研究課題/領域番号 |
21K04579
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25020:安全工学関連
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
新井 裕之 科学警察研究所, 附属鑑定所, 主任研究官 (70356179)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 発射痕 / 弾丸類 / 異同識別鑑定 / 火薬類 / 発射薬 / 発射弾丸 / 打ち殻薬きょう / 腔旋痕 / 異同識別 / 部分燃焼 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、実包内の火薬類が、弾丸や薬きょうに印象される痕跡に与える影響を把握することを目的とする。そのためにまず、火薬類の燃焼で発生するガスの砲内圧力の時間変化を計測し、それを基に痕跡の違いを観察することで、圧力の時間履歴と発射痕との関連を解明する。次に、火薬類の種類や状態を変化させた際の痕跡の変化を捉えることで、火薬類の違いが痕跡に与える影響を検討する。
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研究実績の概要 |
銃器を使用した事件が発生した場合、発射された弾丸や薬きょう(弾丸類)に、銃器個々に特有の発射痕と呼ばれる痕跡が印象されることを利用して、使用銃器の異同識別鑑定を行っている。しかし、同じ銃器を用いたとしても、実包内にある火薬類の状態や組成等が異なることで、異なった発射痕が印象されることが、異同識別鑑定を行う際の問題になる恐れがある。そこで本研究では、実包内の火薬類が、弾丸や薬きょうに印象される痕跡に与える影響を把握することを目的とする。 過去2年間では、実包内の火薬類の反応の違いが、打ち殻薬きょうに印象される発射痕のうち、撃針痕及び閉塞壁痕に与える影響を明らかにし、打ち殻薬きょうを用いた異同識別鑑定の実施にあたって、火薬類の影響を排除できるようになった。 3年目となる2023年度は、実包内の火薬類の反応の違いが、弾丸に印象される腔旋痕に与える影響を検討した。火薬類の反応の異なる弾丸を比較しても、旋丘痕や旋底痕上に印象される特徴痕に差は見られず、今回用いた火薬類の反応の違いでは異同識別鑑定への影響は少ないと考えられた。また、発射直前の発射薬の位置が同じ場合、スキッド痕も弾底からほぼ同じ位置で一致しており、発射薬の燃焼状況の再現性が良いことが確認された。一方で、発射薬の位置が異なる場合、異同識別鑑定では用いられにくい細かい痕跡の印象の状況や、スキッド痕の位置が一致しないものがあり、細かい痕跡やスキッド痕の印象には発射薬の燃焼状況の影響があると考えられた。 得られた成果の一部は、日本法科学技術学会第29回学術集会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究による成果により、銃器の異同識別鑑定で用いている、発射弾丸及び打ち殻薬きょうに印象される発射痕に対する、火薬類の燃焼状況の影響については、概ねその傾向を得ることができ、従来の異同識別鑑定手法における火薬類の違いの影響を把握できつつある。 一方で、発射薬の実包内での燃焼の時間変化が正確に捉え切れておらず、砲内圧力の時間履歴と発射痕との関係の解明までは至っていないことから、2024年度に延長することとした。
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今後の研究の推進方策 |
延長した2024年度は、2023年度に引き続き、実包内の火薬類の反応の違いが、発射弾丸の腔旋痕に与える影響について検討を行うとともに、複数の銃種及びそれに適合する実包を用いて比較することで、広く銃器鑑定に対応できる知見を得る。 また、薬きょう内での発射薬の燃焼挙動について、発射後に得られる部分燃焼発射薬の詳細な分析を行うとともに、発射弾丸の底部に印象された痕跡から、実包内部での発射薬の燃焼過程を推測し、それを裏付ける熱分析の手法を取り入れることで、学術的な裏付けの検討を行う。
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