研究課題/領域番号 |
21K04826
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
上野 啓司 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40223482)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 層状物質 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / 原子層堆積法 / 触媒効果 / 低温成長 / 二硫化タングステン / 二硫化モリブデン / 遷移金属ダイカルコゲナイト / 低温成膜 / 選択成長 |
研究開始時の研究の概要 |
新しいナノエレクトロニクス材料として期待される層状遷移金属ダイカルコゲナイドの単層~数層膜、いわゆる「原子膜」の結晶性薄膜を、可能な限り低い基板温度(目標:200 ℃以下)で成長させることを目指す。蒸気圧の高い有機金属(Mo, W)と有機カルコゲン(S, Se, Te)化合物を前駆体とし、さらに触媒による成膜反応の促進効果を用いることで、目標とする低温成長を実現する。また薄膜を大気圧下で硫黄化合物溶液により処理し、原子欠陥を補修することで膜質の改善を試みる。
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研究実績の概要 |
(1) これまでの研究から、二硫化タングステン(WS2)薄膜の原子層堆積法(ALD)成長において、銅や銀薄膜が効果的な触媒効果を示すことが示唆されていた。令和5年度はラマン分光、X線光電子分光(XPS)、原子間力顕微鏡の各手法を用い、銅や銀薄膜上とそこから離れたSiO2/Si基板上でのWS2薄膜の成膜状況を、成長温度を変えつつ比較検討した。 ラマン分光測定の結果、製膜温度360℃以上では銅、銀膜付き試料の金属膜上、金属膜外ともにWS2に相当するピークを確認できた。特に、製膜温度400℃での銅膜付きの試料では銅膜上の方が銅膜外と比較して、WS2特有のピーク幅が狭く、シャープなスペクトルであること、前駆体の不純物によるピークの強度が小さいことが確認できた。よって、製膜温度400℃において、銅膜の触媒効果により銅膜外と比べて、高品質なWS2膜が銅膜上で形成していることが示唆された。また、XPSの結果から、製膜温度340℃の銅、銀膜付き試料の金属膜外では金属膜上と比較してWS2に相当する成分の他に多くの不純物の成分が確認できた。一方で製膜温度340℃の銅、銀膜付き試料のラマン分光測定の結果では、WS2に相当するピークは確認できなかった。以上の結果より、ALD成長に用いるサイクルパラメーターの最適化、熱処理を行うことで、340℃で金属膜上のみに高品質なWS2膜を成長させることができると考えている。 (2) 二硫化モリブデン(MoS2)薄膜のALD成長を、4配位固体前駆体であるテトラキスジメチルアミノモリブデンMo(NMe2)4を用いて行ったところ、6配位液体前駆体である(t-BuN=)2Mo(NMe2)2を用いた場合と比較して、低い成膜温度(200℃)で結晶性MoS2薄膜が得られることが確認された。現在、金属薄膜の触媒効果によるさらに低温での結晶性薄膜成長の実現を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3、4年度の研究がコロナウイルス流行の影響を受けて遅れ気味であったため、令和5年度はそれを取り返すべく研究を進めた。銅や銀薄膜の触媒効果については知見が蓄積され、この1年間の研究実績としてはある程度満足できるものが得られた。しかしALD法による薄膜成長と薄膜評価の実験はそもそも長時間を要するため、前年度までの研究の遅れを取り返すには至らなかった。そのため、令和6年度まで1年間研究期間を延長し、当初目標としていた研究計画の遂行を目指すこととしている。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 金属薄膜触媒が遷移金属ダイカルコゲナイト(WS2)原子膜の低温成長に与える効果の検証については、これまでCuとAgについて検証が進んでいるが、まだ試していないPd, Feといった金属についても検証を行う。(2) Cu薄膜上における低い成長温度での良質なMoS2薄膜成長の可否について、4配位固体Mo前駆体を用いた実験を進める。(3) 硫黄前駆体の気体をプラズマ励起することで低温成長が可能かどうか検証する。これらの実験を通して、金属触媒による遷移金属ダイカルコゲナイト単結晶原子膜のより低温での成長実現を目指す。低温での高品質薄膜成長が実現した場合は、フレキシブルなプラスチックフィルムを基板とする薄膜成長も試みる。 (4) Cu薄膜が示す触媒効果により銅薄膜間の隙間にWS2薄膜が選択成長することを利用して、銅薄膜のソース/ドレイン電極間の微小なチャネル領域にWS2を選択成長させた電界効果トランジスタを作製し、その動作特性を検証する。4配位Mo前駆体を用いたMoS2薄膜のALD成長についても選択成長の可否について検討を行い、可能であれば同様の手法でMoS2電界効果トランジスタの作製を試みる。
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