙に経験則が正しいことを前提としているので,統計学を用いるとしても科学的に決めるとは言えない.本研究ではフローショップスケジューリングを最適に決めるアルゴリズムを提案し,それを前提として川上工程におけるジョブショップスケジューリングを最適に決める手法を提案している.一方,川上工程におけるジョブショップスケジューリングを優先し,それを前提にフローショップスケジューリングを決定した場合には,その結果が前者と異なるために,矛盾が生じる.この矛盾を解決するために,本研究では一旦は前者を用いて全体の最適化を行うが,逆に前者で得られたジョブショップスケジューリングを前提にフローショップスケジューリングを行い,矛盾を解消するようにしている.これを繰り返すことでよりよい全体スケジューリングができることが期待されるが,収束する保証はない.さらに,ジョブショップスケジューリングとフローショップスケジューリングを同期化するためには両者の間に一定量の在庫を置くと効率が高い場合がある.この在庫は安全在庫と位置付けることができるが,その求め方は従来の統計学手法ではなく,同期化失敗のリスクに基づいてその量を求める.さらに,製品種類が多い場合にはグループ化を行う必要があり,このグループ化はスケジューリングのようなオペレーショナル問題で解決するよりは,製品設計段階でプラットフォームのコンフィグレーションやモジュールの選択を最適に行うことがより有効であり,最適な製品プラットフォーム構成方法についても研究を行い,論文を公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数理モデルと実験は一通り終わり,フローショップスケジューリングとジョブショップスケジューリングの間における同期化問題を一部解決できた.特に,バックワードスケジューリング法とフォワードスケジューリング法の矛盾点を発見し,それを解消するためにフローショップとジョブショップの間に安全在庫を設置することが有効であることを発見したのは当初計画になかった成果である.どのように安全在庫の数量を設定するかについては現在研究を続けているが,少なくとも1回のバックワードと一回のフォワードのギャップを埋めるように設定することで,フローショップスケジューリングとジョブショップスケジューリングの質が向上することを確認できた.また,実務に応用するためにデモシステムも開発し,今年度は自動車メーカーのTire1企業と連携して実務のスケジューリング問題を解決できる実用的なシステムを開発する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
スケジューリング問題は製造実行システム(MES)の中核にあり,デジタル化の進展とともにより精度の高いスケジューリングの手法が求められる.不確実性に対処するために既存のシステムでは制約伝播の手法を用いてスケジュールを調整する手法が用いられることがあるが,MESとの相性が悪く,設備や工程ごとに最適な製造指示を出すことができない.一方,基幹システムに付随しているモジュールのスケジューリングは本質的に不可計画であり,設備能力や順序制約を無視しているので,結局は各工程間に在庫を設置せざるを得ない.このような問題を解決するためには,本研究の成果をさらに拡張すると同時に,それを生産現場で使えるように実用化を行う必要がある.今後の研究の推進方策は以下の2点である.まずは今までの研究成果を海外有力紙に投稿すると同時に,安全在庫や同期化などの派生問題について新しい研究テーマと設定する.次に,現在の研究成果を実務に活用できるように製造企業と連携してスケジューリングのエンジンを開発する.
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