研究課題/領域番号 |
21K04820
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28020:ナノ構造物理関連
|
研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
柴田 憲治 東北工業大学, 工学部, 教授 (00436578)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | 量子ドット / 単一電子トランジスタ / テラヘルツ |
研究開始時の研究の概要 |
単一の量子ドットを用いた量子情報処理デバイスは、1つの電子やスピン、光子に情報機能を持たせるため、次世代エレクトロニクスの有望な技術と言われている。特に10 nm程度のサイズの自己組織化量子ドットでは、系のエネルギースケールが数十meVとなり、テラヘルツ(THz)帯の光子のエネルギーに相当することから、THz帯での単一電子・スピン状態の動的制御による量子情報処理の実現が期待される。本研究では、THz光励起によってTHz光子やフォノンを単一の電子と強く相互作用させることで単一電子系の電荷・スピンの動力学をコヒーレントに制御し、情報機能を発現させることを目的として、必要な基盤技術の開発研究を行う。
|
研究実績の概要 |
本研究では、応募者がこれまでに培った10 nm級量子ドットの単一電子トランジスタへの応用技術に基礎を置き、単一電子・スピン状態とその動力学がクーロン相互作用やスピン相互作用、テラヘルツ(THz)光、フォノンなどを用いて多彩に制御できることを実証するとともに、量子情報処理に向けた新規デバイスへの応用を探索することを目的として研究を行っている。昨年度は本プロジェクトの3年目であり、2年目までに行った単一のPbSコロイド量子ドットを活性層とするトランジスタ素子の作製と評価を引き続き行ったことに加え、他の半導体量子ドット材料系の探索も行った。
まず、直径が5nm以下の単一PbSコロイド量子ドットを活性層とする単一電子トランジスタが100meVを超える帯電エネルギーを示すことに注目し、本素子が室温でも単一電子トランジスタとして動作するかどうかを調べた。その結果、室温での電気伝導特性に明瞭なクーロンダイヤモンド特性が観測されたことから、素子が室温でも単一電子トランジスタとして機能することが分かった。昨年度からここまでに得られた結果を論文としてまとめ、投稿した結果、Nature Communicationsに掲載され、出版と同時にプレスリリースを行った。次に、伝導帯の電子準位の観測のみでなく、バンドギャップや価電子帯のホール準位の観測を可能とするべく、より広範なゲート変調が可能な電気二重層ゲート構造を単一量子ドットトランジスタに適用する実験を行った。その結果、バンドギャップ領域とホール伝導の観測にも成功した。
最後に、PbS以外の量子ドット材料に関する測定も行い、単一のペロブスカイト量子ドットCsPbCl3を活性層とするトランジスタが、ホール伝導が観測可能な単一ホールトランジスタとして機能することを発見した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究により、良好な光学特性を示すコロイド量子ドットを用いた単一電子トランジスタが室温動作することを発見し、またPbS量子ドットの電子・ホール伝導の両方を観測可能な技術も確立できた。これらの成果をまとめた論文を投稿したところ、論文は高い評価を受けた。さらに、ペロブスカイト量子ドットにおいても単一ホール伝導を観測することに成功したことから、今後のTHz光応答に関する実験に向けて、より柔軟な実験が可能となったと考えられる。以上から、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、コロイド量子ドットを用いたトランジスタ素子の作製を引き続き行うことに加え、光照射下での伝導特性評価を始める予定である。また、引き続き他の材料系での素子作製も試みることで、コロイド量子ドットの中でも特に量子情報デバイスに向いた材料系の探索を行いたいと考えている。
|