研究課題/領域番号 |
21K04684
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
迫村 勝 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 講師 (20235237)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | ペロブスカイト太陽電池 / 光エネルギー変換 / 自己組織化膜 / 表面電位 / 走査プローブ法 / ペロブスカイト型太陽電池 |
研究開始時の研究の概要 |
ペロブスカイトを光活性層とした太陽電池の多くは比較的高価な材料による電荷輸送層を含む積層構造からなる。本申請では光活性層が電極表面に直接結合した電荷輸送層フリーな構造を基本とした低コスト、高効率なデバイスを作製する。研究は以下の①②③のステップでの実施を計画している。 ①電極表面に分子鎖で結合したペロブスカイト結晶層を形成するための材料選択及び自己組織化膜(SAM)とペロブスカイト膜の成膜条件の最適化 ②仕事関数や内蔵電位などのデバイス内電子特性のSAMによる制御の検討及びペロブスカイト層と電極との電気的マッチングの最適化 ③プリンタブルデバイスにも応用可能なラミネート封止による上部電極形成法の検討
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研究実績の概要 |
前年度までの研究で、3-(Aminopropyltrimethoxysilane(APTS)による自己組織化膜(SAM)の表面上に良好な結晶状態から成るペロブスカイト層を形成することに成功し、APTS修飾によるITO仕事関数の増大効果についても確認した。令和5年度の研究では引き続き、ITO透明アノード電極上へのSAM及びペロブスカイト層の形成条件の最適化を行うとともに、SAM膜上に形成したペロブスカイト層の表面フェルミ準位の評価を行った。 当初の研究計画で狙いとしていたSAM末端基(-NH3+)とペロブスカイト結晶との相互作用によるペロブスカイト層のアンカー形成については、これを観測により示すことは困難であった。しかしながら、SAM膜に積層したペロブスカイト層の表面フェルミ準位を観測することで、SAM末端基が及ぼすペロブスカイト層の性状変化と安定化への寄与について議論することは可能であると考え、本年度の研究ではまず、従来の方法でITO電極上に構築したペロブスカイト層のケルビンプローブ顕微鏡(KFM)による表面電位観測を行い、表面フェルミ準位について評価を行った。ペロブスカイト層の表面電位は層厚とともに変化するので、表面電位がほぼ一定値に収束する250 nm付近の層厚から表面フェルミ準位値を約5.05 eVと見積もった。引き続き、APTSによるSAM上に250 nmの膜厚で形成したペロブスカイト層について測定を行った結果、ほぼ同程度の表面フェルミ準位値が得られる結果となった。このことから250 nmのペロブスカイト層内のバルク及び表面近傍の結晶状態については、SAM膜を挿入した場合でもほとんど差が無いことが示唆された。今後は積層構造のエイジングによる劣化なども表面フェルミ準位変化の比較による検討を行い、ペロブスカイト層の安定化への効果についても議論していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
APTSによるSAM上にペロブスカイト層を形成する際に、SAM末端基から積層界面へ及ぼす強い相互作用が働いていることが、いくつかの実験で示唆されてきたが、SAMを介したペロブスカイト層のアンカー形成と、それによる積層構造の安定化が実現しているかどうかを評価する手段については、これまで良いアイデアがなかった。最終的にはデバイス性能を調べることで得られる情報からこのことを議論する予定としていたが、今年度はこの議論を補強するために新たにペロブスカイト層の表面フェルミ準位の検討について着手した。表面フェルミ準位はペロブスカイト層の結晶状態に影響を受け、デバイス性能にも関係することからペロブスカイト層の性状変化と安定性の変化をモニターするために有用であると考えられる。このように新たな検討事項も加わり、デバイス化の推進も当初の計画よりも遅れていたため、本研究課題の進捗の遅れとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題のこれまでの研究で、ペロブスカイト層と強い相互作用を示す末端基を有するSAMをITOとの積層界面に挿入することに成功してきた。しかしながら当初の狙いとしていたSAMを介したペロブスカイト層のアンカー形成及びそれによる積層構造の安定化については今後、検討していかなくてはならない。そのための新たな検討事項として、今年度の研究では、APTSによるSAM挿入時のペロブスカイト層の表面フェルミ準位について調査を行った。今回は有意な変化は観測できなかったが、引き続き、ペロブスカイト層の厚さに対する依存性についても調べることで、SAM挿入による影響について検討していく。さらには積層した膜のエイジングによる影響をモニターする手段としても表面電位測定を活用し、SAM挿入による膜構造の安定性の向上について議論していく。最終段階としてペロブスカイト太陽電池のデバイス化を行い、その光エネルギー変換性能について比較し。SAM挿入の有効性について議論していく。
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