研究課題/領域番号 |
21K04604
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25030:防災工学関連
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研究機関 | 東京大学 (2022-2023) 東北大学 (2021) |
研究代表者 |
中田 令子 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (00552499)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 余効すべり / 宮城県沖地震 / 余効すべり分布 / 長期評価 / 地震サイクルシミュレーション / 地震発生サイクルシミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
日本海溝沿いの地域では、過去にM>7海溝型大地震が繰り返し発生し、被害をもたらしてきた。本研究では、過去の履歴のみに基づく統計モデルではなく、地震発生の原因であるプレート境界での応力蓄積解放過程に基づく数値シミュレーションを用いて、海溝型大地震の長期評価を試みる。そのために、先行研究に引き続き、東北沖地震後の宮城県沖の地震を対象とする。多数かつ多様なシミュレーション結果と観測データとを比較して、統計的に有意な長期評価を定量的に示す。次の地震発生に至る過程を定量的に議論し、地域防災に役立つ知見を得る。
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研究実績の概要 |
次の宮城県沖地震発生時期について、多数の数値シミュレーション結果をもとに今後起きうるシナリオを絞り込み、地震発生予測や地震発生過程の理解、さらには地域防災に役立つ知見を得ることを目的として、プレート境界で発生する地震の繰り返しを、プレート相対運動からのずれの蓄積と解放過程としてモデル化し、先行研究 [Nakata et al., 2016]と同様のすべり速度・状態依存摩擦則、断層の構成則、強度の時間発展則を用いた地震発生サイクルシミュレーションを行った。令和5年度は、前年度に引き続き、構造探査に基づく3次元プレート境界面上に、様々な摩擦パラメタの空間分布を仮定してモデルの計算を新たに行うとともに、前年度までに得られたM9地震前後の宮城県沖地震の破壊過程の違いについて、結果の詳細な解析を行った。その結果、M9地震の余効すべり域と固着域の影響で、M9地震サイクルを通して、M>7宮城県沖地震の余効すべり分布が徐々に変化することが分かった。それに伴い、M>7宮城県沖地震の繰り返し間隔は、M9地震サイクルの前半にはばらつくが、サイクルの後半には比較的一定になってくることが明らかになった。前年度までにこの成果を論文にまとめ、査読付きの国際誌に投稿していたが、R5年度中に受理・出版された。 1930年代や2021年に発生したような宮城県沖地震の複雑な履歴をモデル化するために、これまで一つの円で表していたものを複数の円に分割する場合について、モデル化した。それぞれの円同士が近すぎると毎回連動してしまうが、階層構造を取り入れることで、すべり分布や繰り返し間隔について、ばらつきのある、複雑な挙動を再現できる見込みが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、前年度までに査読付きの国際誌に投稿していた論文が、受理・出版された。投稿から時間はかかったが、査読の過程で、本研究の主張を適切に報告した論文に仕上げることができた。 地震時の複雑な動的破壊過程の説明に使われていた階層構造を取り入れて、準動的な地震サイクルシミュレーションを行った。M5からM8まで幅広いマグニチュードを想定して、半径の大きな円の内外に複数の小さな円を配置した階層構造 [Ide and Aochi, 2005]のような場合では、同じところで繰り返しているM>7地震でも、隣接した他のパッチと連動することで、すべり分布や規模が少しずつ異なる地震を再現できることがわかった。このようなM>7地震は、同じようなところで発生していても、繰り返し間隔もある程度ばらついていた。この手法を宮城県沖地震震源域に応用することで、これまでに観測されているM7.4前後の地震や2021年のようなM<7地震の両方を一つのモデルで再現できる見込みが得られた。 南海トラフ地震についても同様に、M7前後の地震が過去に発生している日向灘を対象として、いくつかテスト計算を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
長期評価で想定されているM7.4前後の地震だけではなく、2021年3月と5月に宮城県沖で発生したM6.9と6.8の地震のように、長期評価で想定されている震源域の一部のみ破壊するケースも再現できるように、宮城県沖地震震源域を1つの円ではなく、半径の大きな円の内外に複数の小さな円を配置した階層構造 [Ide and Aochi, 2005]のような場合について計算する。前年度得られた結果についても、それぞれの地震の繰り返し間隔や準備過程などについて詳細に確認する。 さらに、前年度までに得られた結果を用いて、同一のM9地震直後の応力状態から、異なるパラメタセットを用いて計算をリスタートする。得られた結果から初年度と同様の基準でT1/T2を抽出するとともに、M9地震の影響が同じ場合、摩擦パラメタが宮城県沖地震発生にどのように影響するか調べる。最終的には、次の宮城県沖地震発生時期に関して、様々なケースについて、統計値や地震学的考察とともに示す。結果の見せ方についても検討し、地震の専門家ではないが、地域防災に関わっている人にもわかりやすい説明を検討する。 南海トラフ地震についても、日向灘で想定されているM>7地震との関係について、研究代表者らの先行研究 [Nakata et al., 2014]を基に、同等の計算を引き続き実施する。
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