研究課題/領域番号 |
21K04867
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
本間 道則 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (90325944)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 液晶 / 双安定 / マイクロラビング |
研究開始時の研究の概要 |
基板表面に微細な配向処理パターンを形成した液晶セルにおいては,表面近傍に誘起した大きな配向のフラストレーションに起因して双安定な配向状態が発現することがある。本研究では,種々の配向処理パターンを形成した液晶セルについて,バルクの配向の双安定性の発現におけるトポロジカルな境界条件(表面配向)が果たす役割の全貌を明らかにすることを目指す。本研究はトポロジカル不変量(トポロジカルな性質を特徴づける量)のようなトポロジカルなパラメータが液晶デバイスの高性能化や設計指針の構築に有益であることを実証するという意義を有する。
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研究実績の概要 |
前年度の研究において、トポロジカル不変量が+1となるラビングパターンを周期的に配置することによって、安定状態から準安定状態への配向遷移が得られること、ラビングパターンである菱形の頂角に関して、配向遷移が得られる臨界値が存在することが明らかとなった。このような知見は、本デバイスにおける双安定メカニズムの考察において鍵となるものであり、当該年度は引き継ぎ本デバイスにおける双安定な液晶の配向状態の遷移挙動に関して、実験に基づきメカニズムの考察を行った。 実験ではまず、マイクロラビング処理を行った基板と垂直配向処理を行った基板を組み合わせることによって、ハイブリッド配向セル(セル厚:10μm、液晶:5CB)を作製した。ここで、マイクロラビングの菱形の頂角を極端に小さな角度(4°)に設定した。実際に電圧(約100 V、1 kHz、正弦波)を印加したところ、ノーマルチルト(NT、安定状態)からリバースチルト(RT、準安定状態)への遷移が確認でき、極端に小さな頂角であっても双安定な配向遷移が得られることが確認できた。さらに、一旦、準安定状態に遷移させた後、電圧を印加し除去する過程に応じてNTとRTの選択が可能であることが明らかになった。すなわち、印加電圧をゆっくり除去するとRTはそのまま保持され、急激に除去した場合にはNTへ遷移した。この初期配向(NT)の回復過程は小さな頂角の菱形パターンを導入した結果によるものであり、より具体的には、配向遷移メカニズムは以下の3つの要因によるものと考察した。1)頂角を小さくすることによって、NTのサブドメインが大きくなり、消滅時間が長くなった。2)マイクロラビングの幅を4μm程度と狭くすることによって、各々のサブドメイン間の距離が縮まり、サブドメインが融合しやすくなった。3)印加電圧の急激な除去によって液晶層に流動が生じ、サブドメインの融合が生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画にしたがって、2023年度は双安定な配向遷移挙動のメカニズムの考察を行った。2022年度の研究において、電圧を印加した際に生じる安定状態(ノーマルチルト)から準安定状態(リバースチルト)への遷移過程においては、異なるチルト方向のドメイン境界において生じるブロッホウォールが配向の安定化に寄与していると考察した。加えて、2023年度は、頂角の小さな菱形のラビングパターンを導入したときに発現する、電圧の印加除去によるリバースチルトからノーマルチルトへの回復遷移に関して、その遷移メカニズムを考察し、具体的に3つの要因が寄与することによって回復遷移が説明できると考察した。このように、ノーマルチルトからリバースチルトへの遷移だけでなく、リバースチルトからノーマルチルトへの回復遷移についても、遷移メカニズムにおいて定性的かつ具体的な説明を与えたことは評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2021~2023年度の研究ではマイクロラビング処理を導入したハイブリッド配向液晶セルにおいて、ラビングパターンと得られる配向状態の関係において、特に双安定な配向遷移という観点から実験に基づいて考察を行ってきた。今後は、3年間の研究成果をさらに統合して考察し、遷移メカニズムの定量的な考察を試みる。すなわち、弾性自由エネルギーの考察などから、実際に得られる配向状態が理論的に説明可能なものかどうかについて、定量的な考察を行い、提示する遷移メカニズムに理論的な根拠づけを行う。
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