研究課題
基盤研究(C)
ホタル生物発光は基質であるルシフェリンが酸化反応をおこして発光する現象である。基質の生体内への影響が少ないことから、ホタル生物発光は生体内の発光イメージングに用いられているが、反応途中の情報が不明であることからその発光機構の詳細は依然として謎である。実験的に反応追跡するための第一歩として、本研究では光照射によりルシフェリンを生成する光照射型ケージドルシフェリンを用いて、光照射によるケージド基の解離過程についての詳細な情報を明らかにし、反応追跡に有効なケージド化合物の評価方法を確立することを目指す。
光照射によりホタルルシフェリン(以下、ルシフェリンとする)を生成するケージドルシフェリンは、生体内in vivoイメージングへの応用が期待される。この光照射型ケージドルシフェリンに対して、光照射によるケージド基開裂過程の詳細を明らかにし、ケージド化合物の評価方法を確立するためには、高純度の結晶が必要である。2021年度は当研究室にて独独自に開発したケージドルシフェリンの合成方法の改良を試みた。その結果、これまでよりも多く(112mg)、さらに、純度の高い(約96%)化合物の合成に成功した。2022年度には、このDEACMケージドルシフェリンへの光照射実験を実施した。生成したD-ルシフェリンの分子数を定量することによりケージド化合物の定量的な評価方法を確立し、DEACMケージドルシフェリンの光開裂量子収率を決定した。検出用の光源としてこれまで紫外光を想定していたが、近年、X線時間分解分光法の開発が進んだことを鑑みると、X線の利用も検討すべきという考えに至った。軟X線を用いた吸収計測では、分子の結合状態を反映したスペクトルをえることができることが知られている。しかし、気相中の孤立分子や、比較的構成原子数の少ない有機分子とは異なり、実際に緩衝液中のケージドルシフェリンのように、環境中の有機分子のX線吸収スペクトルはかなり複雑になると予想される。そのため、開裂や脱プロトン化などの結合の違いに対して、異なるX線吸収スペクトルが得られるかどうかは自明ではない。そこで、2023年度は、まずルシフェリンの脱プロトン化に対するX線吸収スペクトルを測定し、量子化学計算によりスペクトルの帰属を行うことにより、脱プロトン化による構造の違いを反映したX線吸収スペクトルが得られることを示した。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件) 備考 (2件)
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