研究課題/領域番号 |
21K04725
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
北田 良二 崇城大学, 工学部, 教授 (60540276)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | レーザフォーミング / 熱可塑性炭素繊維強化プラスチック / 炭酸ガスレーザ / 熱応力 / パルス波形 / 曲げ加工 / パルスレーザ / 成形加工 |
研究開始時の研究の概要 |
レーザフォーミングは,レーザ光を走査することで熱応力により金属板材などを塑性加工する加工方法である.金型を使用せず容易に成形加工が可能であることから,試作や多品種少量生産に適している. 本研究では,軽量,高強度,低コスト,リサイクル性といった特徴を持つ熱可塑性炭素繊維強化プラスチック(CFRTP: Carbon Fiber Reinforced Thermoplastics)へレーザフォーミングを適用することで,曲げ加工等の後加工を行い,試作や多品種少量生産に適した新たなプラスチック成形加工法を提案する.
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研究実績の概要 |
研究計画2年目(全3年計画)は,炭酸ガスレーザによる熱可塑性炭素繊維強化プラスチック(CFRTP:Carbon Fiber Reinforced Thermoplastics,マトリクス材:ナイロン6(PA6),試験片サイズ:60×30×厚み1mm)のレーザフォーミングにおいて,パルス波形とフォーミング特性の相関について考察した.赤外線センサーにより,パルス波形を測定して各フォーミング特性(CFRTP板材表面温度,変位量,曲げ角度,試験片表面状態)と比較した結果,パルスエネルギーが同じであっても,ピークパワーを低く,パルス幅を長くすることで,熱的ダメージを抑制したより大きな曲げ加工が可能であることがわかった.したがって,低ピークパワー,長パルス幅のパルス波形がCFRTPのレーザフォーミングに適していることが実験的に明らかとなった. また,CFRTPのレーザフォーミングの応用展開として,板材の曲げ加工の可能性について検討した.レーザフォーミングに適していると考えられる低ピークパワー,長パルス幅のパルスレーザ光を用いて,レーザ光の走査方法を実験的に模索した結果,レーザ光の重ね走査とシフト走査を繰り返すことで曲げ加工が可能であることがわった.重ね走査回数は,試験片の炭素繊維による復元力に依存していると考えられ,板厚1mmにおいては走査回数10回以上で変位量が飽和することから,10回が最適回数であることがわかった.一方,シフト量はレーザ光のビームプロファイルに依存していると考えられ,その半値幅が4mm程度であることからシフト量は4mmが最適となった.したがって,重ね走査回数とシフト量を最適化することで,高能率な曲げ加工が可能であることが明らかとなった. 今後,熱伝導解析と応力解析に取り組むことで,加工プロセスの理論的な考察と高能率成形加工法の提案を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで2年間の研究取り組みにおいて,ナイロン6(PA6)をマトリクス材とするCFRTP板材に対して炭酸ガスレーザを走査することで,熱応力による曲げ加工が可能であることを実験的に確認した.そして,レーザパルス波形を実測してフォーミング特性との相関関係を考察した結果,低ピークパワー,長パルス幅のパルス波形により,熱的ダメージが少なく,より大きな変位が得られることがわかった.しかしながら,当初計画(2年目)に予定されていた熱伝導解析と応力解析については未着手となっている.これらの解析はレーザフォーミングプロセスの理論的考察とメカニズム解明には重要な取り組みであり今後の課題である. ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の他のマトリクス材のCFRTP板材については,市場調査した結果,現在,市場展開されているマトリクス材はナイロン6(PA6)のみであることがわかった.したがって,当初計画されていたマトリクス材がフォーミング特性に及ぼす影響については保留として,ナイロン6(PA6)に注力していく.また,レーザフォーミング前後のCFRTP板材に対して,引張圧縮試験や曲げ試験を実施して,レーザ光走査が材料の機械的特性に及ぼす影響についても検討する必要があり今後の課題となる. 以上の進捗状況により,計画されていた研究成果は得られているが未着手の課題があることから“やや遅れている”と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでCFRTP板材のレーザフォーミングにおいて,パルス波形とフォーミング特性の関係を実験的に検討した.その結果,低ピークパワー,長パルス幅のパルス波形が適することが明らかとなった.今後は,レーザフォーミングのプロセスを理論的に考察することで,熱応力によるフォーミングのメカニズム解明と高能率成形加工法の提案を目指していく. 研究最終年度(研究計画3年目)は,前年度に未着手であった熱伝導解析と応力解析に着手して,これまでの実験データと比較考察することでフォーミングのカニズムを解明していく.レーザ光走査時のCFRTP板材の表面温度分布をサーモグラフィーで実測することで,熱伝導解析の信頼性を向上させる.また,レーザ光走査前後の材料強度試験等を行うことで,応力解析へ反映させていく.これらの理論的な取り組みにより,解析によるフォーミング特性の予測と高能率成形が可能になると考えられる. また,当初最終年度(研究計画3年目)に計画されていたCFRTP板材の形状加工やパイプ形状の曲げ加工に取り組み,CFRTPのレーザフォーミングの応用展開を検討していく.特に,パイプ形状においては,新たにレーザ光走査法を考案して特許出願も視野に入れていく.
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