研究課題/領域番号 |
21K04992
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
本林 健太 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60609600)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | イオン液体 / 分光電気化学 / マーカス理論 / 電極界面 / 電析 |
研究開始時の研究の概要 |
二次電池等の環境問題に資する電気化学プロセスは、大電圧に耐えられ、かつ安全性の高い電解液を必要としている。この要求を満たす新しい電解液として、イオンのみからなる液体である「イオン液体」に注目が集まっている。この材料は一方、中性分子を含まないため従来の水溶液や有機溶媒電解液とは大きく性質が異なり、従来の電気化学の考え方をそのまま適用できない。 そこで本研究課題では、電極との界面における分子・イオンの振舞いを分光学的に解明し、「電気化学反応に必要な電圧」と「ミクロな分子の振舞い」とを結びつける基礎理論である「マーカス理論」を、イオン液体に適用できるよう拡張することを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、表面増強分光法に関する基礎的な技術改良を行うとともに、高温における界面観測を通じたイオン液体の溶媒再配置ダイナミクスの理解を進めた。 表面近傍における赤外線吸収を増強する効果を示し、かつ構造全体が電気的に接続されて電極として利用可能な、「周期ナノ構造電極」について、電子線リソグラフィー技術を用いて作製することに成功した。実際に10倍程度の信号増強を確認でき、作製した構造の大半が電気化学に有効であることも確認できた。従来型のランダムなナノ構造に比べて、定量性・再現性の良い表面増強効果の実現につながる、重要な成果と言える。波数依存性の小さい吸収増強原理を用いているため、当初目的であるTHz帯の高感度表面分光観測についても、実現が期待できる。 また並行して、高温における溶媒イオンの再配置ダイナミクスの追跡を行った。表面増強赤外吸収分光法を用いて、温度・電極電位制御下におけるイオン液体/電極界面の構造観測を行った結果、電極近傍における溶媒イオンの再配置に伴う活性化障壁が、高温で低下することを示唆する結果が得られた。また、電気化学測定により、高温において金属電析反応の活性化障壁が低下することを示すデータも得られた。電極近傍・反応種まわりの溶媒イオンの再配置が、相互に密接な関係にあるという、我々の提唱するイオン液体中におけるマーカス理論の拡張の基本的なアイデアについて、理解が深まり、理論の補強ができたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表面増強THz分光の基礎が固まりつつあり、また溶媒和再配置ダイナミクスの理解も進展したことから、おおむね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
現状でも固液界面の観測に十分な増強度を達成できたと言えるが、微量成分の検出などを考えれば、更なる増強度の向上は当然求められるところである。そこで、周期ナノ構造のサイズや形状の探索を更に進める。実験を進める中で、作製できるサイズの限界も見え始めた一方、周期ナノ構造の形状について新たなアイデアも出てきたので、これらの知見に基づく探索により、増強度の向上を目指す。実際の増強度と理論的な予測との間にはまだ誤差もあるため、その原因についても検討する。 また、実際に遠赤外分光器に組み込むことで、電気化学環境下における表面増強THz分光法を実現する。性能の検証を行った上で、実際にイオン液体中の電析反応に適用し、界面現象の理解を深めることに挑戦する。
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