研究課題/領域番号 |
21K04890
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
三石 和貴 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, グループリーダー (40354328)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 電子線タイコグラフィー / 位相回復 / 電子顕微鏡 / 4DSTEM |
研究開始時の研究の概要 |
電子線の位相からは試料中の電場・磁場の情報を得ることが出来る。近年、注目を集めている電子線タイコグラフィーでは一回散乱を仮定する運動学的近似が用いられているため、多重散乱が起きる厚い試料への適用が出来ない。本研究では物体を薄いスライスからなる3次元構造として位相の計算を行う事で多重散乱の効果を取り込み、厚い試料でも定量的な解釈のできる位相再生法を開発するものである。
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研究実績の概要 |
本研究提案では再生方法の一つであるPIE(Ptychograhical Iterative Engine)を用いた位相再生において、物体が薄い多層から構成されるとして計算することで多重散乱の影響を取り込んだ位相再生方法を行い、多重散乱の影響が無視できない一般の試料でのタイコグラフィーによる位相再生の正当性を担保するとともに、通常のタイコグラフィー再生の適用範囲を明らかにすることを目的として研究を進める。 今年度は昨年度から開発しているPIEのコードのMultislice再生の開発と多波動力学計算による厚い試料からの回折のシミュレーションデータからの位相回復のテストを実施し、実験データ取得の際の位相再生に必要な倍率、カメラ長、スキャン刻み、取得デフォーカスの組み合わせを検討した。PIEではプローブの照射範囲の重なりを位相再生の繰り返し計算の際の拘束条件として使用するため、回折図形を逆フーリエ変換して得られる実空間の範囲にプローブが収まっている必要がある。実験で用いるピクセル型高速STEM検出器のピクセル数とカメラ長はあまり変更の自由度が無いため、再生可能な倍率とデフォーカスのコンビネーションによって可能な組み合わせを決定した。 また、関連する成果として、開発を進めているタイコグラフィーのコード群の一部を使用し、ゼオライト触媒から得られた4次元データに対して、タイコグラフィーの位相再生法の一つであるWigner Distribution Deconvolution(WDD)法を用いて位相再生を行う事で、少ない電子線照射量で位相再生することが出来、これまで直接観察することが難しかった添加金属の直接観察に成功し論文に発表した他、4次元データを連続的に取得することで、位置毎の回折図形の時間変化を観察する手法を提案し、論文に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は多層での同時PIEを行うコードの多波動力学とシミュレーションデータを用いたテストと実験データの取得のための条件の最適化、実験データの取得等を実施し、何れもほぼ当初の計画通りの進捗であった。また、当初予想していなかったゼオライト触媒の低電子線照射条件での高分解能再生や、5次元STEM法の提案など、本研究で開発したコード群を用いて当初想定していなかった成果も得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、実験データに対する処理の割合を増やし、シミュレーションデータによる再生像との層ごと比較を行う事で多重散乱の影響を調べ、多重散乱の影響を考慮すべき試料の条件や多層のPIEによる位相再生の精度評価を行う。
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