研究課題/領域番号 |
21K04649
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
堀田 將 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (60199552)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 低温作製 / シリカ膜 / OH / 酸化Si膜 / アンモニアガス / シリコーンオイル / 酸化Si膜 |
研究開始時の研究の概要 |
低温作製したシリカ(SiOx)膜の電気的絶縁性を低下させている膜中の残留水分系不純物H2O, OH量を、研究代表者らが独自に開発した「アンモニアNH3ガス雰囲気アニール法」を基に200℃以下の低温処理で1%未満に低減させると共に、その低減機構の学術的解明を目的としている。また、その熱処理SiOx膜が、デバイスの電気的絶縁膜としても実用上応用できる電界強度3MV/cmでの電流密度を10-8A/cm2以下にすることを目指す。
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研究実績の概要 |
NH3ガスを用いたアニール(NH3アニール)による低温堆積酸化Si膜(SOx膜)中の残留OH基除去の高効率化とその再現性を高めるために、以下のことを明らかにした。 1)NH3ガスのアニール温度Ta= 135℃で、SOx膜試料に交流電圧Vac = 5V に直流電圧Vdc= -10 又を +10 Vを上乗して印加したところ、極性に応じて全く異なる結果を得た。すなわち、Vdc < 0 では電気力のクーロン斥力により膜中の極性を持つOH基同士が反発し、脱水収縮反応が妨げられ、またVd > 0では、逆にその反応を促進した。また、Vdc > 0だとSOx膜の膜厚が変わらず、Vdc < 0では、10%弱増加した。これも電気力によりOH-, O-などの負イオンがSi界面まで移動し、Si基板を酸化したためと考えている。 2)エタノール(EtOH)液をNH3ガスでバブリングし、その蒸気(EtOH蒸気)のアニールを試みた。その結果、残留OH基量が単にNH3ガスを用いるよりも約2/3程度低減した。これは、膜中に残留するSi-OHとEtOHとのアルコキシル化反応(Si-OH+C2H5OH → Si-OC2H5 + H2O)が起きたためである。しかし、膜中にはCHが残り、これによる電気的特性への悪影響が懸念される。 3)H2OをNH3ガスでバブリングし、その蒸気(H2O蒸気)アニールを試みたところ、OH基量の減少が見られた。これは、互いに離れていて孤立した残留OH基同士の脱水収縮反応が、H2O添加により新たに形成されたOH基により促進されたものと考えている。 4)H2O蒸気アニールはOH量を低減できるが、EtOH蒸気のものに比べて十分とは言えない。そこで、事前にNH3ガスのみでアニールを行い、予めOH基量を大きく低減し、その後にH2O蒸気アニールを行ったところ、EtOH蒸気と同等程度の除去効果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実施計画に従い、SOx膜中残留OH基除去のより高効率化のために、NH3アニールしながら電界印加を試みた。他のガス流量やアニール前後の処理条件などは、現状の最適なものを用いた。先に述べた様に電界印加によるOH基や負イオンなどの動きが激しくなり、OH基同士の脱水収縮反応や酸化Si膜厚の増加などが観測されたが、OH基量の減少に関しては、期待したほどの効果を上げることができなかった。 これは、電界を用いないNH3アニール条件が十分でないこと、つまりOH基量減少のメカニズム、基本原理自体の理解がまだ不十分なことを示している。研究当初は、アニール雰囲気からOH基の源となる水分を除去し、アニール時間の増加や180℃までアニール温度を上げれば、ルイス塩基であるNH3の触媒作用によりかなりの残留OH基量が減少し、さらに、電界印加により極性OH基や負イオンなどの挙動を活性化すれば、OH基量がFT-IR測定の検出限界以下になると単純に期待していた。 そこで、前述したEtOHやH2O蒸気アニール法などの新たな取り組みを行ったところ、よりOH基量の減少を促し、さらに基本的なOH基除去メカニズムに関する知見も深めることができた。しかしその反面、研究時間が不足し、電界印加の実験が十分にできず、計画通りに研究を進めることはできなかった。 ただ、新たなEtOHやH2O蒸気法がよりOH基量除去には有効であることが分かり、また、今まで行ってきた検討事項から、再現性ある結果が得られてきたので、補助事業期間の延長申請が認められたことを受け、最終年となる次年度では、電界印加の実験を本格的に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)新たなEtOHやH2O蒸気法がよりOH基量除去には有効であることが分かったので、まずは、それらの方法を用いた電界印加無しの下での最適アニール条件を検討する。具体的には、a) NH3ガスのみ(Dry NH3)のアニール、b) H2O蒸気アニール、最後にc)EtOH蒸気アニールと3段階で行い、OH基量の低減を図る。ここでは、a)+b)+c)の全アニール時間ta及びアニール温度Taを固定し、それぞれのアニール時間配分条件を検討する。その後は、ta, Taを変化させて、OH基量の減少度合を見る。また、その結果を考察し、TaやtaがOH基量減少に及ぼす影響の要因を学術的に明らかにする。 2)1)の結果を踏まえ、電界印加の検討を行う。ここでは、印加電圧における交流電圧Vac, 直流電圧Vdc、印加するタイミングを含めた印加時間(必ずしも、全アニール時間を行うわけではない)を検討する。また、極性OH基や負イオンの動きを促すVacの周波数やVdcの極性も重要な制御要因となるため、それらについても検討する。 3)2)の結果を考慮し、ガス、蒸気アニール条件を見直して、OH基量がFT-IRで観測不可能な程度に減少させた後、膜の電気的特性(I-V特性、できればC-V特性も)を測定して、本研究の目的を達成する。
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