研究課題/領域番号 |
21K04778
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27030:触媒プロセスおよび資源化学プロセス関連
|
研究機関 | 大阪公立大学 (2022-2023) 大阪府立大学 (2021) |
研究代表者 |
竹内 雅人 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90382233)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | 固体塩基触媒 / 酸化マグネシウム / 酸化カルシウム / 酸化ジルコニウム / アンモニア / 二酸化炭素 / イソシアン酸 / 熱分解 / 水酸化マグネシウム / シアナミド / 二酸化炭素固定化 / 赤外分光法 |
研究開始時の研究の概要 |
固体塩基触媒である酸化マグネシウム表面でCO2とNH3からシアナミドまたはイソシアン酸が300℃以上で生成する現象を見いだした。ところが、酸化マグネシウム表面におけるNH3の化学的動態、反応機構などの詳細は不明なままである。本研究では、酸化マグネシウム表面において特異的なNH3吸着種が存在する可能性に着目し、NH3吸着種の化学的動態、特にCO2固定化反応におよぼす役割を明らかにする。これらの知見によりRuなどの貴金属を必要としない新奇なCO2固定化反応を提案する。
|
研究実績の概要 |
本研究では,二酸化炭素の削減を目的として,固体塩基触媒を用いてNH3によるCO2の固定化反応を検討している。2021年度の研究では,酸化マグネシウム(MgO)に300℃以上でCO2とNH3を作用させると,主としてイソシアン酸(HNCO)が生成することを見出した。この結果を受け,2022年度はMgOよりも塩基性の高い酸化カルシウム(CaO),2023年度は酸と塩基の性質を併せ持つ酸化ジルコニウム(ZrO2)を用いて,同反応を検討した。 オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2)から調製した水酸化ジルコニウム(Zr(OH)4)を500℃で熱処理することでZrO2を得た。また,比較のため第一稀元素化学工業のZrO2を用いた。これらの触媒を錠剤成型し,加熱およびガス流通が可能な拡散反射測定ユニットにセットした。次に,触媒温度を300~500℃に設定し,CO2を流通させた(30 cc/min)。次に,同温度のままNH3(1 %,Ar希釈)流通に切り替えた(2cc/min)。各気体の流通過程において,FT-IRスペクトルを拡散反射法にて測定した。 300℃以上でZrO2にCO2を流通させると気相CO2とHCO3-吸着種に基づく吸収が観測された。同温度のままNH3流通に切り替えると新たな吸収が2191 cm-1に観測された。この吸収について考察するため,ZrO2表面に吸着した尿素の熱分解過程についてFT-IR測定を行ったところ2200 cm-1にイソシアン酸 (HNCO)に帰属できる吸収が観測された。この結果より,ZrO2にCO2とNH3を作用させたときに観測された2191 cm-1の吸収はイソシアン酸の(N=C=O)-であると帰属した。さらに,400℃以上ではイソシアン酸がさらに分解することで生成するCOが2030 cm-1に観測された。これはZrO2表面の酸性質によるものと推察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にFT-IR分光光度計を導入し,すでに所有していたガス流通および昇温が可能な拡散反射ユニットと組み合わせることで,触媒の前処理条件および触媒駆動温度におけるガス流通条件でのFT-IRスペクトルを測定できる態勢を整えることができた。これにより, Mg(OH)2の熱分解により調製したMgO触媒にCO2,次いでNH3を作用させることでイソシアン酸またはシアナミドが生成する過程のFT-IR測定を行った。2年目にあたる2022年度はMgOよりも塩基性の高いCaO,さらに3年目にあたる2023年度は酸性と塩基性質を併せ持つZrO2を用いて同反応を検討した。その結果,適度な塩基強度を有するMgOが最も高い触媒活性を示した。ZrO2も同程度の触媒活性を示したが,400℃以上の反応温度では生成物であるイソシアン酸が分解しCOが生成することもわかった。さらには,検討した触媒のうちCaOは最も塩基性が高いためCO2吸着で生じる炭酸塩が分解する600℃以上で反応が進行することを明らかにした。 以上のように,測定装置の導入,測定条件の最適化,当初期待された結果の取得と,概ね順調に研究が進行しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
本申請研究において,固体塩基触媒であるMgOでは300~400℃でNH3によるCO2の固定化反応が進行したのに対し,CaOではCO2吸着で生じたCaCO3の熱分解が進行する600℃程度でNH3との反応が進行することを明らかにした。さらに,酸と塩基性質を併せ持つZrO2を用いて同反応を行ったところ,MgOと同程度の触媒活性を示すことがわかった。しかし,反応温度が400℃以上になると生成物であるイソシアン酸が触媒表面の酸性質により分解することもわかった。これら固体塩基触媒であるMgOやCaO,酸塩基両機能性の触媒であるZrO2による知見を蓄積したことで,研究期間の延長が認められた2024年度には,ZrO2の表面塩基性質を強調したCaO担持ZrO2についてさらなる検討を行い,NH3によるCO2固定化反応に最適な触媒を探索する。
|