研究課題/領域番号 |
21K04593
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25030:防災工学関連
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
重川 希志依 常葉大学, 大学院・環境防災研究科, 教授 (10329576)
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研究分担者 |
河本 尋子 常葉大学, 社会環境学部, 教授 (10612484)
田中 聡 常葉大学, 大学院・環境防災研究科, 教授 (90273523)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | COVID-19 / 新型コロナ感染症 / 医療従事者 / 保健師 / ホテル避難所 / 災害対応 / 避難行動 / 災害エスノグラフィー / 緊急事態宣言 / 被災者 / 自助・共助 |
研究開始時の研究の概要 |
令和2年度に生じたCOVID-19の影響下で発生した被災地では、外部からの応援を十分に受けられない状況が発生した。また南海トラフ巨大地震等では広範な地域で激甚な被害が起きるため、大量の応援力の投入が極めて困難となる。新型コロナウィルスと共存した災害対応のあり方、巨大災害発生時の災害対応のあり方を模索する上で、自助・共助支援体制構築は緊急かつ重要な課題となっている。本研究はCOVID-19の影響下で発生した災害と、非影響下で発生した災害時の被災者の災害対応行動を比較検討し、外部支援が期待できない場合に被災者自身が有する自助力と共助力がどの程度潜在し期待できるかを明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
2021年7月に発生した熱海市伊豆山土石流災害時、新型コロナ対応観点から市内の宿泊施設を借り上げた避難所が開設された。コロナ禍で休業中のホテル・旅館4施設を利用し、7月4日から10月4日まで、ピーク時には582人が避難した。避難者は世帯ごとに個室を利用した。各部屋の行き来が制限されていたため、被災者間のコミュニケーションが取れずデマや被災者同士の妬みから生じるトラブルが起こっていたことが明らかとなった。 メリットとして1.避難生活の環境改善、2.避難者同士の過度な接触の回避、3.避難所担当職の負担軽減などが挙げられ、デメリットとして1.避難者の状況を確認することが困難、2.避難者同士のコミュニケーション不足で自主運営が困難、3.市の金銭的な負担が増大挙げられる。 医療従事者の新型コロナ感染症対応プロセスの分析として静岡市内病院の感染症病棟勤務看護師ならびに保健センター保健士を対象にエスノグラフィー調査を実施した。当初病院ごとに軽症・中等症・重症対応に分けられ、本病院は重症者対応に割り振られた。スタッフは院内からの寄せ集め、一つの病棟を閉鎖し看護師を確保した。閉鎖病棟の診療科目は他の病棟が引き受け、不慣れな診療対応に苦労した。他病院も手一杯の状態で応援を受けることはなかった。自らの過酷な労働条件に不満を述べた者はおらず、患者に直接触れられないため、不安を和らげる等看護師ならではの対応ができなかった事に最が最も辛かったと発言した。 保健センターでは、通常の保健所業務の継続とコロナ対応のそう双方の両立に最も苦慮していた。緊急事態宣言発令と共に、乳幼児健診や要支援家庭訪問などの業務が中止され、その対応とコロナ対応が始まった。乳幼児健診などの業務はコロナ禍であっても実施する必要がある業務で、緊急事態宣言の発令や感染者数の推移をにらみながら、健診スタイルを工夫し実施する努力がなされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間中、静岡県内における新型コロナ感染症の感染状況が4月~6月に第7波,その後7月~9月には感染者数がピークに達し、行政サービスの機能は危険水域に達した。このため、新型コロナ対応にあたる行政機関や被災者に対する調査計画を変更する必要が生じた。一方、そのような状況下において、2021年に発生した熱海市土石流災害での災害対応に関し、被災者・行政・避難所運営者などを対象に感染予防に留意しながら調査を実施することができた。また、2023年1月以降、コロナ感染状況が減少し始めが時期に合わせ、静岡県内の医療従事者を対象に対面で調査を実施することが可能となった。このため、年度後半において集中的に対面調査を実施することにより、おおむね順調に研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に新型コロナの影響により実施が不可能となった、被災地でのエスノグラフィー調査をさらに充実させる。2023年度に入りおおむねコロナの影響は収束傾向にあり、また2023年5月には様々な制約が外されることとなり、2020年から2023年にわたり継続した、新型コロナ感染症対応に関わった医療従事者、保健従事者、福祉従事者、消防機関などの組織ならびに職員を対象に、この3年間の対応業務に関するエスノグラフィー調査を実施する。大規模災害時には、各機関や組織が記録誌を作成し広くその教訓を普及する動きがみられる。しかしながら現在のところ、新型コロナ対応に関しこのような記録誌の作成はあまり積極的に行われておらず、本研究では合わせて、これらの調査研究を継続して進めていく。
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