研究課題/領域番号 |
21K04578
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25020:安全工学関連
|
研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
岡本 勝弘 科学警察研究所, 法科学第二部, 室長 (40356176)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 石油系溶剤 / 石油系燃料 / 引火性液体 / ライター用オイル / ガソリン / 飽和蒸気圧 / 蒸発速度 / 燃焼実験 / シンナー / 火災 / 引火性危険物 / 可燃性液体 / 蒸気圧 / 引火点 / 拡散 / 多成分系液体燃料 / 引火 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、工業ガソリンや塗料用シンナー等の多成分系液体可燃物が室内に拡散した場合における火災危険性として引火性・燃焼性・揮発性に着目し、実験的検討を行うことにより、これら液体可燃物に対するリスクマネジメントに有用な情報を収集する。さらに、独自の蒸発拡散モデルを提唱することにより、安全工学実務への即応が可能となる危険性予測手法の開発を目的とする。
|
研究実績の概要 |
2019年に京都市で発生したガソリン使用の放火事件を受け、同様の事案の発生を抑止しガソリンの適正な使用を徹底するため、消防法令改正により携行缶での販売が規制された。一方、ライター用燃料、工業ガソリン等の液体可燃物は、その引火性や揮発性の高さから、放火に使用されれば同様の被害を生じさせる可能性があるにもかかわらず、依然、容易に入手可能な状態であり、これら液体可燃物による放火の潜在的リスクが我々の社会生活に不安を与えている。本研究では、石油系液体可燃物が室内に拡散した場合における火災危険性として引火性・燃焼性・揮発性に着目し、実験的検討を行うことにより、これら液体可燃物に対するリスクマネジメントに有用な情報を収集する。 令和3年度は、石油エーテル、ベンジン、ホワイトガソリン、ラッカーシンナー、塗料用シンナーの5種の石油系溶剤について、蒸気圧測定及び蒸発速度測定を行うことによって蒸発特性データの収集を行った。また、蒸発による成分組成変化を明らかにした。さらに、引火点の予測モデルを提唱し、提唱したモデルの検証を行った。 令和4年度は、3種類のホワイトガソリン及びライター用オイルの4種の石油系液体燃料を検討試料に加え、蒸発特性データの収集を行った。また、蒸発変性試料のGC/MS分析を行うことによって、蒸発の進行による成分組成の変化を明らかにするとともに、得られた蒸気圧データ及び成分組成から引火点を予測した。 令和5年度は、ライター用オイルを試料として、既報のガソリン蒸発拡散モデルを改良して、蒸発拡散性状の予測手法について検討した。提案手法については、ライター用オイルの蒸発拡散実験及び蒸気着火実験を実施することによって、その妥当性を検証した。さらに、前記の9種類の石油系液体可燃物の燃焼実験を実施することによって、これら液体可燃物が散布・漏洩した場合における火災危険性について検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 (1) 当初想定していた成果 既報のガソリン蒸発拡散モデルを石油系液体可燃物に適用し、実務上において利活用することを目的として、近年放火事件に使用されたライター用オイルについて、蒸発拡散実験及び蒸気着火実験を実施し、提案モデルによる予測結果と比較した。その結果、蒸気濃度及び着火危険性発現時間の予測値は実測値と良い一致を示したことから、提案モデルの妥当性を検証することができた。 (2) 当初想定していなかったが副次的に(あるいは発展的に)得られた成果 ライター用オイルを蒸発変性させた試料を調整し、そのGC/MS分析を行うことによって得られた成分組成データを用いて、蒸発により発生したライター用オイル蒸気の燃焼下限界を予測した結果、ガソリン蒸気の燃焼下限界とほぼ同等であることが明らかとなり、ライター用オイルの着火危険性のより正確な予測を可能にした。 (3) 当初想定していたが得られなかった成果 キャンプ用燃料として販売されているホワイトガソリンについても蒸発拡散実験の対象試料に加えて、同様の検討を行う予定であったが、炭素数4(ブタン)及び5(ペンタン)の成分が含まれていないことから、所有するガソリン蒸気濃度計による測定が困難であり、蒸発拡散モデルの妥当性検証ができなかった。次年度は、蒸気着火実験による着火危険性発現時間の比較検討手法による妥当性検証に切り替え、これまで適用しなかった石油系液体可燃物の蒸発危険性について検討する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
4年目となる令和6年度は、実験対象の石油系液体可燃物として、ホワイトガソリンを追加し、蒸発拡散モデルに適用するとともに、散布液体から発生した可燃性混合気に対する着火実験を実施し、石油系液体可燃物の揮発性に起因する火災危険性について検討を行う。 また、CFDを用いた拡散挙動予測手法についての検討も行う。CFDによる予測手法については、妥当性の検証を行いながら、試行錯誤法により最適な計算条件を決定する。 さらに、研究最終年度として、研究の総括を行う。
|