研究課題/領域番号 |
21K04660
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 大分工業高等専門学校 |
研究代表者 |
池田 昌弘 大分工業高等専門学校, 一般科理系, 准教授 (80597667)
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研究分担者 |
安仁屋 勝 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (30221724)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 超イオン導電体 / 短距離構造 / 中距離構造 / 空孔形成 / 非アレニウス型イオン伝導 / 結合強度・配位数揺らぎモデル |
研究開始時の研究の概要 |
固体中のイオン導電現象を理解する枠組みは十分に整備されておらず、まだ多くの重要な未解明問題が残っている。本質的な問題として、一般にクーロン力などの近距離で相互作用が遮蔽されない場合には系の状態間に相関が生じ統計的独立性は成立しない。その際、厳密にはエントロピーの記述に修正が必要になるが、従来のイオン伝導を説明する標準的な理論ではこの点は考慮されていない。固体中のイオン導電現象を真に理解するためには上の視点は不可欠である。本研究では、近距離を超えた多体相互作用の視点を理論の枠組みに導入することで、短距離及び中距離構造の形成と超イオン導電機構との関係性を探る。
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研究実績の概要 |
超イオン導電ガラスにみられるような不規則系では、中距離構造がイオン輸送現象に重要な役割を果たしている。本研究では、中距離構造の形成過程をモデル化し、固体中のイオン導電機構の本質を理解することにある。本年度の研究では、以下の成果が得られた。
1) 前年度に引き続き、従来の結晶中における空孔形成理論の改良を進め、イオン結晶系でみられる内因性・外因性伝導領域を記述するモデルの構築を行った。この改良された空孔形成理論は、低温になるにしたがって空孔数が凍結する挙動を再現する。また、空孔濃度が格子間イオン濃度に対応するとみなすことで、イオン伝導度に対してモデル化を行った。電荷担体濃度とイオンの易動度が非線形に連結している当該モデルは、両伝導領域間の連続挙動を説明する。本研究成果は、論文として公表された。
2) 1)の成果で得られたイオン伝導度のモデルに対して更なる検討を重ね、AgI系を基にした酸化物系超イオン導電ガラスに適用した。この物質系のイオン伝導度は、液体側でVFT的に、ガラス転移点以下の温度域ではArrhenius的挙動を示す。各領域でのイオン伝導過程を理解することを試みた。例えば、(AgI)x(AgPO3)1-x (0 <= x <= 0.5)におけるイオン伝導度の組成依存性をみると、AgIの添加量に伴ってイオン伝導度は増加する。この挙動は、ネットワークの膨張に伴う自由体積の増加と関連付けられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおりの課題に着手できているため。本研究では、イオン伝導における中距離構造の役割とその起源の基礎理解に向けて、理論的な基盤を構築することを目指す。前年度の第一段階では、低温領域と高温領域の挙動を結び付けることで、定量的に議論可能な方法論を展開した。当初の計画通り学術論文として公表できた。今年度は、検討を重ね、高温側でVFT型のイオン伝導度に対する挙動を示す物質系にも適用が可能になった。そのため、現在までの研究の進捗状況として、おおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
得られた理論モデルは、イオン伝導度に変曲点をもつ物質系にも適用できる。今年度の研究では、AgI系超イオン導電ガラスのイオン伝導度の振舞いをよく再現することを示した。当該モデルは、固体中のイオン伝導度に変曲点(ファラデー転移)をもつフッ化物イオン結晶系にも適用できることが見込まれる。変曲点は異常な比熱の振舞いにも関係してるため、起源の理論的解明は重要である。今後の研究では、熱的性質とエントロピーの関係を探り、転移点の起源を明らかにする。
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