研究課題/領域番号 |
21K04683
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26030:複合材料および界面関連
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研究機関 | 地方独立行政法人京都市産業技術研究所 |
研究代表者 |
小濱 和之 地方独立行政法人京都市産業技術研究所, 京都市産業技術研究所, 次席研究員 (00710287)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 低温接合 / 高温強度 / 接合機構 / 物質移動 / 相変態 |
研究開始時の研究の概要 |
セラミックスの低温接合と接合体の高温使用を両立するため,接合時には低い温度で融け,接合後には高い温度でも融けなくなるという,新機能を有したフィラー(接合時に間に挟み込む材料)の開発研究を行っている。その機能の根源は,フィラーに含まれる添加元素の一部を蒸発させたり化学反応させたりすることで,フィラーの融点を制御する点にある。 一方で,このような添加元素の特殊な振る舞いが十分に理解されていないため,接合界面に出現する気体・液体・固体が関与する複雑な接合機構(ダイナミクス)が明らかになっていない。本研究では,そのダイナミクスに関する知見を体系化することで,プロセス設計の指導原理の確立をめざす。
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研究実績の概要 |
セラミックスの低温接合と接合体の高温使用を両立するため、接合時には低い温度で融け、接合後には高い温度でも融けなくなるという、新機能を有したフィラー(接合時に間に挟み込む材料)の開発研究を行っている。その機能の根源は、フィラーに含まれる添加元素の蒸発や化学反応を利用して、フィラーの融点を制御する点にある。一方で、このような添加元素の特殊な振る舞いが十分に理解されていないため、接合界面に出現する気体・液体・固体が関与する複雑な接合機構(ダイナミクス)が明らかになっていない。本研究では、そのダイナミクスに関する知見を体系化することで、プロセス設計の指導原理の確立をめざしている。これまでに、SiとMgを組み合わせた複合フィラーを用い、各種セラミックスの接合を実施した。この系では約950℃以上でSi-Mg共融液相が生成するため、液相を介した接合に供することができる。一方、Mgは蒸気圧が非常に高いため、接合温度での保持中にMgが液相中から蒸発し、残ったSiがその温度で等温凝固することで、固相Si主体の接合層が形成される。 令和4年度は、上記のSi-Mg複合フィラーを用い、特に炭化ケイ素(SiC)の接合に取り組んだ。この組み合わせでは、Mgの蒸発が十分に進まず、接合部にMgが多量に残留することがわかっている。残留Mgの形態によっては非常に脆い接合層が形成されるため、接合強度が低くなる。この課題に対し、前年度の研究で見出したMg蒸発促進および接合強度向上のためのフィラー設計指針に基づき、第三元素としてAlを添加したSi-Mg-Al複合フィラーを用い、比較的接合強度の高いSiC接合体を作製することができるようになった。このようなAl添加の効果が発現する機構について、熱力学と物質移動の観点から定性的に考察した。その考察をもとに、学会発表の申込につなげ、論文投稿の準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、セラミックスの種類やフィラーの組成などを変化させ、本接合法のダイナミクスがどのように変化するか調べ、その重要な支配因子のひとつを明らかにした。特に、フィラーに添加する第三元素を具体的に選定し、接合機構を理解する実験を実施することができた。これと並行して、実用上の重要な特性である接合体の機械的強度や耐熱性を向上させることもできた。これらの知見をもとに、プロセス設計指針の確立につなげることができると考えられる。これらの取り組み内容をまとめ、学会発表を実施することができ(令和5年4月発表済)、査読付き原著論文への投稿準備も進めた。また、所属機関や産業支援機関でのイベントで研究内容や成果を発表し、アウトリーチ活動にもつながった。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画に沿って、セラミックスの種類やフィラーの組成などをさらに変化させ、種々の接合温度と時間にて接合体を作製し、接合部の微細組織観察や元素分析などにより、接合機構の重要な支配因子を考察していく。これと並行して、特に実用上の重要な特性である機械的強度や耐熱性をさらに向上させる方策も検討する。フィラー設計だけでなく、プロセス中の温度や雰囲気などの制御も検討が必要な可能性がある。これらを総合し、接合プロセス設計指針の確立につなげていく。それらの実験結果の確度を高め、さらなる学会発表・論文投稿につなげる。
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