研究課題/領域番号 |
21K04674
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26030:複合材料および界面関連
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
新森 英之 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40311740)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 金ナノ粒子 / 金コロイド / ポルフィリン / 活性酸素 / 一重項酸素 / 光増感機能 / ロタキサン / 酸塩基反応 / ナノマシン / スイッチング / 活性酸素種 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では外部環境により活性酸素発生能のON-OFFスイッチが可能な金微粒子系ナノマシンを開発する事を目的とする。今回は光増感部が粒子界面でロタキサン結合により組込まれる事で外部環境に応じて運動し、コア粒子とのエネルギー移動効率の変化で活性酸素生産を制御する手法を確立する。これまでに我々は粒子界面から光増感部が離れる事での活性酸素発生能増強を実証している。今日まで生化学的傷害を引き起こす活性酸素の発生量を調節できる単分子光増感性薬剤は存在せず、ナノマシン機能を組込んだ本研究の金ナノ粒子系光増感剤はこれまでに実現されていない外部環境応答型活性酸素発生制御システムを構築できる点で学術的価値が高い。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、外部環境応答性の活性酸素種発生能を有する光増感物質修飾金ナノ粒子を分子マシン機能の活用によって開発することが目的である。前年度の研究成果より、活性酸素種の1種である一重項酸素の発生能が光増感部位と金ナノ粒子の距離に依存することが明らかとなった。この事実を踏まえた令和5年度の研究実績の概要は以下の通りである。 <ロタキサン構造を有するポルフィリン修飾金ナノ粒子の合成> 前年度に合成が完了した擬ロタキサンは大環状化合物に光増感性ポルフィリン、軸成分分子の末端に嵩高いストッパーとなる3,5-ジt-ブチルベンジルアミノ基と金ナノ粒子界面でAu-S結合が形成可能なチオール基を有する。そこで、別途トリフェニルホスフィン保護金ナノ粒子を調製し、塩化メチレン中で前述した擬ロタキサンと混合し、精製後にロタキサン結合によって連結されたポルフィリン修飾金ナノ粒子を合成した。ここでは軸成分分子のストッパー側に導入したアンモニウムカチオンと大環状化合物であるポルフィリン修飾ベンゾ24-クラウン-8との静電的相互作用によってインターロック構造が形成されており、そのポルフィリン導入率は1粒子当たり約5個と見積もられた。 <ロタキサン結合型ポルフィリン修飾金ナノ粒子の一重項酸素発生能評価> 上記で得られたカチオン性ロタキサン構造を有するポルフィリン修飾金ナノ粒子の一重項酸素の発生効率を化学クエンチャーにより解析したところ、10%程度であった。ここに様々な塩基を使用してストッパー側のアンモニウムイオンより脱プロトン化を試み、一重項酸素発生効率の変化を測定したが顕著な変化は見られなかった。これはロタキサン結合による連結でさえも、金ナノ粒子の影響で一重項酸素発生効率が抑えられている上にプロトン形と脱プロトン形の酸-塩基平衡混合物で化学種が存在しているためであると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度に実施した研究成果では、まず前年度に合成が完了したチオール末端基を有するポルフィリン修飾擬ロタキサンへ別途調製したトリフェニルホスフィン保護金ナノ粒子を作用させることでロタキサン結合によって連結されたポルフィリン修飾金ナノ粒子を計画通りに合成できた。また、ここで得られたロタキサン結合型ポルフィリン修飾金ナノ粒子の光照射下での一重項酸素発生効率を求めることもできた。その後、このロタキサン部位の軸成分分子には正電荷を持ったアンモニウムイオンが存在していたために、酸-塩基反応による脱プロトン化によって光増感性大環状化合物の金ナノ粒子側へのシャトル運動を誘起した状態で一重項酸素発生効率を確認した。しかしながら、明らかな一重項酸素発生効率の変化は観測されなかった。この主な原因は酸-塩基平衡に由来するシャトル移動前後の化学種の混在であると示唆された。これらの事実より、活性酸素発生能の顕著な制御に関しては改善の余地があるものの、現在までに本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究結果より、光増感性ポルフィリンと金ナノ粒子界面との距離が光照射時の一重項酸素発生に関して顕著な影響を及ぼすことが明らかとなった。しかしながら、令和5年度に合成及び光増感能の評価を実施したアンモニウムカチオン性のロタキサン構造を有するポルフィリン修飾金ナノ粒子に関しての解析結果は酸-塩基反応による中性2級アミンへの変換に伴った明らかな一重項酸素発生能の抑制現象は観測に至らなかった。この事実が、ポルフィリンと金ナノ粒子界面との距離が相対的に遠距離なプロトン化種と比較的近距離と期待される脱プロトン化種との混在によることが主な原因であると予測した。そこで今後は、まずカチオン性ロタキサン結合によってポルフィリン修飾された金ナノ粒子と塩基との反応を行い、脱プロトン化された非イオン性ロタキサン結合型ポルフィリン修飾金ナノ粒子の単離を試みる。その後、金ナノ粒子界面よりポルフィリン部位が相対的に離れたプロトン形とより近接した脱プロトン形の一重項酸素発生効率をそれぞれ求め、比較検討することで活性酸素発生能のON-OFFスイッチングが可能か否かを検討し、本研究課題の目的の金ナノ粒子系ナノマシンを創出する。
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