研究課題/領域番号 |
21K04792
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27040:バイオ機能応用およびバイオプロセス工学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田島 誉久 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 准教授 (80571116)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 酵素触媒 / 低温菌 / GFP / 物質変換 / 熱処理 / 膜タンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,効率的な物質変換が期待されるシンプル酵素触媒を二次代謝産物の物質変換に適用し,持続的で効率的な変換を行う触媒の基盤技術を構築する.そのために,有用物質を生成するための酵素を低温菌に発現させた触媒による効率的変換系を構築すること,および低温菌の細胞膜成分の基礎的解析を行うことで中温での熱処理や反応に適した触媒の基盤構築を行う.
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研究実績の概要 |
2022年度は有用物質変換触媒の構築と反応場の解析を実施した。 1. 有用物質変換触媒の構築 フェルラ酸を変換するシンプル酵素触媒の構築を行った。これまでに構築したシンプル酵素触媒ではバニリンへの変換は可能であるものの、さらなる収率と収量の向上を目指して、遺伝子発現系の改変を行った。2段階での酵素反応のうち、酵素活性が低い酸化酵素をプロモーター直下に配置した発現プラスミドの導入により、生産性の向上が確認された。また、大腸菌のタンパク質発現系に利用されるT7発現システムを構築すべく、T7 RNAポリメラーゼとT7プロモーターを酵素発現プラスミドに導入した。想定された配列の挿入は確認されたものの、酵素の顕著な発現は認められなかった。T7 RNAポリメラーゼの転写活性が確認されなかったことから本系が機能していないことが示され、今後、その他の発現系の導入を含めて発現系の改良を行う。 2. 反応場の解析 酵素変換の場となる細胞外への酵素漏出について、熱処理による影響を解析した。緑色蛍光タンパク質 (GFP)と融合させて発現させたサイズの異なる複数の酵素タンパク質について、熱処理した細胞懸濁液を遠心分離で上清と細胞画分に分け、GFP蛍光測定により局在を調べた。その結果、サイズの小さなGFPのみでは上清にその大部分が確認されたことから細胞外に漏出したことが示されたが、酵素と融合したものでは細胞外への漏出は低下した。また、本触媒の宿主は海洋性微生物を用いていることから海水での培養を行ったところ、熱処理後の細胞外漏出が低下した。今後、要因となる成分の解析を進め、酵素触媒の培養・反応条件の検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有用物質変換触媒の構築については、新たに構築した触媒により生産性が向上したこと、また、酵素活性をさらに向上させるための課題が明らかとなったこと、高発現系プラスミドの構築に取り組み、さらなる改良や別手法による発現強化の道筋が示された。反応場の解析については、GFPによる評価系が機能することから、各種培養・熱処理の条件検討を本系で評価できる環境が整った。これらのことから概ね順調に進展していると考えている。今後、酵素触媒の改変および漏出を抑制する因子の解明を行い、効率的な物質変換触媒の構築を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後、有用物質の変換触媒の構築とその反応場維持に関する解析を進めるべく、下記項目を実施する。 [有用物質変換触媒の構築] 複数酵素を発現させたシンプル酵素触媒の反応を効率的に行うための基盤技術の確立に向けて、酵素発現系の改良による発現強化、さらにそれらの発現系を組み合わせた複数酵素の活性を調整した酵素触媒の構築を行う。 [反応場の解析] 反応場となる熱処理後のシンプル酵素触媒で変換酵素が細胞内に保持される現象を確認したことから、その際の宿主微生物の培養について培地成分や条件等を検討し、熱処理後に細胞外への酵素漏出を抑制する因子を解明する。また、細胞の膜構造(リン脂質、膜タンパク質等)と酵素漏出の抑制因子の関係を解析し、反応場の維持に関わる持続的な酵素変換を行うシンプル酵素触媒の構築を行う。
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