研究課題/領域番号 |
21K04858
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
鈴木 裕史 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (50236022)
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研究分担者 |
宮永 崇史 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70209922)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | ゼオライト / フォトルミネッセンス / Agクラスター / XAFS / レアアースフリー / 発光材料 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、ゼオライトにAgを充填することにより顕著な蛍光を発光することが発見され、レアアースフリー新規発光材料として有望視されている。しかしその発光メカニズムは未だ明らかになっていない。発光機構を解明するためにはAgイオンやAgクラスターと発光の関係を明らかにする必要がある。そこで、ターゲット原子周囲にある原子の種類とその距離および数を選択的に決定できる方法であるX線吸収微細構造を発光測定と組み合わせることにより、Agイオンの状態変化(クラスターの形成・崩壊、イオンの移動等)と発光変化との関係を明らかにすることにより発光発現機構の解明を目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度は昨年度に引き続き、新規発光材料として有望視されているAg形ゼオライトを用いたレアアースフリー蛍光材料の蛍光発現機構解明のため、Agクラスターの形成・崩壊、あるいはAgイオンの移動等のAgの状態変化と発光変化との関係を明らかにすることを目的として研究を遂行した。 一部の研究者達はAgクラスターが発光の起源であると主張している。そこで、まずはX線吸収微細構造分析によりAgクラスターが形成されていることが確認されている真空下における蛍光測定を行った。まずは蛍光測定用セルを設計製作し、様々な波長を用いて真空下での蛍光測定を可能にした。その結果、X型およびY型においては真空下で新たな蛍光バンドが観測されることはなく、大気中(真空排気前)で観測されていた蛍光バンドの強度が弱まるだけであったが、A型において310nm付近の励起波長を用いることで大気中で観測されるPLバンドの長波長側に新たなバンドが出現することを発見した。またこのバンドは大気を導入することにより消失した。真空排気および大気導入時の挙動からAgクラスターに由来するバンドであることが示唆される。真空下においてAgクラスターが形成されることはXAFS測定により確認されていることもこのことを支持する結果である。現在は真空排気および大気導入時における時間分解XAFS測定およびその詳細な解析を行っている。また、この測定結果は大気下におけるPLバンドがAgクラスターによるものではないことをしめしており、これまでの我々の研究結果を支持するものである。 我々は、蛍光発現・消滅がAgクラスターによるものではなく、その形成・崩壊の前駆過程であるAgイオンの移動によるものであることを提案しており、Agイオン移動についての研究を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Agクラスターが形成されている環境における蛍光測定、ならびに1 min時間分解蛍光測定・X線吸収微細構造測定の同時オペランド観測は遂行済みである。 X型およびY型真空下で新たな蛍光バンドが現れず、既にあるバンドの強度が低下するのみであるという結果から、Agクラスターが蛍光発現の原因ではないことが明らかにできており、A型においてAgクラスター由来のPLバンドを新たに発見できた。また、オペランド観測の結果、蛍光強度変化がAgクラスター形成または崩壊よりも先行して起きていることが明らかにできた。ミリ秒時間分解測定および1分時間分解測定を行っているが、XAFSにおけるAgイオン周辺の局所構造変化は1分時間分解で起きているらしいことを明らかにできた。ミリ秒で一瞬のみ大きく変化するPLの原因はAgイオンではなく、その周囲の水分子によるものではないかと推測している。
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今後の研究の推進方策 |
真空排気過程および大気導入過程において、X型とY型では強度の変化のみが現れ新たなバンドの出現/消失等はなかったが、A型において真空下で新たなバンドの出現を確認できた。A型を用いた時間分解XAFS測定は試行回数が十分とは言えないので、本年度は再現性のチェックおよびスペクトルクオリティの向上を目指して実験を行う。並行して時間分解PLスペクトルの再現性確認とスペクトルクオリティ向上を行う。
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