研究課題/領域番号 |
21K04640
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
樽田 誠一 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (00217209)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 高電荷密度マイカ / 四ケイ素型マイカ / 同形置換 / 構造解析 / 四面体型マイカ / マイカ / 結晶構造 / イオン交換 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、放射性Cs+やSr2+イオンなど特定のサイズの陽イオンを選択的に効率よく取り込み、構造中のナノ空間(六角スペース)に固定化する新規イオン交換体を設計し実現することを最終目的としている。Cs+やSr2+イオンを選択的にイオン交換することが知られているNa-4-マイカは、大きな理論陽イオン交換容量をもちながら、実際の陽イオン交換容量はかなり小さい。本研究では、より高いイオン交換能が期待される新しい高電荷密度マイカを合成するとともに、Na-4-マイカおよび新規高電荷密度マイカを同形置換することで六角スペースのサイズを制御し、イオン交換特性の向上と特定の陽イオンの固定化について検討する。
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研究実績の概要 |
①新規高電荷密度マイカの同形置換とその評価 昨年度、合成が確立された四ケイ素型で高電荷密度の新規マイカ(Na4MgxLi2(4-x)Si8O20F4, x=2, 3, 4)の中で、x=2および4のマイカについて同形置換を行い、その構造解析を行った。x=2のマイカ(Na-4-TA2)については、四面体位置のSi4+をサイズの大きいGe4+で置換した。その結果、8あるSiのうち6までをGeで置換できた。そのGeの置換量の増加に伴い、マイカの格子定数は増加したが、六角スペースは逆に小さくなった。これは、大きくなった四面体シートとサイズが変化しない八面体シートのサイズのミスマッチによるものと考えられた。そこで、Ge置換と同時に八面体位置のLi+をサイズの大きいNa+で置換した。その結果、Geのみの置換体よりもNaを置換することで、格子定数だけでなく六角ホールも大きくなることを見出した。特に、Na4(Mg2Na4)(Si4Ge4)O20F4とした置換体の六角ホールは、Na-4-TA2の六角ホールよりも大きくなった。マイカ中のNa+の位置については、GeおよびNaの置換によって、六角ホールにあるNa+が少なくなることが解明された。x=4のマイカについては、Ge置換はわずかにしかできず、Na-4-TA2よりも同形置換が困難であった。 ②Na-4-マイカの同形置換と置換体のイオン交換特性 昨年度、Na-4-マイカ(Na4Mg6Al4Si4O20F4)のSi4+およびAl3+をGe4+およびGa3+で置換すると、六角ホールが縮小することを見出したが、本年度、層間イオンのNa+の位置を解析した結果、置換によって、六角ホールにあるNa+が少なくなり、層間の中央付近で水和したNa+が増加することを見出した。また、同形置換により、マイカの膨潤能も増加することも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①新規高電荷密度マイカの同形置換とその評価 この課題については、ほぼ予定通り行われた。Na-4-TA2の四面体位置のSi4+をサイズの大きいGe4+で置換すると、六角ホールが小さくなることは、これまでの我々の知見から推察された。これは、四面体シートと八面体シートのサイズのミスマッチのためで、さらに、八面体位置のLi+をサイズの大きいNa+で置換することで、六角ホールが大きくなったのは、そのミスマッチが解消されたためであり、我々の推察を支持するデータであった。また、このGe置換によって、層間の中央付近で水和したNa+が増加した。これは、同じ四ケイ素マイカのNaテニオライトとは異なる結果で、予想外であった。マイカ中にあるNa+の位置ついては、まだ不明な点もあり、さらに精査が必要である。 また、Na-4-TA2をLi+でイオン交換すると、層間のNa+は、ほぼすべてLi+で置換されるが、NH4+とのイオン交換は、完全にはなされなかったことなど、イオン交換についての知見が得られた。 ②Na-4-マイカの同形置換と置換体のイオン交換特性 Na-4-マイカのSi4+およびAl3+をGe4+およびGa3+で置換することにより、六角ホールを大きくすることはできなかった。そのため、八面体位置のMg2+をより大きな陽イオンで置換することで、六角ホールを大きくできると考えられた。一方で、当初、六角ホールを大きくするのは、六角ホールにあるNa+を抜けやすくすることが目的であったが、四面体位置の同形置換により六角ホールにあるNa+が少なくなり、層間の中央付近で水和したNa+が増加することを見出した。これは、六角ホールは小さくなったが当初の目的を達成できたといえる。実際に、膨潤能も向上し、イオン交換能が向上することが推測された。しかし、令和4年度において、イオン交換に関する研究が実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
①Na-4-マイカおよびNa-4-TA2の同形置換体の構造解析の精査 Na-4-TA2(Na4MgxLi2(4-x)Si8O20F4, x=2)の同形置換とその構造解析については、ほぼ終了したが、マイカ中にあるNa+の位置ついては、不明な点もあり、その精査が必要である。また、Na-4-TA2の8あるSiのうち6までをGeで置換できたが、SiすべてをGeで置換できていない。Na-4-TA2と同じ四ケイ素マイカのNaテニオライトは、四面体中のSiをすべてGeに置換すると、層間イオンのNa+の位置が劇的に変化したため、Na-4-TA2のSiをすべてGeに置換し、それによる構造変化も検討したい。Na-4-マイカ(Na4Mg6Al4Si4O20F4)の同形置換とその構造解析についても、ほぼ終了した。しかし、Na-4-マイカ中のAl3+およびGa3+イオンはマイカの四面体位置に位置するべきであるが、八面体位置にも配置する可能性があり、その検証がまだできていない。そのため、NMRなどで、マイカ中のAlおよびGaの位置を解析し、マイカ構造を精密に解析する必要がある。以上の構造解析を行うのと同時に、以下に示すイオン交換特性について検討する。 ②Na-4-マイカ,Na-4-TA2およびそれら同形置換体のイオン交換特性 三(二)ケイ素型のNa-4-マイカおよび四ケイ素型のNa-4-TA2、およびそれら同形置換体の六角ホールのサイズおよびNa+イオンのおおよその位置が解析された。それらマイカの膨潤能およびイオン交換特性を解析し、それらに与える六角ホールの大きさおよびNa+イオンの位置について検討する。イオン交換特性については、Na-4-マイカのCs+イオン交換の報告が多くなされているため、Cs+とのイオン交換を実施し検討する。
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