配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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研究開始時の研究の概要 |
近年, マルチフェロイクス研究の一つとして, 原子配置の左周りと右周りの回転変位がもたらす旋光性の非相反効果が注目されている。しかしこのような回転現象はドメインが出現しやすいため, ドメイン構造を観察しながら定量測定が出来る技術が必要とされている。 本研究では, これまで開発してきた光イメージング装置を用いて, このようなドメイン構造を直接観測して, ドメイン毎に回転変位を定量評価できる測定システムを構築する。一般に旋光測定では, 小さな旋光性の上に大きな複屈折が重畳することが避けられないため, これらを分離して旋光性と複屈折のイメージング像を同時に取得できる測定システムを構築する。
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研究実績の概要 |
本研究では, 温度や電場を変化させながら, 旋光性と複屈折のイメージング像を同時に, なおかつ効率的に, 短時間で取得できる測定システムを構築することを目指してきた。昨年度までの研究より, 解析精度を犠牲にせずに, 計算コスト低く抑えることが重要であることが分かっていた。そこで今年度は実験データの最適なマイニング方法を確立することを目指した。 従来の光イメージング像の解析では, 数万画素分のデータの中からなるべく均一な小さな領域を抽出して解析を行ってきた。しかし多くの試料では大きな複屈折の上に小さな旋光性が重畳しているため, 本解析手法では複屈折の分布に僅かな乱れがあるだけでも, その乱れを平均化することで旋光性の情報が埋もれてしまう可能性があった。さらに大きな問題として, 解析領域の選択に恣意性が排除できないことがある。そこで本研究では機械学習を用いて1画素単位で, なおかつ全データをまとめて解析できる手法を開発してきた。 一般に機械学習は線形統計学を基礎として構築されている。偏光状態は周期性を持った角度データで表されているため, そのままでは既存の機械学習に入力することは難しい。そこで本研究では, 方向統計学を用いて, 角度データを機械学習に適した形式へと変換する方法を確立した。複屈折と旋光性を分離するためには, 波長の違いによる偏光状態の変化を解析する必要がある。しかし計算コストが高いため, 全データをまとめて解析することは困難であった。そこで最終結果に影響を及ぼさない範囲内で, 情報量を削減する方法も確立した。このような前処理を行ったデータに対して教師なし機械学習の代表例であるK-meansクラスタリング法を実行した結果, 特徴量の傾向が異なる複数のグループに分けることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
K-meansクラスタリング法を用いて, 特徴が異なる複数のグループに分ける方法を確立した。本成果によって, グループ毎に平均化すれば, 大きな複屈折の中に埋もれている小さな旋光性の情報を抽出できるはずである。さらに測定誤差を考慮したベイズ推定法を取り入れることによって, 小さな旋光角を抽出する方法を確立する予定である。
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