研究課題/領域番号 |
21K04554
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25010:社会システム工学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
富井 規雄 日本大学, 生産工学部, 研究所教授 (50426029)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 混雑率配信 / 機械学習 / シミュレーション / 鉄道 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,都市圏の鉄道路線を対象として,列車の号車ごとの混雑率をリアルタイムに予測し,それを利用者に配信するアルゴリズムを構築する。これにより,利用者は,混雑を避けて乗車位置を決定することが可能となり,混雑の平準化が図れる。このアルゴリズムは, 新型コロナウィルスやインフルエンザなどの流行期に,人の密集を防ぐことに有効である。 また,通常時においても,電車の混雑に起因する遅延発生の防止に有効である。手法としては,機械学習による状況の分類,状況ごとの混雑率予測アルゴリズムと,情報を提供された 利用者の心理を反映した強化学習に基づく旅客流動シミュレーションを用いる。
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研究実績の概要 |
鉄道会社から受領した列車の号車ごとの混雑率を1秒ごとに取得したデータを用いた研究を継続した。当該鉄道会社は,東京の中心部において多数の旅客を輸送している会社である。また,新型コロナウィルス5類移行後,混雑が激しくなったことから,混雑率を乗客に配信し,混雑の平準化を図ることが望まれている。 今年度は,当該データから混雑率の推定に使用できる値を抽出する研究を実施した。具体的には,当該データは列車の振動等の微細な影響を受けて不安定な振舞をすることから,そのままでは分析には適さない。そこで,移動平均を算出することによってデータの平滑化を行なうこととした。さらに,その結果を用いて混雑率の変化率を算出することによって号車ごとの降車終了時刻,乗車終了時刻を推定する手法を考案した。さらに,これらの推定結果とその時点における混雑率を用いて乗車速度,降車速度を推定する手法を考案した。 ついで,これらの推定結果に基づいて号車ごとの混雑率と乗降時分についての分析を行なった。その結果,乗車時間・降車時間は,おおむね,それぞれ,乗車人数・降車人数と強い相関があるが,その関係は単純な線形の関係ではないこと, 多くの乗客が降車する駅における降車時の混雑率の変化は,3次関数によってかなりよく近似できること,乗車時間は降車時間よりもバラツキが大きいこと,一部の駅,号車においては,降車速度がかなり低いことなどを明らかにした。 なお,その後の現地調査の結果から,一部の駅,号車において降車速度が遅い理由は,その号車の停止位置はホームが狭隘であり,かつ,他の号車からの降車客によって混雑している箇所であることが判明した(当該鉄道会社では,このことから,列車の停止位置を移動させることとした)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度においては,鉄道会社から提供を受けた詳細な混雑率データを用いた分析を行ない,特に,乗車時間,降車時間,乗車速度,降車速度の推定手法において,多くの成果を得た。また,編成内における混雑率についても,実績データの分析から,時間帯による相違,編成内の号車による相違などに関する成果を得た。 また,これらの成果を得る過程においては,鉄道会社と密接に情報交換を行なうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,混雑率の予測を目的としている。現時点までにおいて,混雑率の現状に関する分析が終了した。また,混雑率に影響を与える要因である乗車時間,乗車速度,降車時間,降車速度を過去データから推定する手法の考案がほぼ終了した。さらに,それらに影響を与える要因の洗い出しが完了した。 今後は,これら要因と混雑率との関係を表現するモデルの構築に取り組む。先行研究においては,混雑率の推定モデルは,利用者の移動要望に関するデータ(OD - Origin-Destination - データ)をもとに,列車ダイヤから,乗客が乗車するであろう列車を推定し,かつ,乗客の乗車位置に関する選好モデルから乗車する号車を推定していた。しかし,そもそも,時間帯ごと等の詳細なODデータの入手が困難であること,乗客の乗車する列車や号車の推定が恣意的にならざるを得ないことなどから,本研究では,このアプローチは用いない。本研究では,過去の実績データをもとに,混雑率推定モデルを構築する。その際には,データ分析的アプローチ(アンサンブル学習など)とAI的アプローチ(深層学習など)の両方を実装し,その結果を比較検討する予定である。さらに,その結果を実データと比較して有効性を確認する所存である。
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