研究課題/領域番号 |
21K04661
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
石井 啓介 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 教授 (30257208)
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研究分担者 |
森本 貴明 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 准教授 (70754795)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | KNN単結晶 / 高速固相成長 / 種結晶 / NN板状単結晶粒 / 溶融塩脱Bi処理 / 圧延配向法 / 一段階溶融塩法 / 非鉛圧電材料 / 単結晶 / 固相結晶成長 / 銅添加 / Bサイト過剰組成 / 高速固相結晶成長 / アルカリニオブ系材料 / 圧電単結晶 / 異常粒成長 / 混合仮焼粉 / 高速固相結晶成長法 / アリカリニオブ材料 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者が開発した高速固相結晶成長法により、代表的な非鉛圧電材料であるアルカリニオブ系の高品質な大型単結晶を短時間・安定的にセラミックス用の仮焼粉末から作製する手法を、以下の方針で確立する。 (1)結晶成長の大幅な促進効果をもたらす原料のアルカリ不足化組成を利用する。未だ詳細が不明なその促進機構を解明し、抑制効果をもつBi2O3添加と組合せ結晶の成長度を適切に制御すると共に、大きさ・形の一様な単結晶が安定に固相成長する最適条件を見出す。 (2)結晶成長方位の制御を行うため、仮焼粉成形体に種付けされた安価で小型(~10 μm径)の板状NaNbO3単結晶を成長核とする結晶成長手法を開発する。
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研究実績の概要 |
高速固相結晶成長法での(K0.5Na0.5)NbO3(KNN)系単結晶の成長方位を制御するため,一段階溶融塩法で合成された板状NaNbO3(NN)単結晶粒を種結晶に利用した.このNN単結晶粒は極めて単価が安い一方,結晶成長を抑制するBi成分の含有率が高いため,Bi成分を削減する必要がある.そこで,炭酸ナトリウムをNaClで希釈した混合塩による溶融塩処理を単結晶に対し施した.高速成長させる成形体に用いられた仮焼粉よりも異常粒成長の活性度が高い仮焼粉から作製された粘土状グリーン材に溶融塩処理後のNN単結晶粒を混ぜ圧延配向した.得られた配向グリーンシート片を仮焼粉成形体の中央上部に圧着し加熱したところ,NN単結晶粒を含む配向グリーンシートの一部からKNN系単結晶が選択的に高速成長した.適切な時間の溶融塩処理により表面からBiを除去されたNN単結晶粒を用いた場合には,比較的高い確率でNN単結晶粒を種結晶とする(001)配向単結晶が得られた.また,一段階溶融塩法で合成されたNN単結晶粒の内,寸法は小さく表面に多少凹凸がある一方よりBi成分の含有量が少ない,NaClとKClの混合塩から合成された結晶粒を用いた方が,純粋なNaCl塩によって合成された結晶粒よりも配向単結晶が得られる確率が高いことが判明した. 従来の固相結晶成長法を用いたKNN単結晶の合成では,種結晶として極めて単価の高いKTaO3単結晶が用いられていた.本成果を活用することにより,配向KNN単結晶の作製コストを大幅に低減させることが可能になった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の成果により,実用上の大きな課題であったKNN圧電単結晶の高速固相結晶成長において,成長方位の制御に実現の目処がたった.再現性が劣悪であり実現性が乏しかった昨年度までの結晶成長とは異なり,十分な実験回数による統計的な解析結果から,NN結晶粒の作製条件および後処理条件の絞り込みに成功した.これらを種結晶として用いることで十分再現性の高い配向単結晶を合成することが出来た.KNN系単結晶の高速な固相結晶成長において,単結晶の配向制御に成功した報告は世界的にも希である. 圧電単結晶は特性異方性が大きいため,圧電素子としての実用化や圧電性能の正確な評価には,合成された単結晶から特定の結晶面に平行な外面を有する試料片を一定以上の寸法で削り出さねばならない.従来の固相結晶成長法で得られたKNN単結晶では極めて困難であったこの試料片の削り出しにおいて,成長方位の制御と高速固相成長の両者が実現されたことにより,その手間が大幅に削減された.2023年度の成果により,本研究の最終目標である圧電単結晶の高性能化において不可欠な,圧電特性を正確に評価可能な試料の簡便な作製法確立に目処がたった.
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今後の研究の推進方策 |
① 配向制御の再現性を更に向上すべく,NN単結晶粒の種結晶から得られたKNN配向単結晶自身を種結晶として再利用する結晶方位の制御法を開発する.KNN配向単結晶の寸法,組成,仮焼粉成形体への播種法,播種された成形体の加熱法を作製パラメータとし,より寸法の大きく,かつ,成長方位がより高い精度で制御された単結晶の作製手法を確立する. ② 高速な固相結晶成長故,結晶成長および冷却中に高い内部応力が蓄積された大型の種結晶の内部には,多数の亀裂が生じやすい.分極処理が困難となるため,こうした単結晶からは材料本来の正しい圧電特性を評価できない.①で得られた再現性の高い単結晶を用い,形状や徐冷条件の最適化を図る. ③ ①②で取得された結晶試料の作製手法を活用し,Liをはじめと元素添加を行い,高速固相結晶成長法で作製されたKNN圧電単結晶の圧電性能のより一層の向上を目指す.
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