研究課題/領域番号 |
21K04882
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
垣内 拓大 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 准教授 (00508757)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 酸窒化反応 / ゲート絶縁膜 / X線光電子分光法 / 分子ビーム / ヘテロ界面 / 酸化反応 / 二酸化ハフニウム / シンクロトロン放射光 / 表面界面反応 / 高誘電率ゲート絶縁膜材料 / 表面界面酸化反応 / Si半導体 / 放射光軟X線光電子分光 / 金属薄膜酸化 |
研究開始時の研究の概要 |
二酸化ハフニウム(HfO2)や二酸化ジルコニウム(ZrO2)は、Si半導体デバイスの次世代ゲート絶縁膜材料として高い注目を集めている。ゲート絶縁膜の膜厚は、半導体素子の集積数と性能向上の開発指針となるため持続的な超薄膜化が求められている。本研究では、放射光軟X線光電子分光法によってSi基板上に作製されたハフニウム(Hf)およびジルコニウム(Zr)薄膜の精密な化学状態分析と、これらの表面酸素分子吸着から表面界面酸化反応中における電子移動機構までを化学状態選別して解明する。
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研究実績の概要 |
(実績1)ハフニウム酸窒化物(HfNO)は広いバンドギャップを持ち、化学組成によって高い誘電定数を持つことから半導体デバイスの次世代ゲート絶縁膜として期待されている。本課題では、ハフニウム(Hf)が吸着したSi(111)清浄表面を出発物質として準備し、これに異なる並進運動エネルギー(Et)を持つ一酸化窒素(NO)分子を照射しながらHfNO膜を形成する反応機構を放射光X線光電子分光法(SRXPS)で追跡した。Hfを2原子層(ML)相当堆積させた試料にEtが0.07 eVのNO分子を曝露すると、酸窒化物の窒素(N)と酸素(O)の存在比がN:O = 2:3となった。これは、Hf堆積膜は酸化膜を形成するが、窒化物や酸窒化物を与えないためであることが分かった。Etを0.44 eVまで上げると表面に露出したSi基板への窒化反応も抑制された。これは、NOは吸着状態を経た後に酸化活性な原子近傍で生成物を与えることを示唆している。また、僅かに軽いNにEtが大きく移行するためNの脱離確率が高くなったと考えられる。Hfを0.3ML相当堆積させた場合は、NO分子のEtに寄らず主としてHfもSi原子も酸化物のみを形成した。 (実績2)HfO2は、ゲルマニウム(Ge)を僅かに不純物として含有すると高い誘電定数を持つ常誘電体から強誘電体へと変化する。そこで、ゲルマニウム[Ge(100)]基板上に2 MLの金属Hf薄膜を作製しその表面界面化学組成をSRXPSで観測した。HfとSiの組み合わせと比較して、HfとGeはジャーマナイド(HfGe)化合物をすぐさま形成し、表面界面で異なる組成を取ることが分かった。また、角度を変えたSRXPS測定より、Ge基板からGe原子拡散し最表面に偏析していることが分かった。この試料の酸化過程では、酸化中にHfが還元する挙動を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度に引き続き、申請書作成時(令和2年度)には予期しなかった事態(家族の病気)により放射光施設で行う出張を伴う実験の一部を見直した。令和5年度は計画通りの実験ができたが、令和4年度の遅れを取り戻すまでには至らず、課題終了は令和5年度から6年度へと延長申請を行った。全体の遂行状況としては遅れている。 具体的には、令和5年度も放射光施設Photon Factoryでの実験は難しいと判断した。一方、SPring-8で行う実験として(1)ハフニウム(Hf)が吸着したシリコン(Si)基板表面の一酸化窒素による酸窒化反応機構の解明、(2)Hfが吸着したゲルマニウム基板(Hf-Ge)表面の酸化反応機構の解明、を行った。これらは研究計画の変更した内容であるものの一定の成果を得ることができた。特に後者(2)において、Ge基板の清浄化とその再構成表面作製技術を独自に構築することで、Ge基板も含めた金属-半導体接合界面の化学状態とその反応性について系統的研究の展開が可能となった。 また、令和5年度の間に「Hfの膜厚に依存したHf-Si(111)酸化化反応機構」の内容で論文受理を目指していた。現在は、アメリカ化学会のThe Journal of Physical Chemistry Cに投稿中で、査読者からの適切なコメントを受けて、掲載に向けて修正・執筆中と遅れている。学会発表等による成果報告は、第84回応用物理学会秋季学術講演会のオンライン参加による口頭発表1件に留まった。 研究期間を延長することで、遅れを取り戻す予定でいる。
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今後の研究の推進方策 |
ゲルマニウム[Ge(100)]基板上に2原子層(ML)相当のハフニウム(Hf)薄膜を製膜すると、表面界面に異なる組成のHfジャーマナイド(HfGeと表記)を2種類形成することが分かった。これは、シリコン(Si)基板上のHf薄膜成長過程とは大きく異なっており、その酸化過程も化学状態や構造に由来して独自の挙動を示すと考えられる。 本年度は、1つ目の目標として、Ge(100)基板上にHf薄膜を異なる膜厚で作製し、膜厚によって異なる表面界面化学状態を放射光X線光電子分光法(SR-XPS)で観測する。これらは、酸化反応を追跡する出発物質とし、酸素分子を曝露しながらSR-XPSを実施することで表面界面にある化学種毎の酸化反応性とそれが与える酸化物を同定する。また、Hf-Ge(100)試料の表面構造や形態は走査型電子顕微鏡(SEM)で評価し、エネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いることで表面にある原子の分布を評価する。 2つ目の目標として、Hf-Ge(100)試料に照射する酸素分子の並進運動エネルギーを変化させることで初期酸化反応における吸着メカニズムを解明する。さらに、SRXPSの角度依存測定から、酸化反応と生成物の深さ分布分析を行う。 3つ目の目標として、Hf-Ge(100)の酸化進行中に起こるHf原子近傍での還元反応機構を解明する。還元反応の要因としては(1)Ge基板からのGe拡散と偏析、(2)揮発性酸化物であるGeOの発生、が考えられる。(1)は基板温度と還元の進行から評価し、(2)は酸化物・還元状態の深さ分布から評価する。 研究成果の発表は、令和5年度に得たHf-Si(111)の一酸化窒素による酸窒化反応機構の成果を学会発表し、原著論文としてまとめる。また、2 MLのHfが吸着したGe(100)の表面界面組成について学会発表を行う。
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