研究課題/領域番号 |
21K04859
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 啓太 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70791763)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 異常ネルンスト効果 / 窒化物 / 強磁性窒化物 / スピントロニクス / 熱電変換材料 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、新たな環境発電技術として金属強磁性体材料における異常ネルンスト効果(ANE)を利用した熱電変換が注目されている。ANEを用いた磁気熱電変換素子では、簡便な単層の金属強磁性体薄膜のみで発電が可能であり、大面積、低価格、熱勾配と直交方向への電圧出力等の利点がある。しかし、現状では半導体材料におけるゼーベック効果を利用した熱電変換に対して、熱電能が大幅に及ばない点が課題となっている。したがって、発電出力の向上には、大きな熱電能を示す新奇強磁性体材料の開発が必須の状況である。本研究課題では強磁性金属窒化物をベースとした、大きなANEを示す新しい高出力磁気熱電変換材料の創製を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、Fe4Nに第三元素を添加した単結晶薄膜を作製し、フェルミ準位制御、多層構造化を通じて、異常ネルンスト効果を利用した熱電変換素子の実用化への指標である、室温で10 μV/Kを超える異常ネルンスト係数の達成を目的としている。 令和4年度は、分子線エピタキシー法により、Fe4-xCoxN薄膜およびFe4-xMnxN薄膜を成膜し、異常ネルンスト効果の評価に取り組んだ。反射高速電子回折およびX線回折測定により構造を評価した結果、エピタキシャル成長を確認できた。しかし、Fe4-xCoxN薄膜については、Co組成比が増加するにつれて窒素が脱離しやすくなる傾向が見られ、Co4N薄膜の作製は実現できなかった。作製した試料を微細加工によりホールバー形状に加工し、ゼーベック効果、異常ネルンスト効果、異常ホール効果を評価した。結果、CoおよびMn添加量の増加に伴い、異常ネルンスト係数が減少した。これは、第三元素添加による横熱電伝導度の減少に起因しており、Fe4NへのCoおよびMn添加では、異常ネルンスト効果は増強できないことが分かった。 上記に加えて、積層数を変えてFe4NとMgOの多層膜を作製し、異常ネルンスト係数の積層数依存性を調べた。分子線エピタキシー法により多層膜をエピタキシャル成長し、ゼーベック効果、異常ネルンスト効果、異常ホール効果を評価した。結果、積層数の変化に応じて、異常ネルンスト係数が変化する傾向が見られ、最大で単層Fe4N薄膜の1.4倍程度の異常ネルンスト係数の増大を確認できた。これは、Fe4NとMgOの界面効果によるものと考えられるが、詳細なメカニズムは不明である。今後は、より細かく積層数を変えた多層膜を作製し、異常ネルンスト係数の更なる増大と、そのメカニズムの解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Fe4-xCoxN薄膜およびFe4-xMnxN薄膜の作製と異常ネルンスト効果の評価に成功したことに加え、最終年度での実施を計画していた多層膜の作製と、異常ネルンスト効果の評価にも前倒しで取り組めたため、当初の計画以上の進展があったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、より細かく積層数を変えたFe4NとMgOの多層膜を作製し、異常ネルンスト係数の増大を目指す。加えて、当初の研究計画に従い、Pt等のMgO以外の非磁性体材料との組み合わせによる多層膜を作製し、異常ネルンスト効果の更なる増大を目指す。
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