研究実績の概要 |
本研究では最初に超微小共振器として可視光域で最も電場増強効果が大きい銀ナノ粒子(NP)2量体間隙数nm^3の領域(ホットスポット: HS)を用い光化学反応計測法の開発に挑戦した。 最初にHSの局在プラズモン共鳴(LPR)による電場増強効果を可視化する為に電場増強スペクトルの評価法をレーリー光散乱分光法と表面増強ラマン散乱(SERS)分光法を組み合わせて構築した。その結果、銀NP2量体のLPRレーリー散乱スペクトルとSERSスペクトルの形状が一致する場合と大きく異なる場合があることを見出した(J. Phys. Chem. C 127, 5886, 2023)。しかしどちらの場合もLPRとSERSの偏光依存性は一致した(J. Phys. Chem. B 127, 4666, 2023)。電磁解析法を用いて銀NP2量体の電場増強スペクトルを分析したところ、超放射型のLPRではなく、本研究で想定していなかった準放射型のLPRが電場増強に強く関与していることが明らかになった。そして準放射型のLPRによる電場増強の可視化は吸収分光測定で可能であることを始めて示した(J. Chem. Phys. 159, 034709, 2024)。 当初予定していた銀ナノワイヤー(NW)2量体のSERS分光法を行いLPRだけでなく伝搬型である表面プラズモンも電場増強効果に寄与していることをSERS光がNW間隙を伝搬する現象から明らかにした(Phys. Rev. B 103, 245425, 2021)。更にSERSの背景光として現れる超高速表面増強蛍光を用いた電場増強スペクトルの評価法を新たに開発して銀NP2量体と同様に準放射型のLPRが電場増強に強く関与していることを実証した。 上記の知見はHSを用いた光化学反応計測法の開発に不可欠な結果であり、今後の研究開発に弾みが付いた。
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