研究課題/領域番号 |
21K04786
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27040:バイオ機能応用およびバイオプロセス工学関連
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
大貫 喜嗣 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (70759315)
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研究分担者 |
黒澤 尋 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10225295)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | ヒトiPS細胞 / 非凍結保管 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、プレートを密閉した状態の非凍結保管法がヒトiPS細胞の品質に及ぼす影響を詳細に明らかにするとともに、保管後の生存率を向上させる化合物の探索を行う。 具体的には、密閉型非凍結保管方法がヒトiPS細胞の生存率、多分可能、自己増殖能に及ぼす影響を明らかにするとともに、保管手法の最適化を行う。また、保管後の栽培用におけるヒトiPS細胞の生存率および増殖性を向上させる化合物を探索する。
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研究実績の概要 |
本研究では、コンタミネーションのリスクを回避したまま、凍結および解凍作業を必要としない革新的密閉系非凍結保管方法の開発を目指す。本年度は、本非凍結保存法であるポリオレフィン製プレートシールによる密閉低温保存法(POF非凍結保管法)において、ヒトiPS細胞の生存率を向上させる因子の探索を行った。 培養したヒトiPS細胞(201B7)を、POF製プレートシールで密閉し、3から12日間、4℃にての非凍結保存したヒトiPS細胞を37℃に復温し、再培養した。復温後の生存率および復温後の生存率を評価した。低温保存時に使用した培地は0.04%(大気)および1-10%二酸化炭素分圧条件下で平衡したものを使用した。 その結果、POF非凍結保管法を実施したヒトiPS細胞は、10%二酸化炭素分圧によって平衡化した培地(pH7.38)を使用することによって60%以上の生存率を示した。これは、通常使用されている5%二酸化炭素分圧条件下で平衡した培地(pH 7.5)を使用した場合の生存率である30%を大幅に上回るものであった。また、二酸化炭素分圧依存的に生存率が向上した。 さらに、OCT3/4レポーター遺伝子導入株である201B7-OCT3/4-GFP株を用いて非凍結保管を実施した。低温保管後の201B7-OCT3/4-GFP株をフローサイトメトリーによって解析したところ、低温保管が未分化性に及ぼす影響はなかった。 一方、POF非凍結保管法において、ヒトiPS細胞の生存率を向上させる化合物の探索を行った。その結果、レチノイン酸、カプリン酸、N-Acetyl-L-cysteine、を使用したところ細胞の生存性が向上した。このため、POF非凍結保管法に適した化合物が存在する可能性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
POF非凍結保管法において、ヒトiPS細胞生存率を大幅に向上させることに成功した。一方、非凍結低温保管後の細胞の生存率を向上させる候補物質をいくつか明らかにした。 ミトコンドリア活性を確認したところ、ヒトiPS細胞とヒト肝癌由来細胞株HepG2との間で有意な差は見られなかった。今後、候補物質添加後のミトコンドリア活性をJC-1によって明らかにしたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、3つの観点から研究を推進する。 1つ目は、細胞の生存性と保管時の培地のpHの関連性を明らかにする。二酸化炭素分圧がさらに高い条件で培地の平衡を行い、細胞の生存性に寄与するかを検討する。 2つ目は、POF非凍結保管法における細胞の生存性を向上させる候補物質が、ヒトiPS細胞の生存性の向上とミトコンドリア活性への影響を明らかにする。また、保管後のヒトiPS細胞内アポトーシス関連遺伝子をPCR解析により明らかにする。 3つ目は、ヒトiPS細胞の安全性を確認する。具体的には、低温保管後のヒトiPS細胞の核型解析を行い、安全性に問題ないかを明らかにする。 以上の検討を行い、本低温保管方法がヒトiPS細胞の保管に有用であることを明らかにしたいと考える。
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