研究課題/領域番号 |
21K04837
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
本山 幸弘 豊田工業大学, 工学部, 教授 (20283492)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 金属錯体 / 金属クラスター / 不均一系触媒 / 水素化 / ヒドロシリル化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,現在広範に研究されている「ナノサイズ」より小さな,いわゆる「サブナノサイズ(1 nm以下)」の金属クラスターに着目し,その前駆体となる金属錯体の精密設計を基盤とした「錯体化学的アプローチ」によるサブナノクラスターの発生・担持法の確立(Step A),分析化学と精密有機合成化学の両面から担体構造と触媒機能の相関を解明する基礎科学研究(Step B),さらに実践的なもの創りを実現しうる不均一系触媒反応へと展開する応用研究(Step C)を行い,最終的に様々な分野への活用も期待される「金属サブナノクラスター」の新たな設計指針の提供と新規な触媒的物質変換反応の開発を目標とする.
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研究実績の概要 |
ナノサイズの担持型金属クラスター触媒は持続可能な社会の発展を支える化学という観点から環境調和型物質製造プロセスを実現する鍵となっているが,さらなるクラスターサイズの制御による活性や効率の向上,新たな機能の開拓が望まれている. 本研究では,現在広範に研究されているナノサイズより小さなサブナノサイズ(1 nm以下)の金属クラスターに着目し,その前駆体となる金属錯体の精密設計を基盤とした錯体化学的アプローチによるサブナノクラスターの発生・担持法の確立,分析化学と精密有機合成化学の両面から担体構造と触媒機能の相関を解明する基礎科学研究,さらに実践的なもの創りを実現しうる不均一系触媒反応へと展開する応用研究を行い,最終的に様々な分野への活用も期待される金属サブナノクラスターの新たな設計指針の提供と新規な触媒的物質変換反応の開発を目的としている. 初年度は,ZrO2上でPd(OAc)2錯体の担持-クラスター化で得られたPd/ZrO2が常温常圧の水素下でアミンの還元的N-アルキル化の触媒となることを論文報告した.そこで2年目は金属種の拡張を目的にRuとPt種へと展開した.まずRuでは,芳香環とジエンを配位子とする0価のRu錯体から得られるRu/ZrO2が,芳香環の水素化に高い活性を示すことを見出した.この活性は,以前当研究室で報告した炭素ナノ繊維(CNF)担持Ruナノクラスター触媒を上回るものである.現在,論文発表に向けて細部を詰めている状況である.次に,オレフィンを配位子とする0価の白金錯体は,活性炭やジビニルシロキサン存在下で高活性なクラスターが生成し,芳香環の水素化が常温常圧の水素化で進行することを見出した.これも以前当研究室で報告したCNF担持Ptナノクラスター触媒を遥かにしのぐ活性である.さらに芳香環も活性種を安定化する効果があることも見出し,論文報告を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,サブナノクラスターの触媒機能について,昨年度Pdで特長的な反応開発まで成功したことから,金属種の拡張について精力的に研究を行った.その結果,まずRuでは,本申請前に予備的に検討していた錯体や既報の錯体に対し,価数と配位子を変更することに加え,従来用いていた炭素担体に替わりZrO2を用いることで,比較的穏和な条件下で活性種を発生させることに成功した.得られたRu/ZrO2は,当研究室でナノクラスター触媒として優れた触媒機能を有するRu/CNFよりも穏和な条件下で芳香環の水素化が実現できることから,大きな成果であると考える. 一方,昨年までにヒドロシランから微小な金属クラスターが発生することを見出していたが,予備的実験から白金錯体を水素雰囲気下で処理すると,ベンゼン環を有する配位子の環水素化が進行することを見出し,同様に高活性な極微小の白金クラスターが発生していることをつきとめた.その後の詳細な条件検討により,活性炭やジビニルシロキサン存在下で活性種の寿命が維持されることを明らかにした.しかしいずれの場合も反応終了後に触媒活性が低下していくことがわかり,基質である芳香族化合物も活性種の安定化に寄与している可能性が示唆された.これらの結果から,不安定なサブナノクラスターの新たな発生法を発見しただけでなく,添加物による安定化手法へと展開できる可能性を秘めていることから,今後の金属サブナノクラスターの研究が加速できるものと考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず,上記で得られたZrO2や活性炭上のRuおよびPtクラスターの構造解析を行い,サブナノサイズが形成しているかどうか,また金属酸化物の担体効果としてZrO2からTiO2やCeO2へと拡張することで,構造-触媒活性の相関を明らかにしていく. また,ヒドロシランを用いたクラスター発生法では,これまでに当研究室で報告しているIr錯体触媒によるアミド化合物から官能基選択的なアミンやエナミンへの変換反応を,より安価なIrCl3から発生させて汎用性の高い触媒反応へと展開していく. さらに水素を用いたクラスター発生法では,金属種をPdやRuへと拡張し,新規な触媒反応への足がかりを構築する予定である.
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