研究課題/領域番号 |
21K04851
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28040:ナノバイオサイエンス関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
津金 麻実子 中央大学, 理工学部, 共同研究員 (00469991)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | リポソーム / エクソソーム / マイクロ流体デバイス / マイクロデバイス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、人工脂質膜小胞であるジャイアントリポソームを検出反応の容器(リアクター)として用い、エクソソーム内封miRNAを高感度および簡便に検出可能なマイクロデバイスを構築する。具体的には、エクソソームを含む数十マイクロリットルのサンプル(培養上清または体液)に対し、マイクロピラーや磁気ビーズを用いたエクソソームの回収と精製、反応試薬内封リポソームとの膜融合によるmiRNAサンプルの取得、miRNAの増幅反応、蛍光検出の一連の操作を実行するマイクロデバイスの開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、ジャイアントリポソームをバイオリアクターとして用いて、エクソソーム内封マイクロRNAを高感度、簡便に検出可能なマイクロデバイスの開発を目的とする。主にソフトリソグラフィ技術を用いて作製されるデバイスは、(1)回収エリア、(2)移送エリア、(3)反応・検出エリアの3つのエリアからなる。 3年目である本年度は、まず(2)移送エリアの検討を行った。エクソソームが結合した磁気ビーズはデバイスの下に設置した磁石をスライドさせて回収エリアから反応・検出エリアへ移動させる。その際、サンプル溶液の混入を最小限にして磁気ビーズのみを移送するため、デバイスの表面処理方法を検討した。その結果、デバイスの作製に用いるポリジメチルシロキサン(PDMS)に種々のコーティング剤を塗布して、親水・疎水加工できることを確認した。 また、昨年度に引き続き、 (1)回収エリアにおける振動誘起流れを用いたサンプルからのエクソソーム回収の条件検討を行った。円柱ピラーを有するデバイスにエクソソームとアフィニティー磁気ビーズを導入し、振動の付与により溶液を混合して、磁気ビーズへのエクソソームの結合を促す。エクソソームを模擬したナノサイズのビーズと直径マイクロメートルオーダーの磁気ビーズのアビジン・ビオチンによる結合と、ピラー周囲の流れ場の関係を評価したところ、周波数や振幅などの振動パラメーター、ピラー間距離などの条件が結合に影響することが明らかとなった。また、エクソソームとアフィニティービーズからなる凝集体の大きさを測定することにより、エクソソームの定量評価が可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、移送エリアの作製に向けたデバイスの表面処理方法を検討した。ポリジメチルシロキサン(PDMS)にフッ素樹脂や界面活性剤などの塗布によって、水滴とデバイス表面が接する際の角度である接触角の変化を確認でき、デバイス表面の親水性・疎水性の制御が可能であった。この結果は、夾雑物を排除しながらエクソソーム結合ビーズを移送することを目的とした、デバイス表面における親水・疎水加工のパターニングに活用する。 また、振動するマイクロピラー周囲に誘起される局所流れである振動誘起流れを用いた、エクソソームの回収についても進展がみられた。直径がナノメートルオーダーのエクソソームをマイクロメートルオーダーの磁気ビーズに効率的に結合させるマイクロピラーの配置、振動周波数などの最適な条件が明らかになってきた。さらに、エクソソームとビーズからなる凝集体のサイズを顕微鏡での明視野観察で測定することでエクソソームの定量が可能であると示唆される結果を得ている。 このように、マイクロデバイスの各エリアにおける実験条件の最適化が進んでいることから、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題で開発を目指すデバイスの回収エリア、移送エリア、反応・検出エリアという3つのエリアについて、実験条件が確立してきた。反応・検出エリアにおける技術である2つの膜小胞の融合とリポソーム内でのマイクロRNAの増幅・蛍光検出、回収エリアにおける技術である振動誘起流れを用いたアフィニティービーズによるエクソソームの回収については論文を執筆、投稿中である。今後はこれらの各エリアの技術を統合したデバイスの作製やシステムの妥当性の検証を試みる。
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