研究課題/領域番号 |
21K04831
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岩堀 健治 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (90467689)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | カーボンナノチューブ / 結合ペプチド / フェリチンタンパク質 / 遺伝子変異タンパク質 / QCM / 炭素欠陥 / バイオナノ粒子 / 炭素材料欠陥 |
研究開始時の研究の概要 |
近年カーボンナノチューブやグラフェンといった炭素材料は、特に電子デバイスや材料分野を中心に産業界で大変注目されている。一方、これらの炭素材料中に存在する微細な欠陥により、その材料特性が大きく変化することが問題となっている。本研究ではこの微細欠陥を簡便な方法でスピーディに探索し、欠陥の可視化と定量化の実現を目的としている。本研究によって得られる知見は、今後の炭素材料の安定化や高機能化に非常に役に立つはずである。
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研究実績の概要 |
昨年度までに、カーボンナノチューブ表面に選択的に結合すると予想される 3 種類の 10 ~15 残基のカーボンナノチューブ結合候補ペプチドをデザインし人工合成を行った。これらの候補ペプチドの結合力の差違について、電子顕微鏡の観察をしやすくするため、直径 12 nm の球殻状タンパク質(フェリチンタンパク質)の外殻表面に突出した N 末端アミノ酸配列部分に合成した候補ペプチドを修飾したCNT 結合バイオナノ粒子 (DS-BNPs) の作製を行い、電子顕微鏡を用いてカーボンナノチューブとの結合状態の観察行った。その結果、候補ペプチド A については結合している部分と結合していない部分が観察されたが、その他のペプチドについてはそれほど差違が見られなかった。 この電子顕微鏡を用いた方法により、各候補ペプチドの結合についてはある程度、観察出来るようになったが時間と手間がかかるため、より迅速、簡便にペプチドの結合を判断できるよう、水晶振動子 (QCM) による結合力測定プロセスの確立も進めた。当初の計画では市販のカーボン蒸着済の QCM 電極を購入し、これを改良して実験を進める予定であったが、残念ながら生産中止となったため、スパッタ処理によりQCM の Au 電極の上にスパッタ処理を行い、カーボン QCM 電極の作製を行った。当初はこの作製がうまくいかなかったが、作製条件等の検討によりカーボン QCM 電極作製が可能となった。さらに、作製した電極を用いてフェリチンタンパク質の吸着測定にも成功した。 今後、このカーボン QCM 電極と測定システムを用いてカーボン結合ペプチドの吸着力を迅速に測定するための方法を検討すると共に、候補であるペプチドの結合力の比較と新規ペプチドの取得を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カーボンナノチューブに結合するペプチドのデザインと合成は継続して実施できている。またフェリチンタンパク質の外殻への修飾については、現在までの経験豊富な従来法で行っており実験的には問題なく進行している。しかし、本研究の一つの目的である、結合ペプチドの結合力と結合部位の違いを明らかにするという点については、特に電子顕微鏡による観察では、ペプチドが結合しているかどうか判断がしにくく時間もかかる。また結合状態を数値化しにくいという問題もあり、特にこの部分が実験を進める上での律速段階となっていた。 そこで、本年度はあえて少々時間をかけてカーボン吸着電極の作製と効率的な QCM 測定方法の構築を丁寧に行うことで、QCM による結合力測定のプロセスを完成することができたため、今後、結合ペプチドのセレクションと結合状態の把握とメカニズム解明については研究がより加速するものと思われる。また、現時点では電子顕微鏡による観察法では、検討出来る合成ペプチド数にも限度があるという課題もあったが、今後、上記の測定システムを用いて迅速に実施することで本課題点も解決できるものと考えており、回り道をしたがそれほど大きな支障はないと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、開発したカーボンQCM 電極を用いた迅速測定システムを活用することにより、候補となる結合ペプチドのセレクションをさらに進め、セレクションのスピードアップを目指す。また、アミノ酸配列のバリエーションや長さ等を変えたペプチドを用いて、カーボンナノチューブへ結合するペプチド、結合しないペプチドや中間の結合力を持つペプチド等、様々な候補ペプチドの合成と結合力についての検討を行うことで、カーボンナノチューブ結合ペプチドがカーボンナノチューブのどの部分にどうやって結合するのか、あるいは結合しない部位のメカニズムの解明を目指す。 また、より迅速な結合力の測定とペプチド内のアミノ酸配列傾向の検討を加速するために、今まで行ってきた実験方法である、候補ペプチドを修飾したCNT 結合バイオナノ粒子 (DS-BNPs) を用いて結合力を測定するという実験手法ではなく、フェリチンタンパク質に修飾するステップを介さない、ペプチドのみを用いた QCM 測定により、タンパク質の付加のないペプチドのみでカーボンナノチューブの結合力を測定できるシステムの検討も行って行きたい。
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