研究課題/領域番号 |
21K04936
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
堀 泰明 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (50443221)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 光子数もつれ / 自発的パラメトリック下方変換 / 直角位相干渉法 / 量子もつれ / 位相超感度干渉計 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、標準量子限界を超える位相感度(位相超感度)を有する光干渉計測法の範囲拡大を目的とする。光の量子状態の一つである「光子数もつれ状態(NOON状態)」を利用した位相超感度干渉法が既に報告されているが、その計測範囲が 2πのごく一部に限られることが問題であった。そこで、直角位相検出法とマイケルソン型光学系の導入によってこの範囲を原理上無制限に拡大する技術を提案する。本研究成果は、古典光で確立している干渉計測技術を押しなべて高精度化する可能性があり、重力波検出干渉計の感度向上、原子間力顕微鏡を上回る分解能とダイナミックレンジを備えた光学顕微鏡の実現など、将来技術の発展に大きく貢献できる。
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研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、量子もつれ光源の開発に取り組んだ。非線形光学結晶(BBO Type1)に紫外線半導体レーザ(λ=405 nm、Δλ=1.2 nm)を入射し、自発的パラメトリック下方変換(SPDC)による光子対(λ=810 nm)の発生を試みた。この際、ポンプ光のブロックに用いていた波長フィルタが紫外励起による蛍光を発していることが認められ、バックグラウンドノイズとなって検出感度を下げることが分かった。このため、波長フィルタを使用しないブロック方式に設計を変更した。 単一光子検出器を2つ用いてSPDC光子対(signal光、idler光)を検出した場合の、同時計数レートを確認した。検出器から同時計数器までのケーブル長を等しくした場合、同時計数レートは73.5Hz(S.D = 0.1Hz)となった。一方、ケーブル長をアンバランスにした場合の同時計数レートは49.6Hz(S.D = 0.1Hz)に低下した。これより、SPDC光子対の検出に成功していると確認できた。 検出を確認したSPDC光子対をビームスプリッタで重ね合わせてNOON状態を生成するためのHOM干渉計の構築に取り組んだ。ビームスプリッタまでの時間遅延を正確に調整する必要があるため、まずSLD光(λc=675 nm、Δλ=9.8 nm)をSPDC光子対の光路にガイド光として入射し、これによる低コヒーレンス干渉信号を観測しながらHOM干渉計および時間遅延を調整した。SLDによる干渉計の構築には成功したが、SPDC光子対を入射した際に予測されるHOMディップ信号の検出には至らなかった。その原因として、検出器の量子効率および素子サイズが同時計数レートを低下させていると考えられ、それを改善する方策を検討した。 本研究の比較対象となる古典光の直角位相干渉計について、その精度評価や誤差要因の低減に関する研究発表を1件行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実験を進めた結果、当初の設計仕様で想定していた結果が得られないことが分かり、その改善方法の検討と光学系の再設計に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度にHOM干渉計の構築に至らなかった主な原因として、単一光子検出器の量子効率および素子サイズが考えられる。今回用いた検出器の量子効率が約10%(at 810 nm)であり、光子対の発生数に対する同時計数率に換算すると1%程度となる。さらに素子サイズがφ20μmであり、SPDC光子対の集光スポット(φ200μm程度)の一部しか検出できていないことも同時計数率を低下させる要因となっている。NOON状態の生成およびその検出には同時計数率の向上が不可欠であるため、これらに配慮した単一光子検出器(例えば量子効率約60%、素子サイズφ500μmの市販モデル)の選定を予定している。また、BBO結晶の厚さの変更(1 mm→3 mm)によるSPDC光子対の発生効率の向上も有効と考えている。これらを行うことで、予定している目的の実現を目指す。
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