研究課題/領域番号 |
21K04907
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30010:結晶工学関連
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
伊藤 恵司 岡山大学, 教育学域, 教授 (80324713)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 中性子回折 / X線回折 / 格子膨張 / 水素吸蔵 / 水素吸蔵合金 / 水素 / 結晶構造 / 2体分布関数 |
研究開始時の研究の概要 |
金属―水素系の原子レベルでの構造研究は,学術的に興味深いだけではなく,水素が関連する材料開発においても重要である。これまでの研究では,Bragg peakに基づく結晶構造解析法を用いた水素占有サイトの特定や水素化による平均的な格子構造変化の観察が主流であった。一方,結晶構造中にランダムに存在する局所格子膨張を直接観察するためには“2体分布関数解析法”が有効である。本研究では,中性子およびX線回折を利用した2体分布関数解析法により、水素周囲の局所格子膨張の定量的観察を試みる。
|
研究実績の概要 |
前年度までに得られた重水素濃度の異なる3種類の試料(D/V=0.65,0.70,0.75)についての中性子およびX線回折データを詳細に解析したところ,低重水素濃度の試料(D/V=0.65および0.70)には微量の水素化物相(β相)が混入していることが明らかになった。本研究の主たる目的は,重水素原子周囲の局所的格子膨張を定量観察することであり,その目的を達成するためには,固溶体相(α相)の広い組成領域で重水素濃度を変えた構造変化の観察が重要である。そのため,低重水素濃度領域の単一相試料の作製を試みた。重水素化前の活性化処理や重水素反応温度及び圧力等,試料作製条件に関して試行錯誤を繰り返したが,現時点では低重水素濃度領域(D/V=0.65~0.70)における単一相試料の作製は成功していない。一方,高重水素濃度試料(D/V=0.75)については,中性子およびX線回折により得られた構造因子に水素化物相(β相)に起因する結晶ピークは観察されておらず,回折データレベルで単一相試料であることが確認されたことから,この試料について研究を進めた。X線回折によって得られた2体分布関数の結果から,重水素化試料(D/V=0.75)のホストバナジウム格子構造は,BCC構造とは明らかに異なっており,2種類もしくはそれ以上のバナジウム金属間距離が存在していることを示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高重水素濃度試料(D/V=0.75)単一相であることが確認され,中性子回折およびX線回折データに基づく構造モデリングが進行中である。当初予定していた広い組成範囲における解析は困難となったが,重水素化前後のバナジウム格子構造変化の観察により,本研究の目的の達成は可能であると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,中性子2体分布関数により得られたバナジウム―重水素距離の情報およびX線2体分布関数により得られたバナジウム金属原子間距離の情報に基づき,3次元構造モデリング法を利用し,重水素周囲の局所格子膨張の定量情報を得る。このため,バナジウム―重水素系試料に特化したリバースモンテカルロシミュレーションのソースコードの開発を試みる。
|