研究課題/領域番号 |
21K04860
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
八巻 和宏 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (90579757)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 超伝導 / 単結晶 / ルテニウム系銅酸化物 / 銅酸化物高温超伝導体 / 固有ジョセフソン接合 / 圧力高温合成 |
研究開始時の研究の概要 |
強磁性と超伝導は一般に相反する性質と考えられてきました。ルテニウム系銅酸化物は結晶構造内部に磁気秩序層と超伝導層が交互に積層した二次元物質と言えます。しかし、この物質の二次元性を調べるために必要な単結晶試料の合成は非常に困難です。本研究では申請者が独自に開発した部分溶融法を化学・物理の2つの圧力効果の観点から改良し、より超伝導の強いルテニウム系銅酸化物単結晶の合成に取り組みます。更に得られた試料を構造解析することで超伝導の発現機構に迫ります。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は超伝導と磁性が共存し結晶構造内部に超伝導層(S)/(反)強磁性層(F)/超伝導層(S)が原子層のオーダで積層した接合(SFS接合)を含有する新奇固有ジョセフソン接合として期待されるルテニウム系銅酸化物高温超伝導体「単結晶」を申請者が独自に開発してきた「部分溶融法」により合成すること,特に,化学・物理の2つの圧力効果を積極的に活用した精密合成によって,この系の超伝導転移温度を上昇させることである. 当該年度は特に物理圧力効果に着目して超小型加圧炉を用いた数気圧下でのルテニウム系銅酸化物磁性超伝導体RuGd-1212の合成に取り組んだ.得られた成果は以下の通りである. (1)部分的な溶融を促す焼成時間t_1の最適(長時間)化によって単結晶の粒径を50-100ミクロン程度大きくすることに成功した.これは2気圧で加圧することで1212相の分解温度が抑制されたためと考えられる. (2)更に印加圧力を上昇させ,合成条件の最適化に取り組んだ結果,3気圧下で結晶粒径400ミクロン程度,超伝導転移温度Tc-onset=55.9 K,Tcoffset=17.6 Kとこの系における本研究室で得られていた特性を大きく上回る試料の合成に成功した. 上記の成果,特に400ミクロン大まで結晶粒が大型化したことで,単結晶試料を取り出しての基礎特性評価を進められる目途が一定程度,立ったことは大きな進展である.一方で,本研究で導入した超小型加圧炉を用いた場合,単結晶の表面平滑性が従来のシリコニット管状炉に比べて悪いという新たな問題も明らかになった.次年度以降は大型化と表面平滑性に留意しつつ,単結晶試料を用いた異方性などの評価を進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症に伴う研究室の閉鎖が数回あり,研究の進展が遅れた.2023年度以降は平常化に向かい,本研究に関しても今回,研究実績で述べた通り,単結晶粒の大型化といった確かな成果が得られるに至った.研究の進展にやや遅れは見られるものの,単結晶粒を取り出して評価できる目途を付けることができた点は大きな進展で今後,一層の進展を図る.
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今後の研究の推進方策 |
研究実績で述べた通り,ルテニウム系銅酸化物は非常に単結晶の合成が難しいものの,単結晶粒の大きさを従来の200ミクロン弱程度から400ミクロン大まで大型化することに成功した.当該試料は超伝導性を保っていることから従来問題となっていた,結晶粒の大型化に伴う超伝導性の消失には該当しない.その一方で,試料表面の平滑性が従来のシリコニット管状炉で合成した試料に比べ悪いという新たな問題点も明らかになった.今後は大型化に成功した条件を中心により表面状態の良い,平滑な単結晶粒の合成に取り組むとともに,大型化に成功した多結晶試料から単結晶粒を取り出し,異方性を始めとする基礎特性を評価する.最終的にはc軸方向の伝導特性評価からルテニウム系銅酸化物の固有接合特性に関する評価を進める予定である.
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