研究課題/領域番号 |
21K04657
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
我田 元 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (40633722)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 酸化ガリウム / エピタキシャル層 / 水溶液法 / Chemical Bath Deposition / ヘキサフルオロガリウム酸アンモニウム / オキシ水酸化ガリウム / β-Ga2O3 / エピタキシャル成長 / 化学浴堆積法 |
研究開始時の研究の概要 |
本申請研究では、次世代パワーデバイス用材料のひとつとして期待されるβ-Ga2O3エピタキシャル層の水溶液法による形成を目的とする。特に、申請者の開発したNon Seed CBD法により、加水分解反応を精密に制御し、シード層なしで単結晶基板上へβ-Ga2O3エピタキシャル層を直接形成することを目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究では、次世代パワーデバイス用材料のひとつとして期待されるβ-酸化ガリウム (β-Ga2O3) エピタキシャル層を水溶液法により形成することを目的とする。通常、β-Ga2O3層は500℃~1000℃の高温かつ高真空を利用する気相法で作製される。それに対し、低温・低温エネルギー、かつ大気圧を利用する水溶液法でのβ-Ga2O3層形成が可能となれば、環境負荷の低減だけでなく、製造コスト低減によりβ-Ga2O3の普及への一助となると考えられる。本研究では、水溶性ガリウム塩であるヘキサフルオロガリウム酸アンモニウム ((NH4)3GaF6) を合成し、その水溶液中での加水分解反応を制御することで、従来は困難であった水溶液中でのβ-酸化ガリウム層形成を目指す。また、Non-Seed CBD (Chemical Bath Deposition, 化学浴堆積)法を利用することで、β-Ga2O3エピタキシャル層の低温直接形成を目指す。 本年度は、(NH4)3GaF6のボールミルによる合成を見直し、アルコール中で合成を行うことで、繰り返し性よく(NH4)3GaF6を合成可能となった。得られた(NH4)3GaF6を使用して、Non-Seed CBD法によるガリウム化合物の成膜を行った。種々の温度、pH条件を検討したものの、いずれの条件においても生成相はオキシ水酸化ガリウム(GaOOH)となり、酸化ガリウム相を得ることはできなかった。ただし、pH条件によって膜構造が変化することを見出し、特に高pH条件においては、柱状結晶が垂直に配列した膜構造が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度検討したボールミルによる(NH4)3GaF6合成を継続したところ、不純物相の生成を抑制することが困難であり、さらに、実験ごとに含まれるガリウム量のばらつきが大きいとわかった。そのため、異なる合成方法を検討し、最終的にアルコールを液相とすることで繰り返し性良く(NH4)3GaF6を合成することが可能となった。得られた(NH4)3GaF6を使用してNon-Seed CBD法によるガリウム化合物の成膜を行った。種々の成膜条件を検討したところ、高温ほどGaOOH形成が促進されること、また、pHによって生成物や膜構造が変化することがわかった。特にpHの影響は大きく、pH = 6.50ではアモルファスの堆積物が、pH = 7.20~ pH = 9.28 では柱状のGaOOHの並んだ膜が形成し、pH = 9.96 では膜は形成しなかった。とくに、pH = 8.80では柱状結晶が基板から垂直に配列した、比較的ち密な構造をもつGaOOH膜が得られた。GaOOHの前駆体の Ga(OH)3 が、低pHではガリウムイオンが安定となって溶解し、高pHでは水酸化物錯体を形成して安定化するため、安定的に成膜可能なpH領域があると考えられる。また、GaOOHの過飽和はpHとともに変化するため、基板上での核生成密度がpHとともに変化し、適切なpHにおいてち密な膜構造を形成したと考えられる。となった通常の水溶性ガリウム塩であるGa(NO3)3を使用した場合と比較して、比較的ちみつな膜構造が得られたことから、溶液中での均一核生成と溶質濃度低下が抑制され、膜形成は促進したと考えられる。一方で、Ga2O3の直接形成条件は見いだせておらず、引き続き条件検討が必要だと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の研究によって、繰り返し性よく(NH4)3GaF6を合成することに成功した。また、得られた(NH4)3GaF6を使用してNon-Seed CBD法によるGa2O3膜の作製を試みたものの、検討したいずれのpH条件においてもGaOOHの柱状結晶が配列した膜となった。 次年度は、引き続き溶液中でのGa2O3の直接形成のための成膜条件の検討を試みる。 (NH4)3GaF6の濃度や、ガリウムイオンの加水分解制御のためのホウ酸濃度については未検討であることから、これらの濃度を制御して成膜を検討する。また、近年Takanoらが、アルコール溶媒中に金属ガリウムを分散させ、ヒドラジンを添加して加熱しながら超音波処理することで金属ガリウム表面に直接Ga2O3が生成すると報告している(Adv. Powder Tech. 2021)。これらの実験系をNon-Seed CBDに適用することで、Ga2O3成膜を試みる。 ガラス基板上でのβ-Ga2O3成膜が可能となった場合、サファイア基板あるいはβ-Ga2O3単結晶基板上へのβ-Ga2O3エピタキシャル層形成を試みる。ガラス基板上への成膜で得られた条件を利用して実験するが、エピタキシャル層形成では成長面での2次核生成を抑制する必要があるため、最適な実験条件(pH、温度、溶質濃度など)は少し異なると予想される。作製した試料の解析を適宜成膜条件にフィードバックすることで、エピタキシャル層の形成条件を見出す。 得られた薄膜は、XRDにより結晶相を同定し、走査型電子顕微鏡により表面形状と膜厚、紫外可視分光光度計により光透過率、X線光電子分光により表面化学状態を評価する。また、ホール測定装置およびインピーダンスアナライザにより電気特性を評価する。
|